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イルカクジラの祖先は陸上哺乳類だったと言われているが、彼らは海で生活するために肢をヒレへと進化させてきた。しかし、ギリシャ沿岸で発見されたイルカは、ヒレに“親指”のようなものを持っていたことで科学者らを驚かせた。このイルカの“親指”は、病気などではなく遺伝子異常の可能性が高いようだ。今月11日、科学ニュースのウェブサイト『Live Science』などが伝えている。

ギリシャ沿岸で撮影された珍しいイルカの写真が注目を集めている。イルカギリシャのペロポネソス半島に面するコリント湾に生息するイルカで、ギリシャを拠点とするペラゴス鯨類研究所の所長兼科学コーディネーターのアレクサンドロスフランシス博士(Alexandros Frantzis)が、今年7月に撮影したものだという。

写真に写っているイルカの胸ビレの先は鉤状となっており、まるで親指があるかのように見える。フランシス博士らはこの夏に海洋調査を行った際、このイルカに2回遭遇したそうだ。フランシス博士によると、イルカは変わったヒレを持っているにもかかわらず、群れのイルカから避けられることもなく一緒に泳いだり遊んだりしていたという。

科学ニュースのウェブサイト『Live Science』の取材に応じたフランシス博士は、「30年にわたる外洋での調査やギリシャ沿岸で座礁したイルカを監視してきましたが、こんなに驚くべき形態のヒレを見たのは初めてでした」と語っている。また、コリント湾にはマイルカ、ハナゴンドウおよびスジイルカが生息しており、今回の“親指”のあるイルカはスジイルカとのことだ。

フランシス博士によると、イルカの“親指”は病変によるものではなく、遺伝子異常による可能性が高いそうだが、米ノースイースト・オハイオ医科大学の哺乳類解剖学・神経生物学の准教授リサ・ノエルクーパー氏(Lisa Noelle Cooper)も博士の意見に同意しており、次のように語っている。

「このようなヒレの形をした鯨類は見たことがありませんでした。この欠陥が左右両方の胸ビレにあるということを考えると、おそらく母体の中で成長するにあたってヒレを形成する遺伝子プログラムに変化が生じた結果でしょう。」

クーパー氏によると、人間は胎児の時に手に水かきのようなものがあり、成長とともにその細胞が死滅して指を形成するが、イルカは前肢の骨の周りに細胞が蓄積してヒレを形成するという。今回の“親指”のあるイルカについて、「母イルカの子宮の中で、何らかの出来事により人差し指と中指に相当する骨を形成するはずの細胞が死滅し、親指と小指だけが残った状態になったのでしょう」と語っている。

また、イルカの親指に見える部分には骨があるように見えるものの、人間の指のように動かすことはできないそうだ。しかしクーパー氏は、「このイルカが健康に育っているのを見られるのはとても素晴らしいことです」と述べている。

画像は『New York Post 2023年12月11日付「Dolphin with ‘thumbs’ surprises scientists in first-ever discovery」(Tropicalens – stock.adobe.com)(Alexandros Frantzis/Pelagos Cetacean Research Institute)』『The Independent 2022年5月30日付「Dolphin ends up in family’s house after floods in Brazil」』『Evan Pender 2021年12月14日付Instagram「Wild dolphin brings me a gift and wants to play underwater fetch in Ireland.」』『Kayleigh Grant 2021年9月7日付TikTok「What a sweetdolphin」』『Helen Williams 2021年8月23日付Facebook「Lee Ford dolphin tamer!!!」』『Far Out Ocean Research Collective 2021年5月17日付Facebook「A follow-up to our post on the bottlenose dolphin seen with a pilot whale calf a few weeks ago.」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)

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