少額投資非課税制度(NISA)とは

 少額投資非課税制度(NISA)は、年間120万円を上限として、上場株式や投資信託(公社債投資信託を除く)などを購入しても、その譲渡益や分配金、配当金(以下「譲渡益等」)が非課税になる制度です。

 NISAは2014年1月、年間100万円の非課税枠でスタートしましたが、2016年1月からは、非課税枠が年間120万円に拡大されるなど注目が高まっています。では、通常の課税口座(特定口座、一般口座)に比べて、NISA口座での取引にはどんなメリットがあるのでしょうか。

 課税口座で取引をした場合、譲渡益等には20.315%(復興特別所得税を含む)の税金がかかります。一方で、NISA口座で発生した譲渡益等については税金がかからない、という特徴があります。

【NISA口座における取引の例】

 ただし、NISAの非課税期間は最長5年間であるため、非課税となる投資額は最大でも600万円(120万円×5年間)となります。また、NISA口座を開設できるのは2023年までです。

NISA口座を開設する

 NISA口座は、国内に住む20歳以上の人であれば、誰でも開設することができます。証券会社や銀行、信用金庫などNISAに対応している金融機関で開設しますが、「1人1口座」が原則で、複数の金融機関に同時に作ることはできません。

 なお、NISAのスタート当初は、2023年までの期間に金融機関を変えるチャンスは2回しかありませんでしたが、2015年からは年に1回、金融機関を変更できるようになりました。

NISAの対象商品

 NISA口座で取引できるのは、上場株式、外国上場株式、株式投資信託、ETF(上場投資信託)、海外ETF、上場REIT(不動産投資信託)などです。一方、預金や債券(個人向け国債や社債)、公社債投資信託などは対象外で、信用取引やオプション取引、FX(外国為替証拠金取引)なども扱えません。

 また、既存の課税口座に保有している株式や投資信託をそのままNISA口座に移すこともできません。非課税になるのはあくまで、NISA口座で購入したものに限ります。

NISAの注意点

 年間120万円までであれば、株式や投資信託などの譲渡益や分配金、配当金(以下「譲渡益等」)が非課税になるNISAですが、いくつかの注意点もあります。

・損益通算できない

 NISA口座は、譲渡益等が発生した場合は非課税になりますが、損失が発生した場合、ほかの課税口座と損益通算できません。

 「損益通算」とは、株式や投資信託の譲渡で損失が発生した場合、確定申告をすることで、譲渡益等と相殺できる制度のことです。例えば、ある年に100万円の損失があった場合、翌年に100万円の利益が発生すれば、確定申告を行うことで損失と利益を相殺できます。

 また、損益通算してもまだ損失が残ってしまう場合、確定申告をすれば、翌年から3年間にわたって利益と相殺できる「繰越控除」制度もあります。

 NISA口座はこうした制度が適用されないため、課税口座で利益が発生し、NISA口座で損失が発生しても損益通算できません。この場合、課税口座だけで管理していれば、損益通算できますが、NISA口座に分けてしまったために、課税口座の譲渡益等が課税対象となってしまうのです。

 NISA口座は、利益については非課税のメリットがある一方で、損失に関しては課税口座と損益通算できないため注意が必要です。

・金融機関は事前検討すべき

 NISA口座の非課税期間は最長5年間ですが、期間終了後、口座に残っている資産のうち120万円以内を新しいNISA口座に移し、非課税期間を5年間延ばすことができます。これを「ロールオーバー」といいます。

【ロールオーバーの例】

 ただし、ロールオーバーの前後で金融機関は同一でなければならないルールがあるため、長期投資を考えている人はどの金融機関に口座を開設するのか、事前にしっかり検討する必要があるでしょう。

・枠の再利用ができない

 NISA口座で購入した商品は好きな時に売却できますが、その分の「枠」が空いたからといって、新たに投資を行うことはできません。最初に投じた金額が年間120万円に達しているかどうかが基準になります。

 例えば、NISA口座開設時に、ある上場株式に120万円を投資し、途中で20万円分を売却したとしても、新たに20万円の投資を行うことはできません。入り口で既に、「年間120万円」の枠を使っているからです。また、その年に使わなかった「枠」を翌年以降に持ち越すこともできません。

 そのため、NISA口座では、資産配分を見直したり、商品を買い替えたりすることが難しい傾向にあります。

・NISAの前提は長期保有

 NISAは「貯蓄から投資へ」の流れの中で、個人投資を促すための施策としてスタートしました。

 NISA口座には、購入した120万円分の株式のうち一部を売却したからといって、空いた枠を新たな投資に使うことはできず、また、使わなかった枠を翌年以降に持ち越すこともできない、という特徴があります。

 一方で、一度保有した資産を売却せずに保有し続けると、5年後にロールオーバーを利用して、非課税期間を5年間延長することができます。つまり、NISAは短期的な売買よりも、長期保有による資産形成を促す制度と言えます。NISAで商品を選ぶ際には、5年間の非課税期間というメリットを生かせる長期保有を念頭に置くことが大切です。

ジュニアNISAとは

 ジュニアNISAは、未成年の長期にわたる資産形成を促す目的で、2016年4月から運用が始まります。基本的な仕組みはNISAと変わりませんが、非課税枠などに違いもあります。

 ジュニアNISAの対象は0~19歳の人で、口座の運用・管理は親権者等(両親もしくは未成年後見人)が行います。NISA同様、「1人1口座」が原則で、複数の金融機関に口座を作ることはできません。ジュニアNISAの非課税枠は、NISAより40万円少ない年間80万円です。非課税期間が最長5年間で、口座を作れるのが2023年までというルールはNISAと同じです。ジュニアNISA口座で投資できる商品は、NISAと同じく上場株式、外国上場株式、株式投資信託、ETF(上場投資信託)、海外ETF、上場REIT(不動産投資信託)などです。

 一方で、ジュニアNISA口座からの払い出しは、子どもが18歳になるまでできない、というルールがあります(災害等の場合は除く)。また、ジュニアNISAの場合、「口座を開設した金融機関が変更できない」「口座開設にマイナンバーが必要」といった違いもあります。

【NISAとジュニアNISA】

※本稿は専門家が監修していますが、個々の取引の税務上の取り扱いや、投資についての詳細は税理士、または証券会社等に確認してください

(オトナンサー編集部)