中国の街を歩くと、普段は片仮名で表現される商品名や人名が何やら、不思議な漢字に置き換わっているのをしばしば目にします。

 たとえば「コカ・コーラ」は「可口可楽」、「リポビタンD」は「力保健」、アイドルグループのV6は「勝利六人組」といった具合です。

 同じく漢字を使用する日本人には何となく意味が通じるものから、全く見当がつかないものまでさまざま。中国語では、日々増えていく人名や商品名、会社名、地名などの外来語をどのようなルールに沿って漢字に直しているのでしょうか。

 オトナンサー編集部では今回、中国語と日本語の専門教育で知られる日中学院の小金井京子専任講師に話を聞きました。

基本的には「音訳」「意訳」が使われる

 小金井さんによると、外来語を中国語に直す場合は、主に2つの方法が採用されているそう。一つはその外来語の音を中国語の音で写し取る「音訳」、もう一つは、意味を訳出する「意訳」です。

 一般に外国人の名前は音訳され、ヒラリー・クリントン氏は「希拉里・克林頓(シラリー・クァリンドゥン)」、ドナルド・トランプ氏は「唐納徳・特朗普(タンナーダー・タゥランプ)」と表記されます。

 地名の多くは音訳されますが、意訳もあります。たとえばマレーシアは「馬来西亜マーライシーヤァ)」と音訳されますが、米サンフランシスコの観光名所ゴールデン・ゲートブリッジは「金門大橋(ジンメンダァチャオ)」と意訳されます。

 カフェチェーンのスターバックスが「星巴克(シンバークァ)」となるように、意味と音の両方の要素を兼ね備える場合もあります。たとえば、コカ・コーラは「可口可楽(クァコウクァラー)」と表現しますが、「可口」と「可楽」はそれぞれ「口にすべし」「楽しむべし」とも読める“名訳”といいます。

中国語圏で言葉は「交流し、変化し、淘汰される」

 小金井さんによると、音訳された言葉の中には、アルファベットを使ったものもあるといいます。

 たとえば、「●拉OK」(●は「上」「下」を上下に組み合わせた文字)、「●◯A梦」(●は「口偏に多」、◯は「口偏に拉」)。日本人から見るともはや「文字化け」にしか見えませんが、これらは日本でおなじみの「カラオケ」「ドラえもん」です(!)。

 また中国語に直す際には、マイナスイメージがある漢字よりは、プラスの意味が出る漢字が選ばれるとのこと。前出の「コカ・コーラ(可口可楽)」のように、より多くの“良い意味”が込められた表現が採用されるといいます。

 中国では、国名や辞書の編集には国家機関が携わりますが、外来語の多くはその言葉を最初に使用したメディアや企業が「自由かつダイナミックに」作れるそう。ただし、広い中国語圏において、言葉はそれぞれの違いを超えて交流・変化し、時には淘汰すらされていくのだそうです。

 小金井さんは「中国語で表現された外来語の世界から、漢字の持つ面白さや奥深さを再発見してもらえたら」と話しています。

(オトナンサー編集部)

中国では外来語をどうやって漢字に直しているのか…