ちょっとコーヒー豆を思わせる2つの小さな化石は、発見以来、絶滅した古代植物と考えられてきた。
ところが、何かがおかしいと思った専門家が再調査したところ、じつは亀(カメ)の赤ちゃんだったことが判明したそうだ。
その化石は6cmほどの小さなものだが、無事に生きることができたなら、180cmを超える巨体な亀に成長したはずだ。
なぜならこの亀は、地球史上最古かつ大型のカメ「デスマトケリス(Desmatochelys padillai)」の赤ちゃんだったからだ。
この2つの亀の化石は、頭から葉っぱを生やしたポケモンにちなみ、「ナエトル(英名でタートウィッグ)」との愛称で呼ばれている。
その驚きの発見は、『Palaeontologia Electronica』(2023年12月付)で発表された。
【画像】 植物の化石にしては何かがおかしい、再調査がはじまった
2点の化石が植物とされたのは、かつての発見者であるグスタボ・ウエルタス神父が、そう主張したからだ。
化石は1950年代から1970年代にかけて、コロンビアのビジャ・デ・レイバという町の近くで発見されたもの。その表面にある線は、ウエルタスの目には植物の葉脈に見えた。
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2003年、ウエルタスはこの化石を「スフェノフィラム・コロンビアナム(Sphenophyllum colombianum)」に分類した。三畳紀の初め(2億5100万年前)に絶滅したとされる低木だ。
それから20年、彼の説に異を唱えるものはいなかった。
しかしそこには大きな矛盾が1つあった。
それは、彼が発見した化石は、1億1300万年~1億3200万年前の白亜紀前期のもので、恐竜と一緒に存在していたと考えられることだ。
スフェノフィラム・コロンビアナムが絶滅してから1億年も後のものなのだ。
この矛盾に注目したのが、フィールド自然史博物館の古植物学者ファビアニー・エレーラ氏だ。彼はコロンビア国立大学の古植物学者エクトル・パルマ=カストロ氏とともに、化石を調べ直してみることにした。
エレーラ氏は次のように語っている。
大学の化石コレクションにあたってみましたが、写真を撮ってすぐに”妙だな”と思いました。つぶさに見てみると、化石についている線は植物の葉脈に思えませんでした。むしろ骨だろう、と
これまで古代植物と考えられていた化石の1つ / image credit:Photo by Fabiany Herrera and Hector Palma-Castro.
実際には亀の赤ちゃんの甲羅の化石だった
エレーラ氏はその後、ロサリオ大学の亀が専門の古生物学者エドウィン=アルベルト・カデナ氏に連絡した。
すると「甲羅のようだ」と返答があったのだ。しかも驚くべきことに、子ガメの甲羅ではないかという。
カデナ氏らは、2点の化石を亀の化石や現代の亀の甲羅と比較しつつ、さらに詳しく調べた。
そこから導き出された結論が、亀の赤ちゃんというものだ。それもただの亀ではない。地球史上最古かつ最大級の亀「デスマトケリス(Desmatochelys padillai)」の赤ちゃんだ。
現在絶滅したカメの属とされるデスマトケリスは、中生代白亜紀中期の約9,000万年前に生息していた。成長すると甲長約110cm、体長180cmを超える大型のウミガメだ。
デスマトケリスの化石 / image credit:WIKI commons
カデナ氏は次のように語っている。
白亜紀前期の最も完全で最も古いウミガメのひとつ、デスマトケリスと同じ岩石から化石が発見されたことを考えると、子ガメはすでに絶滅したデスマトケリスなのだろうと思われます
植物と勘違いされた2点の化石は、いずれも体長6.3cmにも満たないことから、子ガメはまだ1歳にも満たないと考えられている。
またウエルタス神父が葉脈と勘違いした線は、骨の成長パターンである可能性が高いそうだ。
デスマトケリスの子亀の化石と、肋骨と背骨を強調表示した図面 / image credit:Photo by Fabiany Herrera and Hector Palma-Castro.
ポケモンのキャラにちなんで「ナエトル」の愛称がつけられる
幼いカメの甲羅はとても薄く、簡単に壊れてしまうので、子ガメの化石が見つかるのは非常に珍しいとのこと。
今、植物と勘違いされた2つの化石は、頭から葉っぱを生やしたポケモンにちなみ、科学者らは「ナエトル(英名でタートウィッグ)」の愛称で呼んでいるそうだ。
References:Once Thought to Be Plants, These Rare Fossils Are Actually Baby Turtles, Scientists Say | Smart News| Smithsonian Magazine / It turns out, this fossil plant is really a f | EurekAlert! / written by hiroching / edited by / parumo
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