2023年、日経平均やS&P500、金などと比べて“圧倒的なパフォーマンス”を発揮したのが「ビットコイン」です。もっとも、現在約2年ぶりの高値水準にあるため「いまからビットコインに投資するのは高値づかみになりそうで怖い」と考える人も多いでしょう。しかし、マネックス証券の暗号資産アナリスト松嶋真倫氏は「まだ遅くない」といいます。その根拠とは……詳しくみていきましょう。

2023年はビットコインが他の金融資産を圧倒!

ビットコインの価格が約2年ぶりに600万円台の高値を付けています。2023年10月以降、金融市場におけるインフレ鈍化および金利低下を受けてリスクアセットの買いが強まり、さらには米国におけるビットコインの現物ETFへの期待が相場を押し上げています。

2023年11月末時点での年初来パフォーマンスではビットコインが150%を超え、日経平均やS&P500、金などの既存アセットを圧倒しています。またビットコインのドミナンス暗号資産市場全体に占める時価総額の割合)も約2年半ぶりに50%を上回り、今年は暗号資産のなかでもビットコインが人気を集めた年であったことがわかります。

1年間の相場を振り返る時期になり、投資家のなかには暗号資産ビットコインがいつの間にこれほど上昇していたのだろうと疑問に思っている人もいることでしょう。そこで今回は2023年のビットコイン相場について業界イベントを中心に振り返りたいと思います。

2023年1月から3月:約220万円~約380万円

2023年第1四半期のビットコイン相場は、2022年に起きたテラショックとFTXショックの余波が一服し、買い戻し優勢になりました。2023年3月には米国で暗号資産関連企業と取引のあるシルバーゲート銀行、シリコンバレー銀行、シグネチャー銀行が相次いで破綻する歴史的な事件が起こり、米国株とともに大きく下落する場面もみられました。

しかし、預金者保護が発表されたことですぐさま回復し、その後は銀行セクターへの信用不安が広がるなかで、金とともに「逃避資産」としての買いを強めました。

2023年4月から6月:約350万円~約440万円

2023年第2四半期のビットコイン相場はやや価格が停滞し、アルトコイン市場で投機的な動きが一部みられました。イーサリアムは2023年4月にステーキングの引き出しが可能となる大型アップデートを完了し、大きな注目を集めました。

その後、ペペコインをはじめミームコインの売買が盛り上がりましたが、その暴落とともにビットコインも価格を下げました。しかし、ブラックロックがビットコインの現物ETFを申請したことが伝わると、ビットコインは440万円台まで急騰しました。

2023年7月から9月:約370万円~約440万円

2023年第3四半期のビットコイン相場は、米国証券取引委員会(SEC)が複数のビットコインの現物ETFに関する審査を相次いで延期し、その失望で軟調に推移しました。また、米国で強い経済指標やタカ派寄りの当局者発言を受けて金利が再び大きく上昇し、米国株とともに売りが強まりました。

世界最大の暗号資産取引所バイナンスへの取り締まりや、ゲンスラーSEC委員長による暗号資産に対する厳しい発言などもあり、市場では規制リスクも意識されました。

2023年10月から12月:約400万円~約610万円

2023年第4四半期のビットコイン相場は、パウエルFRB議長をはじめ当局者発言がハト派寄りに転換し、金利上昇のピークアウトが意識されて米国株とともに上昇しました。

またブラックロックが申請するビットコインの現物ETFが米国証券保管振替機関(DTCC)の適格リストに掲載されたことが話題となり、現物ETFの承認に向けた期待が再燃しました。

リップルグレースケールが有利となる裁判判決が確定したことや、バイナンスと当局が罰金で和解に至ったことなども好感され、さまざまな好材料が重なるなかで、一気に600万円台まで価格を伸ばしました。

価格が高騰したビットコインへの投資…「いまからでも遅くない」といえるワケ

2024年は、ビットコインの新規発行量が半減する4年ごとのイベントで、バブルの周期としても意識される「半減期」を控えており、ここからさらに価格が上昇することが期待されています。

2023年には欧米を中心に大手金融機関による暗号資産関連事業への参入も進み、今回は金融市場からより多くのお金が暗号資産市場へ流れることで、ビットコインの価格が高騰する可能性があります。

また来年は、金融市場でも世界的な金融緩和への転換が意識され、株式を含めて強気の予想が増えることが考えられます。そのようななか、ポートフォリオの一部としてビットコインなどの暗号資産を検討している人も多いでしょう。一方、ビットコインのボラティリティを警戒して、なかなか踏み出せない人もいると思います。

ビットコインのボラティリティリスクを軽減しながら、安定的にリターンを得る方法として、おすすめなのが「つみたて投資」です。

つみたて投資は、株式や投資信託でも一般的な手法として知られています。毎月決まった日付、決まった金額でビットコインなどの暗号資産を購入する手法です。これにより、短期的な価格変動に振り回されず、中長期的に利益を稼ぐことができます。

実際に、2021年1月から毎月1日に2万円ずつビットコインを3年間積み立てた場合を見てみましょう。

2021年はすでにビットコインが上昇トレンドに乗っていた時期で、上昇前からつみたてを始めなければ遅いと思われるかもしれません。しかし、赤ラインの累計BTC評価額の推移をみると、確かに2022年には青点線の購入累計額を大きく下回るタイミングがあるものの、2023年に入ってからの上昇でリターンがプラスに転じていることがわかります。

このように、つみたて投資では価格下落時にもビットコイン定期的に購入し続けることで、将来的な値上がり益を享受することができます。特にビットコインなどの暗号資産は、市場としてはまだまだ発展途上であるため、中長期的な運用を前提とするつみたて投資と相性が良く、早くはじめるほど大きなリターンが返ってくる可能性が高まります。

コインチェックをはじめ、国内の暗号資産取引所ではビットコインなど暗号資産のつみたて投資サービスを提供していますので、2024年以降に来るであろう「次の成長期」に向けて利用を検討してみると良いでしょう。

松嶋 真倫

マネックス証券 マネックス・ユニバーシティ

暗号資産アナリスト

(※写真はイメージです/PIXTA)