年金の種類

・公的年金

 「公的年金」は、国が法律に基づいて管理・運営する最も基本的な年金です。加入するかしないかを自分で選ぶことはできません。

【公的年金の種類】

国民年金国民全員に共通する基礎年金(1階部分)のための年金
厚生年金保険:企業に勤めるサラリーマンなどの2階部分の年金
共済年金公務員や学校教職員などの2階部分の年金
共済年金平成27年10月から厚生年金保険に一元化されました

・企業年金

 「企業年金」は、企業が従業員の福利厚生のために行っている年金です(企業によっては、公的年金しかない場合もあります)。

【企業年金の種類】

厚生年金基金:厚生労働大臣の認可を受けて設立された基金が行う年金(全従業員が対象)
◯確定給付企業年金:労使合意による年金規約に基づく年金(全従業員が対象)
◯確定拠出型年金:企業や加入者が決められた方式で拠出し、運用は加入者が行う年金

・個人年金

 「個人年金」は、公的年金や企業年金だけでは将来が不安と考える人などが個人的に加入する年金です。保険会社などが営利目的で行っています。

・公的年金の仕組み

 「公的年金」は、加入している人や企業から徴収した保険料を主な原資として、給付要件を満たした人に支払う「保険方式」で成り立っています。公的年金は、老齢年金(老齢になった人が受け取る年金)の原資を現役世代の保険料でまかなう「世代間扶養」の仕組みを採用しています。

【公的年金の主な種類】

◯老齢年金:老齢に達したとき(加入している年金により「老齢基礎年金」「老齢厚生年金」「退職共済年金」が支給)
◯障害年金:障害状態になったとき(加入している年金と障害等級により「障害基礎年金」「障害厚生年金」「障害共済年金」などが支給)
◯遺族年金:死亡したとき(死亡した人が、加入していた年金の一定要件を満たしていた場合、遺族に「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」「遺族共済年金」などが支給)

国民年金

国民年金の加入者

 国民年金の保険料を納めるのは、20歳以上60歳未満の自営業者、学生、フリーターなどで、サラリーマンや公務員は、厚生年金保険の保険料や共済年金の掛金の中から、国民年金の保険料を支払います。主婦は国民年金に加入していますが、保険料を自分で支払う必要はありません。

国民年金加入者の種類】

第1号被保険者:20歳以上60歳未満の自営業者、学生、フリーター、家事手伝いなど
第2号被保険者:サラリーマン、公務員など
第3号被保険者:サラリーマンや公務員などに扶養されている配偶者(主婦)

・2階建ての公的年金制度

 サラリーマンは厚生年金保険、公務員はそれぞれの共済組合に加入すると同時に、国民年金の第2号被保険者にもなります。公的年金制度は2階建てで、1階部分は国民年金から、2階部分は厚生年金保険、もしくは共済組合から支払われます。

【2階建ての公的年金制度】

国民年金保険料

 国民年金の保険料は、平成27年度は月額1万5590円です。平成29年度以降は、月額1万6900円で固定される予定となっています。

厚生年金保険

厚生年金保険の加入者

 厚生年金保険は、厚生年金保険の適用事業所(会社)に勤務する70歳未満の人が、基本的に全員加入します。パートやアルバイトの人でも、勤務日数や勤務時間で正社員と大差なく働く人は原則、加入します。

厚生年金保険に加入する人】

正社員
アルバイト(短期契約の人などを除く)
パートタイマー(短時間労働の人などを除く)
試用期間中の人

厚生年金保険料

 厚生年金保険料は、「標準報酬月額」に保険料率を掛けた額を会社と被保険者(厚生年金保険の加入者)で折半します。保険料率は毎年9月に3.54ポイントずつ引き上げられ、現在(平成27年9月~平成28年8月)は「17.828%」となっています。

 なお、標準報酬月額とは、月収を区切りのよい30の等級に区分したもので、毎年7月に4~6月の平均給与から算出されます。標準報酬月額は原則1年間(9月~翌年8月)変わりません。

厚生年金保険料の計算式】

厚生年金保険料=標準報酬月額×保険料率(17.828%)→会社と被保険者が半分ずつ負担

厚生年金保険料額表】(平成27年9月~平成28年8月)

厚生年金基金

厚生年金基金の加入者

 厚生年金基金は、国の厚生年金保険業務の一部を代行し、通常の老齢厚生年金より手厚い給付を行う企業年金です。厚生年金基金は、勤務する会社に厚生年金基金がある人のみ加入できます。
厚生年金基金は改正法の成立(平成25年6月)により、段階的に縮小・廃止されることが決まっています

厚生年金基金がある場合の給付

 厚生年金基金に加入している人も、加入していない人も、保険料(基金の加入者は保険料と掛金の合計)は同額ですが、給付は加入者の方が多くなります。厚生年金基金は、会社にとっては社員の福利厚生や節税などのメリットがありますが、設立するには一定の要件が必要です。

厚生年金基金がある場合とない場合の違い】

厚生年金基金加入者の保険料

 厚生年金基金の加入者は、厚生年金保険料と厚生年金基金の掛金を同時に負担します。ただし、その額が、基金に加入していない人より多くなることは原則、ありません。保険料と掛金は、会社と加入者が折半します。

厚生年金基金加入者の保険料】

厚生年金基金加入者の保険料=国に納める厚生年金保険料+基金に納める掛金

老齢年金

・老齢年金とは

 老齢年金は、年を取ったときに一定の要件を満たしていれば受け取ることができる年金です。年金額は、加入していた制度や生年月日、加入期間、平均給与などによって異なります。

・老齢基礎年金

 老齢基礎年金は、通常65歳から受け取れる年金です。老齢基礎年金をもらうためには、原則として25年以上の加入期間が必要で、加入期間は「保険料納付済期間」「保険料免除期間」「合算対象期間」の合計で計算されます。

【保険料納付済期間】

 20歳から60歳までの40年間のうち保険料を納めた期間(納めなかった期間は保険料未納期間といいます)。年金別の保険料納付済期間は以下の通り。

第1号被保険者(自営業者など):自ら国民年金保険料を納めた期間
第2号被保険者(サラリーマンなど):給与から天引きされる形で保険料を納めた期間
第3号被保険者(サラリーマンの妻など):夫に扶養されていた期間

【保険料免除期間】

 以下の免除が承認されると、その期間は加入期間に算入されます(年金額は一定の割合で減額)。なお、「学生納付特例」や「若年者納付猶予」による免除期間は、追納がなければ年金額には反映されません。

法定免除生活保護を受けている人や障害年金1級・2級の受給者など
申請免除:所得が低いために生活が困難な人や学生、退職者、失業者など
※申請免除には「全額」「半額」「4分の1」「4分の3」などの種類があります

【合算対象期間】

 年金額には反映されないものの、加入期間に算入される期間。主なものは以下の通り。

昭和36年4月以降の厚生年金保険(共済組合)加入期間のうち、20歳未満、もしくは60以降の期間
昭和36年4月~昭和61年3月の間で、サラリーマンなどの被扶養配偶者だった20歳以上60歳未満の期間
昭和36年4月~平成3年3月の間で、20歳以上60歳未満の学生だった期間
など

 なお、国民年金への加入が義務付けられる期間を「加入可能年数」といい、現在は40年間(20歳~60歳)です。この期間ずっと保険料を支払った人は、老齢基礎年金が満額(78万100円=平成27年4月現在)受け取れます。

【老齢基礎年金の計算式】

平成21年4月以降分>

老齢基礎年金=78万100円×{(保険料納付済期間の月数+全額免除期間の月数×4/8+4分の1納付期間の月数×5/8+半額納付期間の月数×6/8+4分の3納付期間の月数×7/8)÷480}

平成21年3月以前分>

老齢基礎年金=78万100円×{(保険料納付済期間の月数+全額免除期間の月数×1/3+4分の1納付期間の月数×1/2+半額納付期間の月数×2/3+4分の3納付期間の月数×5/6)÷480}

・老齢厚生年金

老齢厚生年金の種類

 老齢厚生年金は、厚生年金保険から支給される年金で、老齢年金の2階建て部分に当たります。老齢厚生年金の額は、これまでに保険料を支払った期間と平均給与によって決まり、一般に給与が高かった人ほど年金額は大きくなります。老齢厚生年金には、65歳からの本来の老齢厚生年金と、60歳代前半にもらえる「特別支給の老齢厚生年金」の2種類があります。

特別支給の老齢厚生年金

 現在は、一定の要件を満たせば、65歳になるまで「特別支給の老齢厚生年金」をもらえる人がいますが、平成13年度からは「定額部分」が徐々になくなって「報酬比例部分」だけになります。平成25年度からは報酬比例部分も徐々になくなって、将来は65歳支給に統一されます。

【特別支給の老齢厚生年金

特別支給の老齢厚生年金=定額部分(65歳からの老齢基礎年金に相当)+報酬比例部分(65歳からの老齢厚生年金に相当)

・65歳からの老齢厚生年金

 65歳からの老齢厚生年金は、老齢基礎年金の受給資格があり、なおかつ厚生年金保険に1カ月以上加入していた人がもらえます。老齢厚生年金は、老齢基礎年金に上乗せして支払われ、年金額は、現役時代の平均給与(平均標準報酬月額)に比例して決まります。

【老齢厚生年金の計算式】

平成15年3月までの加入期間分>

平成15年4月以降の加入期間分>

※「平均標準報酬月額」は、平成15年3月までの標準報酬月額の合計を平成15年3月以前の加入期間の月数で割ったもの
※「平均標準報酬額」は、平成15年4月以降の標準報酬月額の合計と標準賞与額の合計を総額し、平成15年4月以降の加入期間の月数で割ったもの

障害年金

・障害年金とは

 障害年金は、公的年金に加入し、何らかの病気や事故で一定の障害を負った人が受けられる年金です。障害年金は、障害状態が続いている限り、一生受け取ることができます。障害年金も老齢年金と同じく、2階建ての構造になっています。

・障害年金の要件と障害の等級

 障害年金をもらうには、一定の要件を満たしている必要があります。

【障害年金をもらえる要件】

 障害年金を受け取るには、以下の3つの要件を満たしていることが必要です。

◯公的年金の加入期間中に初診日があった
◯保険料支払いの要件を満たしている
◯初診日から1年6カ月が経過した時点(障害認定日)で障害等級に該当している

 障害は重い順に「1級」「2級」「3級」に分類され、国民年金からは「1級」「2級」が、厚生年金保険(共済年金)からは「1級」「2級」「3級」「その他の障害」が、障害年金支給の対象となります。

【障害の等級】

・障害基礎年金

 障害基礎年金は、年金加入期間の長短ではなく、障害の等級に応じた定額が支払われます。また、18歳の年度末未満の子どもを扶養している場合は、加算額がプラスされます。

【障害基礎年金をもらえる要件】

◯保険料支払いの要件を満たしている
◯初診日から1年6カ月が経過した日に1級か2級の状態であること
◯初診日に国民年金加入中か20歳未満、もしくは60歳~65歳で日本に住んでいる、のいずれかであること

【障害基礎年金の額】

1級障害:老齢基礎年金(満額)の1.25倍
2級障害:老齢基礎年金(満額)と同額
加算額:子ども2人目までは1人につき22万4500円、3人目以降は1人につき7万4800円(平成27年4月現在)

・障害厚生年金

 障害厚生年金は、老齢厚生年金と同様、報酬比例年金であるため、給与が高い人ほど年金額も多くなります。障害厚生年金の「1級」「2級」を受ける人に65歳未満の妻(配偶者)がいる場合は、加給年金(22万4500円=平成27年4月現在)がプラスされます。

【障害厚生年金をもらえる要件】

◯保険料支払いの要件を満たしている
◯初診日に厚生年金保険加入中であること
◯初診日から1年6カ月が経過した日(障害認定日)に厚生年金保険で定める障害等級であること

【障害厚生年金の額】

平成15年3月までの期間>

平成15年4月からの期間>

・障害手当金

 障害手当金は、3級障害より軽い一定の障害が残った場合、一時金として受け取れるものです。

【障害手当金をもらえる要件】

◯保険料支払いの要件を満たしている
◯初診日に厚生年金保険加入中であること
◯障害認定日から5年以内に治癒しており、3級より軽い一定の障害に認定された人で、なおかつ、国民年金厚生年金保険からの給付、あるいは労働者災害補償保険の障害補償給付を受けていないこと

【障害手当金の額】

※最低保障額は117万200円(平成27年4月現在)

遺族年金

・遺族年金とは

 遺族年金は、年金の加入者、または加入者であった人で、一定の要件を満たした人が死亡した場合、一定の要件を満たした遺族が受け取れる年金です。遺族年金は、老齢年金や障害年金と同様に、遺族基礎年金(1階部分)と遺族厚生年金(2階部分)の2階建て構造になっています。

・遺族年金の仕組み

 遺族年金は、死亡した人が第1号被保険者だからといって、必ず1階部分が給付されるわけではなく、死亡した人と遺族の組み合わせのパターンによって、給付のなされ方が変わります。

・遺族基礎年金

 遺族基礎年金をもらうにはまず、本人の死亡時期が以下のいずれかでなければなりません。遺族(妻または子)にも、遺族基礎年金をもらうための要件があります。

【遺族基礎年金がもらえる死亡時期】

1.国民年金に加入中
2.現在は国民年金に加入していないが60歳以上65歳未満で日本に住んでいる
3.老齢基礎年金を受給中
4.老齢基礎年金の受給資格者である(受給待機中)

 なお、死亡時期が1か2の場合は、保険料納付の要件があります。要件は、死亡日の前日において、死亡日が属する月の前々月までの保険料納付期間のうち3分の2以上が「保険料納付済期間」か「保険料免除期間」であることです。

 ただし、死亡日が平成38年4月1日以前にある時は、死亡日が属する月の前々月までの1年間のうちに、保険料納付済期間と保険料免除期間以外の被保険者期間がなければ、納付要件を満たしたものとされます。

【遺族基礎年金がもらえる遺族】

◯本人の死亡当時、18歳の年度末未満の子(または20歳未満で障害等級1級・2級の子)と生計を一にしていた妻(夫)
◯妻がすでに死亡(離婚)している場合の18歳の年度末未満の子(または20歳未満で障害等級1級・2級の子)

【遺族基礎年金の額】

◯子を持つ妻と子が遺族の場合

基本額(妻):78万100円、2人目までの子:1人22万4500円、3人目以降の子:1人7万4800円

◯子だけが遺族の場合

基本額(1人目の子):78万100円、2人目の子:22万4500円、3人目以降の子:1人7万4800円

・遺族厚生年金

 遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者が加入中に死亡した場合、もしくは、加入中に初診日があった病気やけがで初診日から5年以内に死亡した場合などに支給されます。年金額は定額ではなく、平均標準報酬月額などに応じて変動します。

 遺族厚生年金をもらうには、遺族が一定の要件を満たすと同時に、本人(厚生年金保険の被保険者)が以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。また、遺族厚生年金を受け取る遺族にも順位付けがあります。

【遺族厚生年金の受給に必要な本人の要件】

1.死亡した日に厚生年金の加入者だった
2.厚生年金加入中に初診日があった病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡した
3.障害厚生年金の障害等級1級・2級の受給権がある
4.老齢厚生年金の受給権があった人、もしくは老齢厚生年金の受給資格期間を満たして亡くなった人

 なお、遺族厚生年金をもらうには、遺族基礎年金と同様の保険料納付要件を満たす必要があります。1か2のいずれかの場合は、死亡日の前日において、死亡日が属する月の前々月までの保険料納付期間のうち3分の2以上が「保険料納付済期間」「保険料免除期間」であることが要件です。

 ただし、死亡日が平成38年4月1日以前にある時は、死亡日が属する月の前々月までの1年間のうちに、保険料納付済期間と保険料免除期間以外の被保険者期間がなければ、納付要件を満たしたものとされます。

【遺族厚生年金が支給される遺族の順位と要件】

1位:配偶者(夫の場合は55歳以上)、子(18歳の年度末未満、もしくは障害等級1級・2級の20歳未満の子で未婚)
2位:父母(55歳以上)
3位:孫(要件は子と同じ)
4位:祖父母(55歳以上)

【遺族厚生年金の額】

平成15年3月までの期間>

平成15年4月からの期間>

(オトナンサー編集部)