老友新聞2023年12月号に掲載された俳句入選作品をご紹介いたします。(編集部)

遠花火行先告げず一人旅

瀬川 征光

家族に行先も言わず一人旅をしている作者、何事があったのでしょう。心が傷つくような出来事を抱えて旅先で見た遠花火です。傷心を癒してくれたでしょうか。

取り壊し近き官舎や草の花

小柴 一子

かつて官舎の住人の眼を楽しませてくれた草の花です。やがてこの建物もなくなりますが、それでも一心に咲く草の花を作者は愛おしそうに眺めています。

夏雲や昭和はるかとなりてゆく

多田 シズモ

昭和は戦時戦後の悲惨な世を象徴する時代です。この期間を生きた人にとって最も心に深く残るのが昭和でしょう。当時の多難も今は懐かしい思い出になった様子が季語からうかがえます。

「遠花火行先告げず一人旅」2023年12月入選作品|老友俳壇