子どもは、親が作ったスマホのルールをルールとして認識していないかもしれない――。日本PTA全国協議会がこのほど、実施した調査で、子どもにスマホを持たせている家庭のこのような実態が浮かび上がりました。

 この調査は、小学5年生と中学2年生、また、その保護者を対象に行われたもの。SNSを含む、スマホでのインターネット利用にルールを設けているかを保護者に聞いたところ、「ある」が小5の保護者で51.3%、中2の保護者で59.8%だったのに対し、SNS利用に関してルールがあるかを子どもたちに聞くと、「ある」が小5で26.1%、中2で23.6%という結果でした。

 また、内閣府が実施した「平成27年度青少年のインターネット利用環境実態調査」でも、「子どものインターネットの使い方についてルールを決めている」保護者が81%だったのに対し、「家にインターネットの使い方についてルールがある」と答えた子どもは60.8%と、やはり数字に開きがありました。

 子どもがSNSなどを通じて、犯罪やトラブルに巻き込まれるケースが後を絶たない昨今。子どものスマホやネット利用に大きな関心を持つ家庭も多いと思われますが、親子でしっかり認識を共有したり、ルールを徹底したりするには、どのようなことが必要でしょうか。

 オトナンサー編集部では、家族や教育、子どものネット依存の問題などに詳しい、作家でジャーナリストの石川結貴さんに話を聞きました。

子どもの“自主性”尊重し、“守れる”ルールを

Q.調査ではスマホやネット利用を巡る親子の認識差が明らかになったと言えますか?

石川さん「親はルールと認識していても、子どもがそれをルールと認識していないケースはよくあります。例えば、『スマホは夜10時まで』というルールがあるにもかかわらず、10時を過ぎても子どもが延々とスマホを使えるなら、ルールなどあってないようなものです」

Q.家庭内ルールを作る上でのポイントなどはありますか?

石川さん「まずは親子で十分に話し合うこと。時間や場所、利用方法などについて決める際は、子どもの話にしっかり耳を傾けましょう。親が一方的に押し付けたルールは、子どもの実情とかけ離れてしまう可能性があります。例えば、LINEなどのSNSでは、『友だちとのメッセージ交換が盛り上がっているのでもう少し続けたい』といった、子どもなりの事情もあります」

石川さん「また、現実的に守れるルールを作ることも大切です。最近は、自治体などが一律にルールを設定するケースもありますが、事情は家庭や子どもによって違います。例えば、『平日は友だちとLINEをするので夜11時まで使いたい。その代わりに、土日は6時までにする』などと子ども自身がルールを考えます。親は『普段はそれでいいけど試験前1週間は禁止にしたら?』などと応じ、お互いの意見を調整するのです」

Q.意見を交換し合うことは親子のコミュニケーションにもつながりますね。

石川さん「話し合う過程で子どもからネットの利用状況を聞き出せますし、親の不安や心配事を伝えることもできます。子どもに自覚と責任を持たせる意味でも、大人が一方的に押し付けたルールではなく、子ども自身が考えたルールの方がよいのです」

主導権は親、毅然とした対応も必要

Q.ルールには“ペナルティー”が付きものですが、スマホやネットの場合もそうですか?

石川さん「子どもがマイルールを設定したとしても、必ず守れるとは限りません。むしろ、守れなかった時にどうするかを決めておくことが重要です。ただし、ペナルティーも子どもの自主性を尊重しましょう。子ども自ら『ルールを3回破ったらスマホを1週間使わない』などと決めることで、おのずと自覚が生まれます」

Q.それでも子どもがルールを守らない場合はどうすればいいでしょうか?

石川さん「スマホの契約を一時停止するなどして、『今後は料金を支払わない』と伝えましょう。親が料金を支払わなければ当然、子どもはスマホを使えません。主導権は親にあることを忘れず、時には毅然と対応することも必要です」

Q.「最低限これだけは必要」というルールを教えてください。

石川さん「スマホにアプリをダウンロードする際は事前に親の許可を取り、ネット上に自分や他人の氏名、住所、電話番号、学校名などを書き込まないこと。知らない人からSNSの『友だち申請』やコミュニティーサイトへの勧誘などが来ても断るようにし、下着姿などの不適切な写真や、ふざけた動画は撮ったり、投稿したりしないこと。そして、困ったことがあったら、すぐに親や先生に相談するようにしましょう」

(オトナンサー編集部)