この記事をまとめると
■ステランティスグループ傘下の「オペル」は2021年に日本に再上陸を果たす予定となっていた
■新型コロナ感染症の流行とカーボンニュートラルに向けた社会の盛り上がりによりグローバル戦略を大幅に修正せざるを得なかった
■日本における「オペル」ブランドの展開に関してはいまだ発表がない
いまだ沈黙したままの「オペル」ブランドの日本復活
オペルの日本上陸は、結局どうなるのか? その答えは、いまだに不明だ。
2023年12月上旬時点で、「オペル、日本」と検索すると、「Opelジャパンへようこそ・オペル公式サイト」がピックアップされる。同サイトには、The new Opel Mokka登場として、コンパクトSUVのMokkaについての商品紹介などが記載されている。だが、販売時期などについては明らかになっていない状態がこれまでかなり長く続いている。
時計の針を戻してみると、2019年末に当時のグループPSAが「2021年末を目途にオペルブランド日本再上陸」について説明した。
だが、その発表の数カ月後には新型コロナ感染症がグローバルで一気に広がり、自動車産業界においても部品の調達、製造、販売などに大きな影響が及んだ。そうした人類史上最大級の危機に直面するなか、オペル日本上陸の話題は自動車ユーザーの間で薄れていった。
その後も、グループPSAからはオペル日本上陸時期の修正などが明らかになり、現在のオペルジャパン専用HPが立ち上がったのだが……。
社会情勢の変化がブランド戦略の修正を余儀なくさせた
こうした時系列での、オペル日本上陸に対する事態の変化の背景には何があるのか? 現状について具体的なデータが公表されていないため、ここからは一般論としての解釈とする。
まずは、「2050年カーボンニュートラル」における、グローバルの動きの変化が挙げられるだろう。そもそもは、2015年12月のCOP21(国連気候変動枠組条約 第21回締約国会議)で採決され、翌2016年に発効したパリ条約が基点だ。パリ条約に基づき、2018年10月にはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)で、パリ条約を実現するためには、地球の平均気温を産業革命前に比べて1.5度以内とする目標を達成するためには、2050年のカーボンニュートラルが必要と判断された。
これを契機に、自動車メーカー各社は将来の事業計画を大幅に見直すことになった。ただし、こうした企業の判断と、国や地域の環境施策や、それに伴う規制の議論などとは時間差が生じた。
話をオペルに戻すと、日本上陸を発表した2019年末時点で、オペルブランドとして描いていたグローバル戦略に修正が加わる必要性があったと言える。そこに、コロナ禍という非常事態となり、2021年日本上陸が延期されたと考えることができる。
もうひとつは、ステランティスとしてのグローバル戦略の変化だ。
ステランティスは2021年初頭に設立され、グローバルではオペルのほか、アバルト、アルファロメオ、クライスラー、シトロエン、ダッジ、DSオートモービル、フィアット、ジープ、ランチャ、マセラティ、プジョー、ラムトラック、ボクソールなど、旧PSAと旧フィアットクライスラーが融合した多様なブランドを展開する企業体系となった。
日本事業についても、これらブランドのうちいくつかを、それまでのグループPSAジャパンから2022年にステランティスジャパンへと移管している。
そして、2022年3月には、ステランティス本社が長期戦略の概要を発表している。
このように、オペルを傘下に持つステランティスとしては、2010年代後半から2020年代前半にかけての地球環境に関わる自動車産業界の大きな変化に対して、自社のグローバル経営体制を整えてきたところだ。こうした市場と事業の変化のなかで、日本におけるオペルブランドのあり方を再考するに至ったと言えるのではないだろうか。
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