日本に渦巻く老後不安。「年金」「給与」は国民の最大の関心事となっています。『国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し』(厚生労働省・2019年)などのデータとともに実態を見ていきます。

「平均手取り収入35万円」を基にした「年金額」の算出

公的年金の給付水準を示す指標を「所得代替率」といいます。現役世代の男性の平均手取り収入額に対する年金額の比率より算出されますが、『国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し』(厚生労働省・2019年)では、男性の平均手取り額を下記のように規定しています。

“所得代替率 =(夫婦2人の基礎年金 + 夫の厚生年金)/ 現役男子の平均手取り収入額 61.7%=(13.0万円+9.0万円)/35.7万円”

平均手取り収入額35.7万円。「そんなに手取りもらってないよ…」と思うサラリーマンも少なくないことでしょう。

国税庁『民間給与実態統計調査』(令和4年分)によると、平均給与は458万円。正規社員523万円、非正規社員201万円となっています。平均給与458万円というと、月換算で38万円ほど。手取りでは30万円ほどとといったところ。ボーナスが多ければさらに下がります。

では年金の実情はどうなのでしょうか。

厚生労働省令和3年厚生年金保険・国民年金事業の概況』では「年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額」を調査しています。厚生年金保険(第1号)受給者数は3,588万人。厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金月額は、老齢年金が14万5,665円です。下記が年齢別の平均年金月額です。

【60代】

60歳・・・8万7,233円

61歳・・・9万4,433

62歳・・・6万1,133円

63歳・・・7万8,660円

64歳・・・7万9,829円

65歳・・・14万5,372円

66歳・・・14万6,610円

67歳・・・14万4,389円

68歳・・・14万2,041円

69歳・・・14万0,628円

【70代】

70歳・・・14万1,026円

71歳・・・14万3,259

72歳・・・14万6,259

73歳・・・14万5,733円

74歳・・・14万5,304

75歳・・・14万5,127

76歳・・・14万7,225円

77歳・・・14万7,881円

78歳・・・14万9,623円

79歳・・・15万1,874円

【80代】

80歳・・・15万4,133円

81歳・・・15万6,744円

82歳・・・15万8,214円

83歳・・・15万9,904円

84歳・・・16万349円

85歳・・・16万1,095円

86歳・・・16万2,007

87歳・・・16万1,989円

88歳・・・16万952円

89歳・・・16万1,633円

なお、厚生年金の受給額のボリュームゾーンは「9~10万円」「10~11万円」でそれぞれ約113万人。次いで「17~18万円」が約104万人、「11~12万円」が約103万人と続きます。

「このままだと潰れてしまいます」…国も悲鳴

団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)に突入し、医療費・介護負担の大幅増加が予測される「2025年問題」も目前に迫る今、「年金」「給与」は国民の最大の関心事となっています。

家計調査より作成された内閣府の経済諮問会議資料によると、社会保険料等がもっとも多いのは45~54歳。実収入のおよそ20%にあたる金額が引かれています。さらに、2006年、勤労者世帯社会保険料は1ヵ月あたり月4万円程度でしたが、2019年の時点で5万5000円にまで跳ね上がっている事実があります。

2019年の財政検証では、「経済成長と労働参加が進むケース」を5パターンにわけ分析し、国の「明るい将来」を予測していますが、「経済成長と労働参加が進まないケース」では、下記のような悲惨な事態が記されています。

“経済成長と労働参加が進まないケースⅥでは、機械的に調整した場合、2052年度に国民年金の積立金が無くなり、完全賦課方式に移行。ただし、ケースⅥは、長期にわたり実質経済成長率▲0.5%が続く設定であり、年金制度のみならず、日本の経済・社会システムに幅広く悪影響が生じ、回避努力が必要。”

超少子高齢社会となった日本。まずは負のスパイラルからの脱却が急がれます。「定年引上げ」をはじめとした働き手増加施策・経済成長施策は、「自力で稼いで生きてください」という、サラリーマン世代への残酷な通達であるとともに、「このままだと潰れてしまいます」と助けを求める、国そのものの悲鳴ともいえましょう。

(※写真はイメージです/PIXTA)