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 1988年以降、野生から完全に姿を消し「野生絶滅種」と宣言された「シロオリックス」だが、関係者の多大な努力のおかげで、野生の個体は着実に増えている。

 国際自然保護連合IUCNの絶滅危惧種レッドリストでは、シロオリックスが「野生絶滅種」から「絶滅危惧種」に分類し直されたそうだ。

 現在のロンドン動物園をはじめとする繁殖プログラムのおかげで、アフリカ中央部、チャドの自然保護区ではすでに500頭以上の野生の子供たちが生まれている。

 この成功は、絶滅寸前の動物であっても、正しい知識と適切な方法で繁殖させ、自然に帰れるように育てることで、野生の個体数を回復させられるという心強い証明となる。

【画像】 野生から姿を消し、絶滅したシロオリックス

 「シロオリックス(Oryx dammah)」は、ウシ科オリックス属に分類される偶蹄類で、かつては北アフリカの大部分に生息していた、砂漠に適応したオリックスだ。

 体長170cm、体重200kgほどの白い体で一際目を引くのは、アラビア三日月刀のようにように曲がった優美な角だ。英名はこの角にちなむもので、「シミターホーンオリックス」という。

 かつては砂漠やサバンナなどで6~30頭程度の小さな群れで暮らしていおり、雨季にもなれば1000もの壮大な群れを作ることもあった。

 しかし1980年代に続いた干ばつと、角や肉を目的とした乱獲によって激減。2000年、ついに野生からは完全に姿を消し、「野生絶滅種」に分類されることになった。

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 だが希望は残されていた。飼育下ではまだ残されていたのだ。

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野生での復活を掲げ、繁殖プロジェクトが開始される●

 1985年に危機的状況にあったシロオリックスを救おうと立ち上がったのが、当時のZSLロンドン動物園やサハラ保全基金(Sahara Conservation Fund)などだ。

 そのプロジェクトでは、将来的に野生への再導入が可能かどうか確かめるため入念な調査が実施され、帰還の地として白羽の矢が立てられたのがアフリカチャドにある自然保護区「Ouadi Rime-Ouadi Achim Game Reserve」だ。

 2016年、飼育環境下にあった21頭のシロオリックスが、フェンスで守られた保護区域に放されると、その6ヵ月後、待望のシロオリックスの子牛が30年以上ぶりに誕生。

 翌2017年1月には、さらに14頭のオリックスが同じ地域に放たれた。

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 プロジェクトの目標は、野生のオリックスが健全な数を保ち、自立して暮らせるようにすることだ。

 その粘り強い努力は着実に実を結んでおり、最初のシロオリックスを野生に返して以来、チャドの保護区域では510頭の子供が誕生している。

 「シロオリックスの復活は、綿密で入念な準備を経て、アブダビ環境庁の支援を受けながら粘り強く進められた保護活動の成果です」と、ロンドン動物園の保全生物学者ティム・ワッチャー氏は述べている。

危機に瀕した野生動物を救うことはできる

 『Science』(2023年2月24日付)に掲載された研究では、1950年以降、野生では絶滅してしまったが、人間の手によって飼育されてきた95種の動植物を調査している。

 それによると、現在の野生絶滅種のうち、再導入が試みられているのはわずか4分の1に過ぎない。

 それでも今回のプロジェクトの成功は、適切な手段とリソースさえあれば、再導入プログラムが危機に瀕した動植物をきちんと守れるだろうことを示している。

 論文著者の1人であるマーウェル・ワイルドライフのタニアギルバート氏は、次のように語っている。

シロオリックスが野生絶滅種から絶滅危惧種に変更されたことは、力を合わせて保全活動をすれば、大きな変化をもたらし、自然を回復させるられるという希望を与えてくれるものです

References:After 23 Years Extinct In The Wild, Scimitar-Horned Oryx Make Triumphant Comeback | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo

 
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うれしいニュース。野生から完全に姿を消したシロオリックスが飼育繁殖で復活の兆しを見せるシロオリックス