NHKドラマ10『大奥 Season2』では徳川治済、ドラマ『相棒』(テレビ朝日系)では広報課長の社美彌子、『女王の法医学~屍活師~』(テレビ東京系)では准教授の桐山ユキと、近年、クセの強い役柄で存在感を発揮している仲間由紀恵。映画『パウ・パトロール ザ・マイティムービー』では、マッドサイエンティストのヴィクトリアとして大騒動を巻き起こす。パウ・パトロールたちと敵対する今回の役柄だが、「物語の中でなら悪いこともバンバンしてしまえるという、私の中ではパラレルワールドのような感覚がある」とヒール役を演じる楽しさを明かした。

【写真】徳川治済やヴィクトリアとは一変 優しい笑顔が魅力の仲間由紀恵

◆『大奥』『相棒』『パウパト』…クセのある役に感じる面白さ

 主人公でリーダーのケントと、個性豊かな子犬たちからなるチーム〈パウ・パトロール〉たちが大都会のアドベンチャーシティで活躍する姿を描いた本作。9年ぶりの声優挑戦となる仲間が担当したのは、まほうの隕石を引き寄せる磁石を盗み出し、悪事を企むヴィクトリア役だ。

 その役柄を仲間は「天才科学者で、自分のすごさをもっとたくさんの人に知ってほしいという欲望の強い人で、かわいらしいパウパトたちと対決しますが、憎めないところもあります」と分析する。

 「自分の頑張りをなかなか周りが認めてくれないと思っているんだと思います。それをなんとか思い知らせたい。そうした認めてもらえない寂しさを抱えている人だと考えたら、その心境は分からなくはありません。ただ、敵対する役柄は、共感できないところもありますし、自分では絶対にしないこともする。そうした自分の考えとは全く違う役に取り組めることはとても面白いなと思います」。

 まっすぐで芯のある女性や猪突猛進でどこかコミカルな女性が見事にハマり、数々のドラマや映画で活躍してきた仲間だが、近年はさらに役の幅を広げ、NHKドラマ10『大奥』での怪演も大きな話題にもなった。一方で、2022年に放送された連続テレビ小説『ちむどんどん』ではヒロインの母・比嘉優子で明るく愛情たっぷりの母親像を作り上げた。

 「『ちむどんどん』のお母さん役などは、気持ちをたどっていけば理解しやすい人物なので、ある意味では演じやすさはあります。ただ、主人公に敵対する役はそれとはまた違う面白さがあるんです。自分が理解できない分、どこまで考えが至ることができるかという挑戦は、とても楽しいものです」。

◆子どもと一緒に作品を鑑賞予定「私の声は…分かるかな?(笑)」


 現在、5歳になる2児の母親でもある仲間。子どもたちにも大人気の本作に出演することは「まだ理解しているのかわからない感じです」と苦笑いを浮かべながらも、「劇場に一緒に観に行って、どういう反応をするのか楽しみです」と話す。普段、仲間の出演作を観る機会はないため、この作品が初めて出演作を子どもたちが観る機会になるという。

 「子どもたちには、仲間を思いやる気持ちや誰かのために頑張るパウ・パトロールの姿を素直な気持ちで観てもらいたいと思っています。そうして観終わった後、どんな感想になるのかすごく興味があります」とにっこり。

 「仲間さんの声に気づいて驚くのでは?」と尋ねると「私の声は…分かるかな?(笑) ヴィクトリアの絵を見ながらなので、なんとなく聞いたことがあるかな、くらいな気もします。分かればいいですね」と母親としての顔を覗かせた。

◆芝居に対するコンプレックス「自信満々に仕事ができるタイプではない」


 ところで、本作は、パウ・パトロールの一員であるリバティの体が小さいというコンプレックスを乗り越えていく姿を描いたストーリーでもあるが、仲間自身はコンプレックスを感じることはあるのだろうか。

 「お芝居をしていると、監督からOKが出ても、本当に良かったのかなと毎回感じます。私は自信満々に仕事ができるタイプではないので、できる限りのことをやっても反省点が毎回ある。なので、リバティのように自分に自信がなかったり、他の人と比べてしまうところはすごく理解できます。この映画を観て、リバティから感動や勇気をもらったので、私も諦めない強さを持ち続けられたらいいなと思います」。

 芝居へのコンプレックスをそう明かしてくれた仲間だが、1994年に『青い夏』でドラマデビューを飾ってから約30年にわたって第一線で活躍しており、その演技力や存在感は圧倒的だ。仲間は、この30年を振り返り、「もう30年も働いているんですね。30年もやってきたからには、特別ボーナスをもらってもいいんじゃないかな?」と茶目っ気たっぷりに話す。続けて、「あっという間でした。この4、5年は、作品に対する取り組み方もまた変わってきたと自分でも感じています。一つひとつのお仕事にじっくりと取り組むことで、より良いお仕事ができるのではと感じているので、それを深めていけたらいいなと思います」と振り返った。

 作品に彩りやスパイスを加える、なくてはならない存在となっている仲間。今後の活躍からも目が離せない。
 
(取材・文:嶋田真己 写真:高野広美)

 映画『パウ・パトロール ザ・マイティムービー』は公開中。

仲間由紀恵  クランクイン! 写真:高野広美