声優のみならず、ラジオパーソナリティや作詞家、エッセイストとしてマルチに活動している林原めぐみが、約1年ぶりとなるニューシングル「終結の槍/終結のはじまり」を12月6日(水)にリリースした。今回のシングルは、林原自身も綾波レイ役などで出演し、大ヒットを記録した映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の映像を初めてパチンコに搭載した『ぱちんこ シン・エヴァンゲリオン』 のテーマソング2曲を収録している。長年、歌手として活動しているも度々、「歌手活動という意識はない」とも語っている林原。今回のシングルのことをはじめ、「なぜ林原めぐみが歌い続けるのか」・歌手活動に対する想いを語ってもらった。

【写真】シン・エヴァ聖地の駅でたたずむ林原めぐみ

■約1年ぶりのシングルでは「シン・エヴァンゲリオンの世界を別の角度から表現」

ーー約1年ぶりのシングルとなりますね。今作の制作期間に至るまでの流れはどのようなものでしたか?

まず第一に『エヴァンゲリオン』という作品があり、それが劇場版になり、その後パチンコという形で「集結の園へ」という曲を歌うことになりました。最初はエヴァの曲を歌うことに抵抗があったんですけど、『エヴァンゲリオン』シリーズの劇伴を担当されている鷺巣さんが作曲してくださった「集結の運命」という曲を出す流れになった際に、「エヴァの“オフィシャルスピーカー”としてやれることをやれば良いんだよ」と言ってくださったんです。エヴァ音楽の本家の方からそうお墨付きをいただいて、やっと自分が許せました(笑)。

それからは、ご依頼いただいた時には歌うという流れが出来上がりましたね。前回の遊戯台のエヴァキングギドラゴジラが出てきて、エヴァとどう向き合えばいいのか分からない世界に飛び込みましたけど、御依頼をいただいたので歌う…という流れ。「ゴジラと戦う歌を歌いたい」と私が言ったわけではないんですよね(笑)。そして今回、あの、完結をむかえたシン・エヴァンゲリオン劇場版の映像を取り込んだ遊技台ということで、心が帰って来た感じがします。

ーー「終結の槍」と「終結のはじまり」の聴きどころを教えてください。

改めて、エヴァが終わって思う事。「残酷な天使のテーゼ」が全てのはじまりだったなと…。この曲に感謝したいという気持ちから、印象的なワードを抜き出して、散りばめています。カラオケで歌詞をしっかり読み込んでいる方はあまり多くないと思うので、「終結の槍」で改めて歌詞を味わってみてほしいです。「終結のはじまり」はそれぞれのキャラクターに向けて歌詞を紡いでおりまして、そこが聴きどころですね。“旋律”という言葉からカヲルくんを思ったり、“束ねた髪を振り解く”という言葉からミサトさんを思ったり…と、ぜひ楽しんでほしいです。

■歌は作品の縁で“降ってくるもの”、「誰かの幸せに“ちょっと”でもなれたら」

ーー今作もMEGUMI名義で作詞をされていますが、歌詞はどのようなインスピレーションで紡ぎましたか?

細かい部分は、作曲・編曲のたかはしごうさんが引き受けてくださいました。たかはしさんが色々と進めてくださった後に私の元にデモが来たので、そこに言葉を乗せればいいという状態から作詞をスタート。最初は1曲の予定だったのですが2曲になったことで、何に焦点を当てるべきか考えていました。その後作品とキャラに向けて歌詞を書こうと思い、デモを聴き込んでメロディを体に入れて、インスピレーションが湧いた時に一気に書きました。

ーー当初は消極的だったとご自身でも度々おっしゃっています。そんな歌手活動を現在も続けていらっしゃいますが、どのような想いで続けて来られましたか?

まず、歌は作品の縁で「降ってくるもの」だと思っています。作品から貰ったものがすごくありがたく沢山ある、っていうかあり過ぎる。(笑)その還元のような気持ちです。日々大変なことがある人たちが、ちょっと曲を聴いたら元気になったり、ちょっとラジオを聴いて面白かったなって思ったり。少しの娯楽が誰かの生きるエネルギーになったら良いなという気持ちは変わらずありますね。でもだからと言って、作品を見たり聴いたりした人に絶対に元気になってほしいみたいな、そんな大仰なことは思っていないです。娯楽ってなくても生きていけるけど、あったらちょっと良いっていう。その“ちょっと”になりたいという想いで、今も歌っている感じです。

ヱヴァから受け取ったのは「声優として生きていくうえで必要なもの」

ーー林原さんの声優人生の中でも『エヴァンゲリオン』の綾波レイは大きなものだったと思います。林原さんは『エヴァンゲリオン』という作品から受け取ったものは何でしょうか?

【声優として今後生きていくうえで必要なものを、見誤ることなく受け取った】という感じです。言葉を言葉通りに使っている人間は、意外と少ないですよね。言葉には「言葉じゃない意味」を乗せて、無意識に皆使っているんだなと。分かりやすい例だと、タイプではない女性からネクタイを貰ったとして、そこまで嬉しくないけど「ありがとう」って言うじゃないですか。ありがとうって言っているけど、心は「困ったな」って感じですよね。でも本当に好きな子からネクタイをもらうと、高揚感がありながらこれは本命なのかっていう考察をするじゃないですか。つまり言葉で感謝を伝えながらも、それは必ずしも感謝ではないんですよね。そんな感じで人のことが見えるようになったし、自分の中の嘘も分かるようになりました。

レイちゃんは、言葉は言葉通りなんですけどね。人間不信になりながら、レイちゃんに辿り着くために心理学の本を読み漁り、心とは…を自分なりに探った結果ですね。台本には「言葉として」こう書いているけど、本当はこの子はどう思っているんだろうっていうところをより深掘りするようになりました。

■アニメファン冷遇時代から…「ファンの想いにむくいる自分になりたい」気持ちで続けてきた

ーー林原さんにとって、声優のお仕事の魅力とは何でしょうか?

最初はこんな仕事があるんだって感じで声優を始めたんですよ。元々はごっこ遊びが好きな子どもだったんですけど、それを大人になっても仕事としてやっているみたいな。宇宙生物から、男の子、女の子でも、とにかく何にでもなれるのが声優の仕事の魅力です。

――現在、声優は「憧れのお仕事」になっています。林原さんが声優アーティストとして活動したからこそ、今、声優がレコード会社から歌手デビューするという型ができたと言われていますね。

昔は、私のCDが恥ずかしくて買えないっていう子がいっぱいいたんですよね。「声優の歌なんて買ってるの?」って言われたり。あの時代はまだアニメファンは冷遇されていたので、そこに報いる自分になりたいという想いはありました。今は、アニメの人気も一般化されて、かつての “役者崩れ” なんて不名誉な呼び方はもう存在しない。今ではアイドル声優や声優アーティストや、本当に多様化しましたよね。呼び名なんて時代で変わります。自分は何が出来るか、どうしたいかと向き合って、やれることをやれたらそれで良しかな。

声優の林原めぐみが、約1年ぶりとなるニューシングル「終結の槍/終結のはじまり」と、歌手活動への想いを語った/※提供画像