ヘンリー王子が、英タブロイド紙による盗聴疑惑をめぐる裁判に勝利した。判事は、電話盗聴や違法な情報収集による記事があったとして、新聞の発行元「Mirror Group Newspapers」に対し、ヘンリー王子におよそ2540万円の賠償金支払いを命じた。今回の判決を受け、王子は声明文で「今日は真実と責任が明らかになった素晴らしい日だ」と喜びを述べた。

ヘンリー王子は、英タブロイド紙『Daily Mirror』『Sunday Mirror』『Sunday People』などの記者達が電話盗聴や欺瞞、私立探偵の利用など違法な手段で情報収集をしたとして、複数の著名人とともに新聞の発行元「Mirror Group Newspapers(以下、MGN)」を提訴していた

王子は、MGNが公開した1996年から2010年までの147本の記事が違法な手段で入手した情報が使用されたと主張。これらの記事は王子と家族、元恋人チェルシー・デービーさんとの関係、怪我や病気、薬物疑惑、兵役時代などの話題を取り上げたものだった。

裁判では、このうち33本の記事が検討のために選ばれていた。これに対しMGNは、33本のうち28本が違法な情報収集に関わった記事であることを否定し、残りの5本については認められないと主張した。

そして現地時間15日には、ロンドンの高等裁判所でヘンリー王子の訴えに対する判決が下された。裁判所では、MGNによる「広範囲で常習的な」電話盗聴の証拠が認められ、ヘンリー王子が電話盗聴の被害者であることが断定された。

ファンコート判事(Mr Justice Fancourt)は、判決要旨で「33本の記事のうち15本が、公爵または関係者の携帯電話への盗聴や、その他の違法な情報収集による産物である」と述べた。

さらに、『Daily Mirror』『Sunday Mirror』『Sunday People』で違法な情報収集が「広範囲にわたり」行われ、私立探偵の利用が「システムの不可欠な部分」であったと判断。ヘンリー王子の携帯電話が2003年末から2009年4月にかけて「ある程度の範囲」で盗聴され、MGNの特定の人々によって注意深く管理されていたと結論付けた。

そして、1995年から2004年まで『Daily Mirror』の編集長を務めたピアース・モーガンや他の幹部達が、この慣行を知っていたことを「疑う余地はない」と裁定した。

判事は、ヘンリー王子が違法に収集された情報を含む記事の公開により苦痛を与えられたことを認め、MGNに14万600ポンド(約2540万円)の損害賠償を支払うように命じた。

判決後、ヘンリー王子の弁護士デヴィッド・シャーボーン氏が高等裁判所の前に現れ、集まった記者達の前で王子の声明文を読み上げた。

王子は裁判の結果について「真実と責任が明らかになった素晴らしい日だ」と述べ、次のように続けた。

「この訴訟は、単なる盗聴に限ったものではありません。隠蔽と証拠隠滅に続く、違法かつ恐ろしい組織的な行為に関するものです。その衝撃的な規模は、これらの訴訟を通じてのみ明らかにすることができるのです。」

そして、ロンドン警視庁と英国検察庁を含む英国当局に対し「英国国民のために義務を果たし、同社と法を犯した者を告発するよう調査すること」を呼びかけた。

一方、MGNの広報担当者は「何年も前に起きた出来事から前進するために、必要な明確性を企業に与えた。今日の判決を歓迎する」と述べ、「歴史的な不正行為が行われた時に、我々は率直に謝罪し、全責任を負い、適切な補償を支払ってきた」と付け加えた。

なお今回、ファンコート判事は、ジャーナリストのオミッド・スコビー氏による主張を受け入れるとの判決も下した。スコビー氏は、当時『Daily Mirror』の編集長だったピアースモーガンが、歌手カイリー・ミノーグに関する電話盗聴について知らされていたことに関する証拠を提出していた。

コビー氏は、ヘンリー王子の伝記本『自由を求めて(原題:Finding Freedom)』や王室の暴露本『Endgame(原題)』の著者で、ヘンリー王子とメーガン妃夫妻の“チアリーダー”的存在として知られている。

ヘンリー王子と複数の著名人が提訴したMGNの盗聴疑惑をめぐる裁判は、今年5月10日ロンドンの高等裁判所で開始した。

6月6日にはヘンリー王子が英国に帰国し、証言台に立った。法廷では、王子が提出した55ページにわたる証人陳述書が公開されたが、その中には当時の編集長だったモーガンを激しく批判する記述が含まれていた

王子は翌7日にも証言台に立ち、MGNの勅選弁護士アンドリュー・グリーン氏からの反対尋問に答えた

同月30日には裁判の最終日を迎え、文書ではヘンリー王子側が勝利した場合、MGNに対して最大44万ポンド(約8000万円)の損害賠償金を要求する意向であると主張していた

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(TechinsightJapan編集部 寺前郁美)

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