いわゆる「銀行窓販」の「外貨建て保険」等の保険商品には注意が必要です。一見、お得なように感じられますが、知らず知らずのうちに大きく損をしてしまう可能性があります。本記事では、保険選びに詳しいCFPの横川由理氏の著書『2024~2025年版 保険 こう選ぶのが正解!』(実務教育出版社)より、「外貨建て保険」で400万円もの損をした人の具体例にも触れしながら、一部抜粋してお届けします。

外貨建て保険に入ると「大損」することも

筆者は、資産運用の相談に行った銀行で、こういわれたことがあります。

「お客様は、資産が毎日変動して一喜一憂する商品と、資産が着実に積み上がっていく商品とでは、どちらがお好みですか?」

この質問は、「投資信託と外貨建ての保険のどちらがいいですか?」と聞いています。というより、外貨建て保険に誘導しているのがわかりますか?

外貨建て保険を販売すると、投資信託よりも銀行は「儲かる」のです。保険商品は、保険会社が作って、銀行に販売してもらうというものです。ということは、保険会社と銀行の両方の手数料や儲けが必要になります。

40歳の男性が払った金額の「1.2倍に増える」と説明され、「米ドル建て一時払い終身保険」に加入した例でお話ししましょう。

「米ドル建て一時払い終身保険」という商品は、為替の変化を考えないと、100万円払って保険金が120万円に増えます。ある保険会社のHPを見ると、たしかに、予定利率が4.57%って書いてあります。

でも、気をつけてください。予定利率は、金利ではありません。将来の金利にもよりますが、この男性が40年後の80歳で死亡しても、保険金は120万からほとんど増えないのです([図表]参照)。

400万円が「搾取」されてしまう理由

では、100万円を保険で運用するのではなく、アメリカの国債で運用することを考えてみます。なお、「為替レートの変動」はここでは考慮しないものとします。

2023年9月1日の30年米国債利回りは、4.29%でした。具体的には100万円から毎年4.29%ずつ増えていくのです。この利回りで40年分を運用すると、100万円に4.29%を40回掛ける(40乗する)ことになります。100万円に「1.0429」を40回掛けてください。ちなみに、電卓で計算する場合は以下のように操作します。

カシオ以外:「1,000,000」⇒「1.0429」⇒「×」⇒「=」を40回

カシオ:「1.0429」⇒「×」を2回⇒「1,000,000」⇒「=」を40回

そうすると、100万円は、驚きの「536万円」になります。1.2倍になるどころか、「5.36倍」です!

保険で運用したら120万円にしかなりませんが、100万円をアメリカ国債で運用したら、40年後には536万円になるのです。

外貨建て保険にお金を預けるということは、400万円分の利益を「搾取される」ことになります。手数料がかかるのはわかりますが、これでは文字どおり搾取です。肝に銘じてください。金融知識の疎い人から、お金を取り上げる構造があるのです。

外貨建て保険は、為替の変動に応じて受取額が変化する商品だ、ということは皆さんご存知ですね。日本の金利が低すぎるので、「為替リスクを取っても外貨で運用したい」という、切実な悩みを逆手にとって開発されたといっても過言ではありません。

もしも、米国債で運用していたらこんなに増えたのに、知らない間にその機会を奪われてしまうのです。騙されないでください。保険と運用は分けて考えることが何よりも大切です。そして、むやみに「売る立場の人」を頼らないようにしましょう。

横川 由理

FPエージェンシー代表

CFP®

MBA(会計&ファイナンス

日本証券アナリスト協会 認定アナリスト