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 NASAの探査機「ボイジャー1号」は46年に渡る長期ミッションを行っている。太陽圏を脱出し、現在地球から240億km以上離れたところを旅しているのだが、このところ何やら意味不明な言葉をぶつぶつと繰り返しているそうだ。

 NASAのブログによると、そこに搭載されている3台のコンピュータのうちの1台に問題が発生し、科学・工学的なデータを地球に送り返せなくなっているという。

 この思わぬトラブルに対処するため、NASAの専門家は今、1977年に打ち上げられた機体の古いマニュアルを引っ張り出し、どうにか正気に返ってもらう方法を探っている。

【画像】 ボイジャー1号に通信トラブルが発生

 ボイジャー1号の「フライト・データ・システム(FDS)」は、機体に搭載された科学機器からのデータと、機体の状態に関するエンジニアリング・データを収集する。

 こうしたデータは、地球に送信できるよう「テレメトリ調節ユニット(TMU)」によってまとめられる。

 ところが現在、FDSとTMUとの間で通信トラブルが起きているのだ。そのせいで、TMUは独り言でもぶつぶつ呟くかのように、1と0を繰り返し宇宙管制センターに送信するようになった。

 NASAのチームの見立てによれば、FDSの不調が通信トラブルの原因であるようだ。

週末、FDSが再起動され、問題が発生する前の状態にリセットしようとしたが、ボイジャー1号はまだ適切なデータを返してこない(NASA
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ボイジャー1号のイメージ図 / image credit:NASA, ESA, and G. Bacon (STScI)

46年前のマニュアルを頼りに回復を試みる

 ボイジャー1号は、地球からもっとも遠く離れた人工物だ。なにしろ、それはもう太陽系にいない。今から46年前の1977年に打ち上げられ、2012年に太陽圏を飛び去ったからだ。

 素晴らしい偉業だが、古い機体ならではの大変さがある。

 NASAの専門家たちは、ボイジャー1号のトラブルに対処するため、数十年前に書かれたマニュアルまで読まねばならなくなっている。

意図しない結果にならないよう、入力されたコマンドがボイジャー1号の動作にどう作用するのか理解するには時間がかかる(NASA

 また距離も問題だ。地球から送信されたコマンドがボイジャー1号に届くまで22.5時間。そこから返信が地球に届くまで、さらに同じだけかかる。

 つまり送信したコマンドがうまく働いてくれるかどうかは、45時間待たなければわからない。

 NASAの専門家たちは、慎重にかつ根気強く、作業に当たらねばならない。

・合わせて読みたい→ボイジャー打ち上げ40周年記念で、NASAがダウンロードフリーのポスターを公開

 ボイジャー1号でトラブルが発生したのは今回が初めてではない。昨年、ボイジャーのテレメトリデータが文字化けしてしまい、実際の位置や方位と一致しなくなったのだ。

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 ちなみに姉妹機のボイジャー2号も、地球から遠く離れた宇宙で音信不通になったり(関連記事)、迷子になったりと、長きにわたって宇宙で孤独に旅を続けているため、不具合が生じている。

 それでも老体に鞭打ちながら、ボイジャー1号も2号もがんばって宇宙の不思議と謎を解き明かすために現役で活躍してくれている。

 ボイジャー計画は、NASAでもっとも長く続けられているミッションなのだ。今年46歳ということは、一部のカラパイアの読者が生まれる前から宇宙にいるなんてすごくない?まだまだ元気で頑張ってほしいので、地球から応援メッセージを空に向かって叫んでみるか。

追記:(2023/12/17)本文を一部訂正して再送します。

References:Engineers Working to Resolve Issue With Voyager 1 Computer – The Sun Spot / written by hiroching / edited by / parumo

 
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NASAの探査機「ボイジャー1号」に異変。意味不明な言葉を繰り返す