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上司だからといって部下を奴隷のように扱う権利はない。あまりに酷いハラスメントには、然るべき対抗策が取られることもある。東京都の40代男性から、こんなエピソードが寄せられた。

「上司から『お前みたいな奴は死ね!』と言われました。奴は常時サボりまくりで私に全ての仕事を丸投げしているだけ。そこで録音して警察と労基に訴えました」

人権無視の暴言を吐いてくる上司にリベンジした話だが、その後どうなったのだろうか。編集部が男性に取材を申し込むと、驚きの結末を明かしてくれた。

「貴様は俺の奴隷だ!黙って命令に従え!」

それは16年ほど前のこと。会社は人材派遣等の仕事を請け負っており、社員数は300人前後でそれなりの規模だった。問題の上司は当時40代後半の男性で、部長という肩書きだったが

「ふだんから仕事をしないで、パソコンゲームやネットサーフィンなどをしていました。昼休みは3時間も取っていましたね。仕事中に風俗にも行っていたようです」

というから驚きだ。そんな上司から、なぜ男性は、「お前みたいな奴は死ね!」などと暴言をぶつけられたのか。

「私は上司のミスの対応をしていたのですが、社長への報告では全て私のミスのせいにされました。社長の前で自分は悪くないとアピールするために言ったのだと思います」

ひど過ぎる理由に呆れるばかりだが、暴言はそれだけではない。

「『お前なんぞ、ここを辞めちまえ!他に雇われても同じだ』とか、上司の仕事の残業を断ると、『常識で考えろ!』と怒鳴られ、始発までサービス残業させられたこともあります。そのときは『貴様は俺の奴隷だ!奴隷は口を使うな!黙って命令に従え!』と怒鳴りつけられました」

耳をふさぎたくなるほどの暴言だが、特に酷かったのがこんな仕事の丸投げだ。

「明らかに5人以上で1か月間はかかる株式上場準備のための経理システムの構築を、全て私1人でさせて、『3日以内に出来ない場合は懲戒処分だ』と脅されました」

「どこでもパワハラや暴行が頻発していました」

しかも、実は「暴力」も振るわれていた。それは上司一人では無かったという。

「殴る蹴るの暴行は上司以外にも、社長や営業部長などからもありました。私は初め経理部で、その後3箇所くらい部署を転々としましたが、どこでもパワハラや暴行が頻発していました。一番ひどいのが経理部長でした」

なんと会社中が凄まじく荒れていた。今よりもコンプライアンス違反に厳しくない時代だったとはいえ、社長が暴力を振るうようでは救いようがない。男性は退職を決意するとともに、然るべき行動に出た。

「最初に警察に電話で相談したところ、何か証拠を準備するよう助言を受けました。そこで、退職する3か月間前あたりから、ICレコーダーで上司が暴言を吐くところを数回録音しました。録音した資料を警察署に持参して、初めに生活安全課、次に刑事課の窓口に行きました」

暴力や暴言が日常的だったため、確実な証拠が録れたようだ。同時に、労働基準監督署にも訴えた。

「タイムカードや録音データなどを持参して、方面という部署に行きました」

方面とは「監督課」のことで、法定労働条件の相談や勤務先の労基法違反について行政指導を求める申告を受け付ける部署だ。

会社は営業停止、上司は懲戒解雇

こうして訴えた結果、事態は大きく動いた。会社に警察が乗り込んで来たのだ。

「警察が来た途端、上司は態度を変えて誤魔化していましたが、暴行罪などで逮捕、起訴されました。暴行罪は執行猶予付きの有罪判決となりましたが、裁判の前に懲戒解雇になっています」

警察の後に、労働基準監督署も会社にやって来た。なんと、社長も逮捕されたという。

「会社は労働基準法違反と派遣法違反により、罰金刑と営業停止になりました。派遣事業免許の取り消し処分も受けています。私の件以外にも、未成年者に深夜労働をさせるなどしていたため、労働局という労基署の上部組織が動いていたようです」

そもそも労働局から目を付けられていたためか、厳正な処罰が下された。男性の提出した証拠も大きな決め手になったのではないだろうか。

その後、会社は派遣業以外の別の事業で現在も存続しているという。もちろん、男性は上司のクビを見届けてすぐに転職した。この経験について、

「転職したらかなり条件が良くなりましたから、稀有な経験としてはまぁありかも。転職前は年収380万円くらいでしたが、転職後は約500万円前後に、さらに転職して現在は840万円ほどです」

と余裕を見せて語った。

※キャリコネニュースでは「上司に言い返したエピソード」をテーマにアンケートを行っています。回答はこちらから。https://questant.jp/q/B1C9Z5LN

パワハラ上司に「お前みたいな奴は死ね!」と言われて警察と労基に訴えた結果