東急不動産株式会社(以下「当社」、本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:星野 浩明)は、管理運営する「一番町東急ビル」(東京都千代田区)、「恵比寿ビジネスタワー」(東京都渋谷区)において改修工事によるBELS評価を取得し、ZEB Orientedを達成しましたので、お知らせいたします。また、「日本橋本町東急ビル」(東京都中央区)でもZEB Orientedを達成する見込み※1です。

 国内では、新築ビルでのZEB水準目標が先行し、当社も含め竣工事例が出始めていますが、既存ビルでのZEB化はなかなか進んでおらず、既存ストックの環境負荷低減は課題とされています。当社では、新築ビルに留まらず、既存ビルにおいても計画的にZEB化を進めており、ZEB化改修工事完了は当社初となります。

 今回、改修工事前と比較し、3棟合計で、電気使用量では42%の削減、CO2削減効果は約1,360t-CO2/年が見込まれ、省エネと脱炭素に加え、エネルギーコスト削減にも寄与します。

 難易度が高く事例が少ない既存マルチテナントビルでZEB化を達成し、今後も継続していくことで、ストックの大半を占める既存ビルの環境負荷低減を図り、脱炭素社会の実現に向けた具体的な取り組みと入居者の快適性や満足度の維持・向上を実現してまいります。

※1 一番町東急ビル、恵比寿ビジネスタワーは、「建築物省エネルギー性能表示制度(以下、「BELS」)」の評価をそれぞれ2023年12月1日12月8日付で取得。日本橋本町東急ビルは、現在BELS申請中で、2024年1月末に取得予定。

■ 既存賃貸ビルにおけるZEB化改修の希少性

 日本政府は2050年にストック平均でのZEB水準達成を目標に掲げており、新築ビルについては一定の進展が見られるものの、ストックの大半を占める既存ビル、特にマルチテナントビルについては、多くの入居企業との調整が必要となるなど、新築時と比べ様々な制約が存在することからZEB化のハードルが高いとされています。既存建築物のZEB化改修事例では、そうした調整を必要としない自社ビルでの改修事例は多いものの、マルチテナントビルでの事例は非常に少ないのが現状です※2。加えて、将来における入居企業の退去時に段階的に工事を実施することを前提とした、設計段階での申請に基づく評価取得の事例が大半で、本件のような、実際にZEB化改修工事が複数棟において完了しているケースについては、さらに事例は少なくなります。

 ※2 一般社団法人環境共創イニシアチブの公開データから、オフィスビルのZEB改修事例は276件存在したが、マルチテナントビルはそのうち5件(当社調べ)

■ 当社初のZEB化改修工事

 脱炭素社会実現の重要項目とされる既存ビルのZEB化改修では、省エネ性能はもちろんのこと、入居者の快適性の維持・向上を実現させることをめざしました。

 今回ZEB化改修を行った3棟では、いずれも空調設備の更新時期を迎え、従来の空調システム「直膨コイル型全熱交換器(加湿器組込)と冷暖同時ビル用マルチ」を「DESICA※3と更新用高効率冷暖同時ビル用マルチ」に変更し、さらに冬季における乾燥対策として加湿器を追加設置することで、入居者の快適性を向上しながら省エネルギーを実現しました。また、具体的な機種選定にあたっては、過去の運転実績データに基づいた稼働状況を分析し※4、ビルごとに最適なスペックの機器を選定しました。

 さらに、空調設備更新にあわせて照明器具のLED更新工事も行い、別々に施工するよりも工事期間を短縮し、入居者の負担が少なくなるよう配慮しています。

 ※3「DESICA」はダイキン工業株式会社が提供する空調機器(水配管レス調湿外気処理機)の商品名

 ※4 ダイキン工業株式会社が提供する保守メニュー「エアネットサービスシステム」のデータを分析

改修前後の空調システムの比較

 ZEB改修前後における入居企業の電気使用量は42%減となり、その内訳は空調及び照明の電気使用量ですが、特に空調の電気使用量は55%減に達します。3棟で合計した入居企業の電気使用量に伴うCO2削減効果は約1,360t-CO2/年に達すると見込まれ、これは改修前の一番町東急ビル(中規模オフィスビル)約1棟分の入居企業の電気使用量に相当※5するなど、大きな脱炭素効果を上げることができます。

 ※5 集計方法:一番町東急ビル、恵比寿ビジネスタワー、日本橋本町東急ビルにおいて工事完了した区画のうち、改修前後で同一の企業が使用している区画(14区画)を選定して比較した合計値。比較対象期間は、コロナ禍の影響を考慮して改修前:2018/11~2019/10、改修後:2022/11~2023/10と設定した。CO2換算係数は、環境省の公表値(令和5年提出用、東京電力エナジーパートナー株式会社:0.456kg-CO2/kWh)を使用。

■ 今後の展開

 オフィスビルの稼働を維持しつつZEB水準のビルとしての付加価値を高める改修工事を実施することにより、入居企業とその価値を共有しながら良好なパートナーシップを構築し、さらには施設の長期安定した運営にも大きく貢献すると考えています。

 今後も当社が保有・運営するビルにおいて、今回のZEB化改修工事で獲得した知見を積極的に展開することにより、新築・既存ビル両面で環境負荷低減にチャレンジし、脱炭素社会実現へ向けた取り組みを本格化してまいります。

■ 東急不動産ホールディングスにおけるZEB/ZEH水準への取り組み
 東急不動産ホールディングスでは、中期経営計画において、新築着工ベースで、ZEB/ZEH Oriented相当またはそれを超える建物性能を2025年度までに約50%、2030年度までに100%の目標を設定しています。さらに、計画を前倒し、新築ビルについては2022年3月以降原則ZEB水準化※6するとともに、分譲マンションは2023年度に着工ベースでZEH100%達成を、都市型賃貸・学生レジデンスでは2025年度に100%達成を目標にしています。

 また、東急不動産では、自社で再生可能エネルギー事業を大規模に展開する強みを活かし、2022年12月に当社事業所及び保有する全244施設※7において使用電力の100%再生可能エネルギーへの切り替えを達成しており、今回改修した対象ビルにおいても、自社の再生可能エネルギーを利用しています。

 ※6非住宅の大型保有物件(延床面積10,000平米以上)を対象。共同事業など一部除く
 ※7 施設数は、2023年1月31日時点。一部施設を除く

■(参照)BELSとZEBの概要

 BELSとは、建築物の省エネ性能を表示する第三者認証制度の1つです。評価機関が省エネ性能を客観的に評価し、一次エネルギー消費量をもとに5段階の星マークで表示しています。ZEB(Net Zero Energy Building)とは、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことです。ZEBには省エネ性能の高さによって『ZEB』、Nearly ZEB、ZEB Ready及び延べ面積が10,000平方メートル 以上の建物を対象としたZEB Orientedの4種類があります。

BELSに関する運営サイト:https://www.hyoukakyoukai.or.jp/bels/bels.html

環境省ZEB PORTALサイト:https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html

■ 施設概要

■ 「環境で選ばれる商業施設・オフィスビル」に向けたプロジェクトについて

 当社は、都市事業で展開するオフィスビル・商業施設において「環境で選ばれる施設」をめざし、テナント企業をはじめとするステークホルダーとともに、様々なプロジェクト(パートナー企業と協業した環境負荷低減[ゼロエミッション倶楽部]、使用済みクリアファイルの貸出傘への再生、屋上菜園活動「Vegetable Smiles(ベジスマ)」での芋緑化など)に取り組んでおります。今後も、様々なステークホルダーと協業しながら、オフィスビルでの廃棄物の削減や再利用、広域渋谷圏での更なる緑化推進等、環境課題の解決に向けた取り組みを推進し、共創による事業機会の拡大を図ってまいります。

■ 長期ビジョン「GROUP VISION 2030」でめざす、「環境経営」と「DX」の取り組み

 東急不動産ホールディングスは2021年に長期ビジョン「GROUP VISION 2030」を発表しました。多様なグリーンの力で2030年にありたい姿を実現していく私たちの姿勢を表現する「WE ARE GREEN」をスローガンに、「環境経営」「DX」を全社方針として取り組んでいます。

 中核企業である東急不動産では「環境先進企業」をめざして様々な取り組みを積極的に進めており、2022年末には事業所及び保有施設※の100%再生可能エネルギーへの切り替えを完了しました。

 ※一部の共同事業案件などを除く

≪貢献するSDGs

東急不動産ホールディングス「GROUP VISION 2030」について

https://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/group-vision-2030/

東急不動産ホールディングス「中期経営計画2025」について
https://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/ir/mgtpolicy/mid-term-plan/

配信元企業:東急不動産株式会社

企業プレスリリース詳細へ

PR TIMESトップへ