『へレディタリー/継承』(18)、『ミッドサマー』(19)のアリ・アスター監督が、ホアキン・フェニックス主演の新作『ボーはおそれている』(2024年2月16日公開)を引っ提げて約3年ぶりに来日。12月18日に都内映画館でジャパンプレミアを行い、アリ監督の大ファンという歌舞伎俳優の市川染五郎が駆け付けた。

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染五郎から来日歓迎の花束を受け取ったアリ監督は「恐ろしい秘密を隠し持ってる歌舞伎一家の話がいい。染五郎さんは善人のようでありながら最も悪人という役どころでどうですか?」と染五郎主演映画プランをぶち上げた。この提案に染五郎は「実際にそんな人間だと思われていたら嫌ですが…」と苦笑いしつつ「役としてだったらやりたい」と前向きだった。

マーティン・スコセッシ監督、ポン・ジュノ監督らも絶賛する異才の新作を待ちわびる日本の観客に向けてアリ監督は「この映画は長年作りたいと思っていた作品です。トーンがころころ変わるから、今のシーンいいな!と思ったら…すみません。すぐに変わります。逆にこのシーン嫌だなと思ったら…すぐに変わります。僕の内臓を泳ぎ回るかのような体験を楽しんでほしい。1回と言わず2回は観て」とユーモア交じりにアピール。

また前作『ミッドサマー』の日本での大ヒットに触れて「その理由はきっと、日本の観客が最高だからでしょう。是非とも『ボーはおそれている』でもその記録を樹立してほしいです」と祈願。すると染五郎は「歌舞伎とアリ監督作の共通点は、グロテスクな表現さえも美しく見せてしまうところ。そこが歌舞伎とアリ監督作品の魅力」と分析し、鶴屋南北による「東海道四谷怪談」を勧めて、アリ監督から「上演する際は教えてください」と言われていた。

先んじて本作を鑑賞した染五郎は「ホアキンさんの芝居に圧倒されました。ホアキンさんとはどんな空気感と距離感で作られたのかを知りたい」と質問。これにアリ監督は「ホアキンは役者として全身全霊で役に向き合うタイプ。色々とチャレンジをしたがる。私の指示に対して彼なりに色々とアレンジして試す。私も彼の好きにやってもらって新しい可能性を広げていくのがとても楽しかった。ホアキンと仕事をすると演出や芝居が常に変化して生々しいものになる」と答えていた。

取材・文/石井隼人

『ボーはおそれている』ジャパンプレミアの様子