若者を中心に問題となっている市販薬の過剰摂取(オーバードーズ=OD)について、厚生労働省の有識者検討会は12月18日、20歳未満への販売規制を強化する取りまとめ案をおおむね了承し、最終会合を終えた。

依存性のある6成分が含まれる咳止めや風邪薬など「濫用等のおそれのある医薬品」が対象で、20歳未満は大容量や複数個の販売を禁止し、小容量の製品1個とする。

対面または映像と音声によるオンライン購入を原則とし、薬剤師などが氏名や年齢などを確認する。また、その情報や販売状況について記録し保管する方針。陳列についても、直接購入者の手の届く場所に並べないこととする。

12月13日には、東京・目黒区の小学校で女子児童2人がODの疑いで救急搬送されたケースもあり、委員からは「重大なことが起こりつつある。医薬品を扱うプロとして、対策を社会に向けて発信する責務がある」などの声が上がった。

●全国52の消防本部を調査、「女性」「若者」多い傾向

医師や薬剤師、業界団体などの代表でつくる「医薬品の販売制度に関する検討会」は今年2月から議論を始め、この日が11回目の会合。取りまとめ案について、ドラッグストアやOTC処方箋なしで購入できる)医薬品の業界団体などから過剰な規制に対して慎重な意見も出されたため、さらに追記や文章の表現を修正する。資料はこちら。

最終の取りまとめは、年内か年明けに発表される見通し。今後、厚生科学審議会・医薬品医療機器制度部会で検討され、2025年以降に医薬品医療機器法改正に向けて動く流れだ。しかし、OD対策については社会問題化していることもあり「必要性があれば、法改正より先行して実行に移す可能性もある」(厚労省担当者)としている。

また消防庁と協力し、全国的に調査した結果を初めて公表した(グラフ)。政令市都道府県代表52の消防本部から2020年1月から2023年6月までの救急搬送人員、年代、性別を抽出。初診時の傷病名に「OD」「オーバードーズ」「薬」かつ「過剰」等のキーワードが含まれるものを検索し集計した。

誤飲等が含まれている可能性もあり、「ODが原因で搬送された事例を網羅したものではなく、あくまで参考値」としながらも、担当者は「これまでの研究の傾向と同様に、若年層や女性で増加傾向にあることがわかる」としている。

特に10代女性は年々増加しており、2023年は上半期で686人と、すでに前年の1202人を上回るペースとなっている。

現在の取りまとめ案に示されている主な対策は以下の通り。

・20歳以上であることを確認する。外見だけでは判別が難しい場合には、免許証や学生証等の写真付きの公的な身分証の提示を求めること等により年齢を確認することとする。ネット販売の場合、本人認証済みのアカウントや本人確認サービスを利用するなど、確実に確認できる方法により確認を行う。
・原則1人1包装単位の販売とする。特に、20歳未満の者が購入を希望する場合、適正な使用のために必要最低限の数量に限って販売することとし、小容量の製品1個の販売のみとする。
・他店での購入状況について確認する。なお、濫用目的での購入への対策として、できるだけ早期に購入履歴の一元管理を行い、複数店舗での重複購入を防止する仕組みを導入することの検討が濫用防止の実効性を高めるために必要である。
・情報提供の徹底及び不適正な医薬品入手の防止のため、直接購入者の手の届く場所に陳列しないこととする。

市販薬のオーバードーズ対策強化、20歳未満は「小容量1個」販売に限定へ 厚労省検討会で案まとまる