モンゴルで木製の馬の鞍が発見された。放射性炭素年代測定法による分析によると、西暦267年から535年の間のものであり、東アジアで最古の鞍であるという。
これによりモンゴルの草原文化の隆盛が、いかに乗馬技術の進歩に助けられた可能性が高いかが明らかになった。
木のフレームで作られた鞍は、馬の背中でしっかり体を支えられ、あぶみも簡単に取りつけられるようになっている。より重たい物を運ぶことができ、乗り手も制御しやすく、さまざまな騎乗戦闘が可能になる。
「現代の乗馬では鞍とあぶみは欠かせないものだが、乗馬が始まった数世紀には、これらは使われなかった」とケンブリッジ大学の論文著者、ジャムスランジャフ・バヤルサイハン氏は述べている。
鞍やあぶみの発展は、騎乗戦闘に革命をもたらし、ユーラシア全土の広範囲に及ぶ社会変革に寄与したが、この技術の起源はあまり理解されていないという。
こうした乗馬技術変革の始まりを追跡するために、アジア、ヨーロッパ、北米の考古学者チームが、西モンゴル、ウルド・ウラン・ウニートにある、人馬の骨が出てきた洞窟埋葬地で見つかった鞍を調べた。
放射性炭素年代測定から、鞍は西暦267年から535年の間に作られたものと推定され、東アジア最古の木製の鞍であることが判明した。
鞍を構成している材料を分析したところ、近隣で調達されたものであることがわかった。革はこの地域で飼育されていた馬のもので、木材は地元産の樺の木だった。
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革新的な鞍の開発が遊牧国家の繁栄につながった可能性
これは、東ユーラシア草原の乗馬文化が、この新たな乗馬技術を採用しただけでなく、その開発や製造の助けにもなっていたことを示している。
同じ時期にモンゴルで発見されたものの中には、初期の金属製あぶみがついたものもある。
重要なのは、初期モンゴルの強力な帝国連合で、5世紀から6世紀にかけてモンゴル高原を支配した遊牧国家、柔然(Rouran Khaganate)の台頭と時期が一致していることだ。
騎馬戦闘を容易にした新たな鞍開発の技術が、この台頭を助けた可能性がある。
柔然国は、軍事的成功をおさめながら内アジアを支配していった。こうした高度な鞍の製造技術がなければ、支配の成功は不可能だったかもしれない。
騎馬戦闘の技術
このような特別な発見は、東アジアおよび中央アジアの歴史理解に大きな意味をもつ可能性がある。
新たに騎馬戦闘の技術が改良されたことが、初期の草原政治体制の形成に貢献したとみられている。
この発見によって、柔然国の台頭がフレーム鞍と金属製のあぶみをいち早く採用したことと関連した、技術的優位性によって助けられたという説得力のある可能性を浮き彫りにしたと、バヤルサイハン氏は述べている。
References:The origins of saddles and riding technology in East Asia: discoveries from the Mongolian Altai | Antiquity | Cambridge Core / Earliest 'true' saddle in east Asia discovered / written by konohazuku / edited by / parumo
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