チョン・ウソンが聴覚障害のある画家・ジヌを演じるドラマ、韓国版「愛していると言ってくれ」が「癒やされる」「大人なラブストーリーで良い」と話題を集めている。1995年に日本で放送された北川悦吏子脚本のヒットドラマをリメイクしたこの作品で、ジヌと絆を深めていく女優の卵・モウンを演じているのが、現在37歳のシン・ヒョンビンだ。34歳だった2020年に一躍ブレイクを果たした“遅咲き”女優として、韓国ドラマ界で熱い注目を集める存在の彼女のキャリアに迫る。

【写真】必死に手話で伝えようとするけなげなシン・ヒョンビン“モウン”の姿にグッとくる

■日本版とは設定が大きく変わった韓国版「愛していると言ってくれ」

日本版「愛していると言ってくれ」の放送当時、主演を務めた2人は豊川悦司が33歳、常盤貴子が23歳。豊川演じる晃次の色気ある佇まいとともに、常盤演じる紘子の弾けるような若々しさも、作品が愛される大きな要因となった。

それから28年を経て放送・配信されている韓国版では、ストーリーの舞台が2023年現在の韓国に変更されたのに加え、主人公2人の年齢設定も大きく異なる。

13年前からドラマ化を熱望していたというウソンが「13年前なら原作の主人公ともう少し近い年代の設定になったと思うのですが、今回は私たちが主役を演じることによって年代が上がったんですね」、ヒョンビンも「年齢が上がることによって、ものすごく大人な、深い悩みというか、そういった部分が変わりましたね」と話しているように、韓国版で描かれているのはぐっと大人な2人の恋模様。距離の取り方や関係の深め方、表情や別れ際の余韻に至るまで落ち着いたムードが全体に流れ、韓国版ならではの味わいを見せている。

■デビュー作で「百想芸術大賞」新人賞受賞

そんな韓国版「愛していると言ってくれ」で存在感を放っているのが、ヒロインを務めるシン・ヒョンビンだ。

大学で演劇を学んで基礎を身につける俳優も多い韓国にあって、ヒョンビンは美術系の大学に進学。大学卒業後に思うところあって女優の道を歩み出し、24歳の時にオーディションを経て映画「パンガ?パンガ!」(2010年)のベトナムの少女チャンミ役でデビュー。本格的に演技の勉強を始める前だったにもかかわらず同作での演技が大評判となり、当時は「シン・ヒョンビンという女優はベトナム人らしい」といううわさも流れたほど。2011年に「第47回百想芸術大賞」映画部門で女性新人演技賞を獲得している。

その後「ペク・ドンス」(2011年)、「Mimi」(2014年)、「推理の女王」(2017年)、「ミストレス~愛に惑う女たち~」(2018年)、「自白」(2019年)など数々の作品に出演し地道にキャリアを積んできたヒョンビンだが、その女優人生を大きく変える作品と出会ったのは2020年のこと。ドラマ「賢い医師生活」で外科唯一のレジデントチャン・ギョウルを演じ、ブレイク。デビューからちょうど10年がたっていた。

■最終回のキスシーンも話題を呼んだ「賢い医師生活」

「賢い医師生活」で演じたギョウルは、頭もよくレジデントとしての能力は高いものの、コミュニケーション下手で思ったことを口に出してしまうキャラクター。意識の回復が難しい子どもの患者の容体を母親に説明する場面で、助かる見込みが少ないとストレートに伝えてしまい、先輩医師に厳しく叱られる。

だが、勉強熱心な性格と恋が、そんな彼女を変えていく。片想いの相手は、かつて自分を叱った小児外科の医師アン・ジョンウォン(ユ・ヨンソク)。相手の気持ちを推しはかるのが下手なギョウルがジョンウォンのちょっとした言動に一喜一憂する姿は何ともけなげで共感を集め、シーズン1の最終回、クリスマスにジョンウォンドラマチックなキスを交わすラストシーンは視聴者を熱狂させた。

この「賢い医師生活」で34歳にして人気女優の仲間入りを果たしたヒョンビンはその後、ソン・ジュンギ主演の話題作「財閥家の末息子〜Reborn Rich〜」(2022年)で名門出身の検事ソ・ミニョン役にキャスティングされ、正義感が強く大胆なキャラクターを好演。ジュンギ演じるドジュンとのロマンス演技も話題を呼んだ。

■非凡な感性と地道なキャリアが紡ぐ稀有な女優人生

34歳でのブレイクは、デビュー作でいきなり映画賞を獲得するほどの感性と、10年に及ぶ地道なキャリアに裏打ちされたものだ。出演中の「愛していると言ってくれ」の演技でも、そんな彼女の確かな表現力が堪能できる。

ジヌとモウンのコミュニケーションは手話と筆談、そして互いの表情を読むことで進むが、それでも、年齢差やバックグラウンドの違いに戸惑いながらも引かれ合う2人の感情のゆらぎははっきり伝わってくる。第一次韓流ブームから20年にわたりトップを走り続けるチョン・ウソンの演技力はもちろんのこと、そんなウソンと互角の存在感でモウンを演じるヒョンビンの力量も相当なもの。SNSでも「演技に引き込まれる」「表情豊かで本当に好き」と話題だ。

今作でその非凡な表現力を発揮する注目女優シン・ヒョンビン。彼女が演じるモウンとジヌの恋の行方をじっくり味わいたい。そして韓国版か日本オリジナル版か、友人同士でどっち派などと会話をしながら盛り上がるのも一興だろう。

「愛していると言ってくれ」はディズニープラスのスターにて独占配信中(全16話/毎週月・火曜1話ずつ配信)。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

「愛していると言ってくれ」第3話より/(C) 2023 KT Studio Genie Co., Ltd/原作 日本のテレビドラマ「愛していると言ってくれ」(脚本 北川悦吏子・製作 TBS)