2020年にドバイで開かれた万博は、投資家たちの期待を集め、不動産市場に大きな影響を与えた。それから10年後の2030年には、サウジアラビアの首都、リヤドで同じように万博開催が決まっている。ドバイと同じように、不動産市場に影響を与えるだろうか。

2020年のドバイに続き、2030年にはリヤドで万博開催

ドバイ万博は壮大なビジョンを持ち、人間の革新、文化、技術の集大成を披露した。広大な会場ではさまざまなパビリオンが展開され、世界中から何百万もの訪問者が訪れた。2030年にはサウジアラビアの首都、リヤドで開催が決まっている。会場は、現在開発中のキング・サルマン国際空港の近くで、市内中心部から車で約20分で行ける。

万博による経済効果はイベントが開催される5年前から始まり、閉会5年後まで大きな影響をもたらすという。通常、イベント終了後にホスト国の経済に持続的な好影響をもたらすだけではなく、訪問者と投資家の流入により、不動産市場の持続的な成長も促進する。

ミラノ、上海、ドバイ、これらの先行Expoホスト国は、世界経済が減速したにも関わらず、イベント前後で不動産価格が上昇した。リヤドもこの傾向に続くと予想されている。またUAEのビザ規制は緩和され、特にフリーランスの労働者や国内で引退を考えている人々にとっては、この国に投資する大きなチャンスとなっている。サウジアラビアも同様の手法を取り入れ、事業家、経営者、専門家、外国人を誘致するため、ドバイのゴールデンビザに類似したサウジ・プレミアム・レジデンスとう居住権制度を導入し、ビザの制約を緩和している。

サウジアラビアにとって「2030年万博開催」が意味するもの

サウジアラビアで万博が開催されることは、同国にとって計り知れないほどの観光、ビジネス、イノベーションの展望をもたらすだろう。

サウジアラビアでは、成長戦略「Vision 2030」に合致するように、経済を多様化させ、石油依存から脱却、観光、エンターテインメント、金融など分野に進出している。NEOM(サウジアラビアの新興都市)などの未来都市や、リヤドメトロのようなインフラ開発「Vision 2030」を具体化するものだ。そして万博の開催はその成長を世界に誇示する機会だといえるだろう。非石油部門によって牽引される同国のGDP成長は、2022年と2023年にG20諸国で最高の成長率を達成している。

リヤド万博の予算は78億ドルで、エネルギー、交通、物流、クリーンエネルギー、技術への投資に対する1兆ドルのコミットメントも決まっている。万博の開催はサウジアラビアの国際的な地位を向上させるだけでなく、リヤドを世界トップ10の都市経済に押し上げるとされる。革新的でエコフレンドリーな取り組みは、経済成長、雇用機会、不動産市場での需要増加を約束し、サウジアラビアダイナミックな未来をもたらすだろう。

「リヤド万博」は投資家にとってもビッグチャンス

リヤドで万博を開催に向けて、大規模なインフラの整備が行われ、それにより多くの雇用機会が創出されている。また万博に向けた様々な開発は、万博終了後も同国に持続的な成長をもたらすものになるだろう。まさにプラスの遺産ともいうべきものの一例を挙げるなら、広範囲に張り巡らされたインフラ網。公共交通機関、道路、橋などの建設は、市内のさまざまな地域への接続性も向上させた。

万博はインバウンド観光客の誘致ににもひと役買うだろう。観光にしろビジネスにしろ、インバウンド客は、ホテルやレストランなど、さまざまな観光関連サービスの需要増加を引き起こす。これは万博開催中の一時的なものではなく、長期的なものになるだろう。

また万博は、不動産を含むさまざまなセクターでの雇用機会の急増をもたらすだろう。開催に向けて、建設労働者建築家、エンジニア、物件管理者などの雇用が必要とされるが、これらを受け入れる住宅不動産への需要をさらに促進している。これにより経済成長も促され、不動産市場全体を刺激。さらに多くの投資が誘発され、開発プロジェクトが推進されている。

ドバイ万博では開催が迫るに従い期待と興奮が高まり、ドバイ全体での不動産需要が急増した。供給は追いつかず、新築・中古どちらも価格は上昇したのだ。リヤド万博でも同じような現象が期待されている。リヤドの不動産価格はまだ低水準にあるが、万博開催~閉会後には大きく上昇することが確実視され、投資家にとってはビッグチャンスといえる。すでに多くの外国投資家はリヤドで居住用マンションを購入しはじめ、5年間保有したあと、万博開催前に売却する計画を立てているという。果たして、ドバイ万博時の再現なるか。注目である。

※画像はイメージです/PIXTA