中国家電大手TCLの日本法人に勤務していた中国籍の30代女性が休職期間満了による退職扱いの無効などを求めていた裁判で東京地裁(小原一人裁判長)は12月7日、退職を無効とし、会社側に慰謝料など約50万円とバックペイ(解雇期間中の賃金相当額)1800万円弱の支払いを命じる判決を言い渡した。

判決によると、女性は2019年3月に適応障害を発症して休職。その後、「休職期間満了後も休職事由が消滅しないときは自然退職」という就業規則により、2019年10月に自然退職となった。

これに対し、女性側は期間満了前に「復職可能」とする医師の診断書を提出しており、退職扱いは不当と主張した。

裁判所は女性の診断書について、「復職可能」とされていたものの、「最初の2カ月程度は4時間程度の勤務とすることが望ましい」旨の留保があったことから、健康状態が元に戻ったとは言えないと指摘。診断書などから、「寛解」とされたあとも不安定な状況が見られるなどとして、女性は当時復職可能な状態にはなかったと判断した。

一方で、直属の上司から強く叱責されたり、合理的な理由がないのに反省文の提出を指示されたりするパワハラ被害があったことを認定。同時期に退職勧奨や配置転換があったことなどから、女性の適応障害は業務に起因するものと判断し、業務による病気の療養中に解雇することを禁じた労働基準法19条1項を類推適用して退職を無効とした。

ただし、上司による事実誤認に基づいた警告がきっかけだったとはいえ、女性が上司に対して慇懃無礼であったり、挑発的だったりする応答をしたことなどが、関係性をより悪化させたと考えられるなどとして、慰謝料は2割減とした(素因減額)。

なお、女性側は当時の社長や副社長からのパワハラも主張していたが、たとえば前述の配置転換についても必要性があるとして、いずれもパワハラとは認めなかった。

上司のパワハラ認め、休職期間満了での退職を無効に 中国家電大手に1800万円支払い命令 東京地裁