アートイベント「デザインフェスタ」(通称:デザフェス)に出店していた焼き菓子店(目黒区)が販売したマフィンの購入者が体調不良を訴えていた問題で、目黒区保健所は行政処分を見送ることとした。

目黒区保健所は12月19日、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「調査した結果、食中毒の原因となる菌が見当たらず、断定には至らなかった」と答えた。

⚫️「腐敗」による行政処分は45年間実施されず

目黒区保健所によると、店は11月11日と12日に開催されたデザフェスの5日前からマフィンをつくり始め、常温で保存していたという。デザフェスでは9種類約3000個が販売され、一部の購入者がSNSで「納豆のように糸を引いている」と指摘し、腹痛や嘔吐を訴える人もいた。

目黒区保健所が、体調不良を訴えていた人のうち7人の便を調査したところ、食中毒の原因となる菌はなく、行政処分には至らないと判断したという。

一方で、食品衛生法6条は、腐敗した食品を販売することを禁じている。

「第6条 次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

1 腐敗し、若しくは変敗したもの又は未熟であるもの。ただし、一般に人の健康を損なうおそれがなく飲食に適すると認められているものは、この限りでない」

マフィンは腐敗の可能性が指摘されていた。

しかし、目黒区保健所の担当者は「たしかに法令上は、腐敗したものを販売したことについて、行政処分は可能となっているが、具体的な数値などの定義がなく、何を持って腐敗していると判断することは難しい」と話す。

この法令による行政処分は、都内では1978年の「いなりずし」による食中毒の事例以降、45年間実施されていないという。

"糸引きマフィン"「食中毒の原因となる菌」見当たらず…行政処分見送り、「腐敗」だけでは困難