場内にクリスマスツリーが飾られ、年末ムードの漂う神奈川・横浜大さん橋ホールで行われたHomecomingsデビュー10周年の締めくくりライブは、Chamber SetとBand Setの二部構成で行われた。

 まずはChamber Set。畳野彩加(Vo/Gt)、福富優樹(Gt)、福田穂那美(Ba/Cho)、石田成美(Dr/Cho)というHomecomingsの面々とチェロバイオリンなどのストリングス・チームが姿を見せ、「Here」からライブはスタート。畳野の透明感あふれる歌声と厚みのあるバンドサウンドに流麗な弦楽器の旋律が加わり、会場の温かみが一層深まっていった。

 バイオリンの美しい旋律が印象的な「Smoke」から、一気にパワフルなバンドサウンドに雪崩れ込む。「PLAY YARD SYMPHONY」だ。エバーグリーンな魅力を放つこの曲を演奏しながら、畳野と福富と福田は石田が座るドラムセットのほうを向いて、息の合ったアンサンブルを展開。石田はこのライブの約2か月後、2024年2月にバンドから卒業することが発表されている。そのことを思うと、石田を中心に4人がぎゅっと集まった光景はとりわけぐっとくる。

 この時期にぴったりの「ANOTHER NEW YEAR」、福田がビートを手掛けた「Drowse」を続け、福富が10周年イヤーに大きなホールでライブができることに対して感謝を述べ、最新アルバム『New Neighbors』のタイトルには「あなたの隣人になってもいいでしょうか?」という意味が込められていると話した。「リスナーと手を取り合っていきたい。そういう気持ちで今日演奏してまいりましたがどうでしたか?」と呼びかけると、大きな拍手が巻き起こった。

 Band Setは畳野が「皆さん立っても座ってもどっちでも大丈夫です。自由に楽しんでください」と言って、「Cakes」からスタート。石田の力強いビートが響き、オーディエンスが自然とハンドクラップで後押しし、初期の代表曲「HURTS」へ。オーディエンスがじっと聴き入るように豊潤なサウンドを楽しんでいたChamber Setから一転、多くが立ち上がり、気持ちよさそうに体を揺らし、時折歓声が上がった。

 「LIGHTS」ではネオアコ特有の甘酸っぱさを振りまき、大サビで畳野の歌が弾むような躍動を見せ、クライマックスへと向かった。シューゲイズな音像を挟み、「Shadow Boxer」へ突入。石田の重たいドラムとたゆたうような畳野の歌が交錯し、混沌とした景色を描く──かと思ったら、軽やかなコーラスパートに入り、オーディエンスの気持ちを浮上させるなど、さまざまな景色を矢継ぎ早に描いてみせる。約10年間かけて築いてきたバンド・アンサンブルの妙が存分に発揮されていた。

 福富が「10周年ということで、『New Neighbors』という、より自分の魂が丸ごとこもっているアルバムを作ることができたり、ツアーをしたり、いろいろなことがあったんだけど、続いていくんだって想いを込めて新曲を作ってきました」と言って、新たな眩さを感じさせる新曲を披露する一幕もあった。

 アンコールでは畳野の口から、2月10日に京都のKBSホールで行うライブの対バン相手はくるりであるということが発表された。感嘆の声が上がるなか、「うれしい!」と喜びを露わにした畳野。「来年もライブをガンガンやっていきます。今回のChamber Setもやる予定なので、そのときも遊びに来てください」と告げると、「今日も最高! 今年もありがとう!」というオーディエンスの声が上がった。聴き手と近い距離で音楽を鳴らし続けてきたHomecomingsのスペシャリティを象徴するような光景だった。最後はストリングス・チームと一緒に「Songbirds」を披露。極上の華やぎを届け、メモリアルなライブを締めくくった。

Text:小松香里


◎公演情報
【Homecomings New Neighbors FOUR Won’t You Be My Neighbor?】
2023年12月10日(日)
神奈川・横浜大さん橋ホール

◎公演情報
【Homecomings New Neighbors FOUR Won’t You Be My Neighbor? February.10, 2024 at Kyoto KBS Hall」
2024年2月10日(土)
開場:16:00 / 開演:17:00
京都・KBSホール
出演:Homecomings
ゲスト:くるり

<ライブレポート>Homecomings の10周年イヤー終幕、音楽でつながる“隣人たち”に贈った二部構成ライブ