アニメファンにとって充実だった今期の秋クールが終わり、2024年1月からは冬クールがスタートする。様々なジャンルの作品がずらりと並んでおり、来期も深夜のアニメライフは楽しくなりそうだ。ネットでの盛り上がりを見ると今期は「呪術廻戦」「葬送のフリーレン」の二強が大きな支持を集めていたが、来期は何が来るのか。覇権候補に対抗馬、ダークホースになりそうなタイトルをチェックしてみた。

【写真】穏やかな旅と日常を紡ぐ「フリーレン」など、冬クール期待のアニメ5選

■「葬送のフリーレン」は来期も覇権最有力。魔法都市では何が起こる?

呪術廻戦」と並ぶ秋クールの覇権アニメだったと言っていい「葬送のフリーレン」(毎週金曜夜11:00-11:30、日本テレビ系/ABEMA・ディズニープラスHuluほかにて配信)。悠久の時を過ごすエルフの隔絶した人生観から語られるエピソードが感情を刺激して止まず、切なさはありつつも心を揺さぶる情緒に富んだ魅力にあふれている。また、原作の落ち着いた雰囲気を大切にした物語の進行、派手さに向かわない“静のアクション”がじっくりと作品世界に浸らせてくれている。

1月からは第2クールに突入するが、気になるのは旅の先で何が起きるのか、だ。本稿執筆時点では第1クールラストの内容は不明だが、まず一級魔法使いの資格を得るために魔法都市に入るのは間違いない。フリーレン(CV.種崎敦美)の実力であれば試験は楽勝と思われるが、物事に不器用な彼女ゆえにとんでもないトラブルを起こしそうでもある。また、これからの行き先は魔族の棲む土地柄でもあるため、断頭台のアウラのときのような冷たく怖いフリーレンが顔を見せることもあるのかもしれない。いずれにせよ第2クールも期待を裏切らない毎話となるだろう。

■ぐんぐん支持を伸ばした「薬屋のひとりごと」。ミステリーはさらに奥深く

第2クール作品では「薬屋のひとりごと」(毎週土曜深夜0:55-1:25、日本テレビ系/ABEMA・ディズニープラスHuluほかにて配信)も外せない一作だ。アニメ化発表時は「呪術廻戦」「葬送のフリーレン」の陰に隠れて話題に上ることはあまりなかったが、放送が始まると一躍注目を集めたある種ダークホース的な作品だ。後宮に仕える薬師の少女・猫猫(CV.悠木碧)が薬学の知識と持ち前の考察力、観察眼を駆使して後宮で起こる怪事件を解決に導くミステリーの組み立てと、そこに重なる後宮社会の複雑な人間関係からなるサスペンスが秀逸なストーリーを生み出している。

人体に有害な“おしろい”から始まった謎解きは現代の知識を持つ視聴者には難しいことなく理解できるものだったが、物語の進行と共に次第に事件の推理は難しさを増していき、観る楽しさをどんどん刺激してくれる。第2クールではどんな事件が起きるのか。事件の裏で動く人間模様も大きくなってきているだけに興味を惹きつけて止まないところだ。

■注目株の深夜のヤバイ飯テロダンジョン飯

来期新作では原作漫画全14巻の人気作、「ダンジョン飯」(1月4日より毎週木曜、夜10:30-11:00、TOKYO MXほか)の先行上映が行われ、さっそく面白いと話題になっている。妹を救出するためにダンジョン最奥を目指すいわゆるダンジョンRPGものだが、注目は食料を買う金も失ってしまった主人公・ライオス(CV.熊谷健太郎)たちが道中、自給自足で作る“ダンジョン飯”。迷宮内で狩った魔物を食材に、「大サソリと歩き茸の水炊き」「人喰い植物のタルト」などといった未知で斬新なダンジョングルメで腹を満たしていくのだ。先行上映を観たファンからは「ファンタジーグルメ漫画の新しい扉」「案の定腹減った。1月からは深夜の飯テロヤバいかも」「コラボフードの展開に期待!」などの胃袋を掴まれた感想が続々と上がっており、期待値は間違いなく高そうだ。

また、「ダンジョン飯」は異色のグルメアニメという一面だけでなく、世界観はケルト神話を下地にした正統派ファンタジーというのも馴染みやすいポイントだろう。人によっては「ダンジョン&ドラゴンズ(D&D)」と例えた方が分かりやすいかもしれない。そんな純ファンタジーの中で、魔物の生態、体の構造などが学問的に解説されているのがまた面白いところ。これは魔物を調理するというリアルさからくるもので、そうした独自性も本作の堪能してもらいたい魅力となっている。

■全員が主人公級、異次元の豪華声優陣「異修羅

前評判が高い作品は他に幾つもあるが、その中で豪華声優陣という視点で挙げておきたいのが「異修羅」(1月3日より毎週水曜、TOKYO MXほか/ディズニープラスにて配信)になる。魔王が何者かに殺された世界を舞台に、あらゆる力の頂点を極めた修羅たちが、誰が最後に残る勇者かを決める死闘に身を投じるというストーリー。2021年の「このライトノベルがすごい!」の「単行本・ノベルズ部門」において史上最高の票数で1位に選出された作品の満を辞してのアニメ化になる。最強対最強というのはバトルもの好きには胸の高まるシチュエーションだが、さらに本作が他と違うのは、「地球最後の柳生剣士」「究極の武具を集め尽くしたワイバーンの冒険者」など、キャラクターの多様さにある。PVの作画は相当気合いが入っており、本編でどんなアクションが見られるのかが楽しみだ。

そして前述した声優陣には、メインキャラクターの一部を挙げるだけでも梶裕貴上田麗奈福山潤保志総一朗雨宮天、朴口美、高橋李依ら錚々たる名前が並んでいる。SNSでは「声優ラインナップがバチクソに強すぎ」「全員『主役』の豪華声優。そんだけ1キャラ1キャラ大事に描いてるってことでいいかな?」「キャスト名だけ見てリアタイ決めた」という期待コメントが多く見られる。これだけの実力派声優が集まるならば、そこで起こる芝居の化学反応も注目のしどころとなるだろう。

■“北海道あるある”とご当地ネタがウケる「道産子ギャルはなまらめんこい

最後にダークホースとして挙げるのは、北海道北見市生まれの作者・伊科田海が描く同名漫画のアニメ化「道産子ギャルはなまらめんこい」(1月8日より毎週月曜、深夜0:30-1:00、テレ東テレビ北海道ほか)だ。東京から北見市に転校してきた高校生・四季翼(CV.島崎信長)と道産子金髪ギャル・冬木美波(CV.佐倉綾音)との恋模様を描く本作。ギャル耐性が全くない翼と、ギャルと言っても純朴な道産子の美波とが織り成す思春期ラブコメディーが共感と笑いを誘い、何より反響を呼んだのは、随所で放り込まれてくる“北海道あるある”やご当地ネタ。都会人には理解できない“あっちの方(歩いて3時間)”、肺が凍る清新な空気(マイナス8度)、北海道限定の乳酸菌飲料ソフトカツゲンフレンチドッグには砂糖を付けるなど、北海道民の文化や生態が毎話楽しく描かれていく。

クセのあるキャラクターデザインには好みが分かれそうな気配だが、PVでは美波のかわいさや、後に登場する黒髪清楚系の秋野沙友里(CV.花守ゆみり)、才色兼備な夏川怜奈(CV.上田麗奈)の個性がしっかり表現されていて、SNSには「原作再現バッチリで安心した」「アニメになって四季折々のイメージが膨らんでいく」などの歓迎する声が多数。他にも「道産子方言女子のなまらめんこさを知るが良い!」「北海道弁の破壊力、たまらん」など、美波たちが使う北海道の方言に注目するコメントも目立っている。

ここまで5作を挙げてきたが、冬クールは50作以上もあり、趣味、嗜好で観たい作品は変わってくるだろう。「呪術廻戦」を手掛けたMAPPAのオリジナル新作「ぶっちぎり?!」は、不屈の名作「BANANA FISH」のアニメ化を担当した内海紘子が監督。韓国発で世界的な人気を博す小説、漫画のアニメ化になる「俺だけレベルアップな件」。安定した人気の「うる星やつら」の第2期。ボンズ25周年記念作で出渕祐(総監修・シリーズ構成)とタッグを組む玄人ファン向けの「メタリックルージュ」など、目に止まる作品はまだまだある。まずはWEBザテレビジョン冬アニメ特集ページで気になる作品を探してみてほしい。

種崎敦美島崎信長の崎は、正しくは「たつさき」

朴ロ美のロは、王へんに路

文:鈴木康道

第2クールも期待が高い「葬送のフリーレン」 (C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会