フジテレビ出身のフリーアナウンサー長谷川豊氏が話題のニュースに関する見解を教えて!gooで毎週コラム連載!

今回の話題は「新成人」です。

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昨日の成人の日、晴れて126万人(推計)の新成人が新たに大人の仲間入りをしました。
街を歩いていても慣れないスーツ姿の若者や晴れ着姿の女性を見ると、未来の明るい希望のような気がして、とても暖かな気持ちになります。彼らの前に広がる明るい未来を願ってやみません。そして、同時に僕たちの世代が、彼らの希望や未来を暗いものにしてしまってはいけないと、そう思います。

でも、現実はどうでしょうか?

今の若者たちは「さとり世代」と自分たちを名乗るそうです。博報堂の若者研究の第一人者である原田燿平さんの著書に『さとり世代 盗んだバイクで走り出さない若者たち』というのがあるんですが、これがかなり面白い分析をしていて、とにかく情報にまみれてしまっているので、リスクを取る前に辞めてしまう若者たちの実像をとても的確に、シュールに分析しています。もしよければご一読あれ。価値ある一冊です。

ソニー損保も今年の新成人に対しライフ意識調査を行っているんですが、今年の新成人が一番乗りたい車は…燃費抜群の「プリウス」。

いや、いいですよ?プリウス、僕も乗ってました。とても素晴らしい車です。その選択であっています。「悟れて」います。でもね、ちょっと待ってって言いたくなるわけです。僕らの世代からしてみると。
僕は今年40歳になるわけだけれど、言うまでもなく僕らの世代が一番乗りたい車って言えば、ベンツでありBMWであり、フェラーリでありポルシェだったわけです。まさか20歳のころに燃費を考えて車に乗りたいとは思ったことはありませんでした。結果、バカみたいに燃費が悪く、日本の車道に適さないことを「悟る」わけだけれど、それはまた後々の、子供とかが出来た後での話でした。
同じソニー損保の調査を見ていくと「車に興味がある」と答えた成人は半数にも満たない46%。しかし、その46%の中でも「所有する経済的な余裕がない」と答えた若者が71%でした。
これも僕の世代とずいぶん違います。
僕は大学の3年生の1月という非常に早い時期に内定をもらえたものですから、まず何をしたかって、車を買いました。何をおいても、車を持ちたかったので、今でも覚えているんですが、車両価格7万円のミツビシのミラージュという車を購入しました(笑)。今でも覚えてますけどいい車だったな~。かなりの型落ちでしたけれど、ピカピカに磨いて、車内はとにかく清潔に保っていました。

お金ですか?

ある訳ないじゃないですか?車を保持するためにバイトでした。時給の高いバイトを求めて、京都市内のパチンコのバイトでした。パチンコのバイトは、当時はまだ玉の上げ下ろしなどもあり、たばこの煙もすごく、その代わりに時給が他のと比べて高かったんですよね。賄い(まかない=お食事ですね)も出るし。特徴を挙げると…

まず何がしたいか?があって、その為に、努力をして行動しました。その結果「体験」と「経験」を得ました。そんな20前後の頃を思い出します。

11日の日刊ゲンダイさんにこんな記事が載っていました。

■草食どころかもはや“枯れ葉” イマドキ新成人の深刻事情

記事によると、大手恋愛相談所が全国で行った調査の結果、現在「恋人がいない」と答えた若者の数は74.3%にのぼり、そもそも、今まで一度も異性と交際経験のない若者が47.8%…つまりほぼ半数だったのです。単なる草食系増加で恋愛にオクテなんだろうという数字を超えている、と言われ、夫婦問題研究家の岡野あつこさんのコメントとして、

「SNSの普及で若者のコミュニケーション能力が低下したこと」
「生身の人間との関わりがない分、感情は貧困になったこと」
「気疲れするデートにお金や時間をかけるくらいなら、趣味を充実させたいと思う」

などの理由を紹介していました。まさに「さとり世代」。仙人のようです。

難しいのが、半分までは今の若者の方があっているって点です。現在の経済状況を考えたら車なんて持たない方がいいに決まってるし、カーシェアリングも普及しつつある。レンタカーもある。ガソリン代や税金、維持費を考えれば、持たない方が賢明です。
恋愛も同じ。無駄で無理な恋愛にいそしむくらいなら趣味をやっていてもいいですし、同性の友人と遊んでいる方が楽しいことも理解できます。

僕たちは悟ってもいなかったしバカでした。なので、車を買い、無駄な浪費をし、結果、日本全体の経済は循環していました。恋愛をし、様々な経験をすることによって、人を傷つけ、いたわり、傷つけられ痛みを知りました。これはネットの文章を読んでいるだけではわからない「体感」であり「体験」でした。人は「経験」しないと理解できない生き物です。そういう意味では、最初から「経験」を放棄している若者たちは、半分、間違っているようにも思います。

情報過多の時代、すでに回答を知ってしまった上で、間違っていたり傷つくことから避けることは当然の選択です。と、同時に、その経験がなければわからない「気持ち」もあります。車に乗ってみないと、恋愛を実際にしてみないと分からないことがたくさんあります。ネット上の文章を見ていて理解できない部分にも大切なことがあることを、もう少し知ってもらえればさらによくなるのだろうなぁ…と老婆心ながら感じた、2015年の成人の日でした。

長谷川豊(Hasegawa Yutaka)

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