TOPPANホールディングスのグループ会社であるTOPPANデジタル株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:坂井 和則、以下 TOPPANデジタル)と国立大学法人東北大学大学院情報科学研究科 青木・伊藤(康)研究室(所在地:宮城県仙台市、以下 東北大学)は、「機械学習に基づく画像マッチング手法の研究」に関する共同研究を2021年9月より2023年3月まで行ってきました。

 このたび、本共同研究の成果に関する論文が、第29回画像センシングシンポジウム(SSII2023)にて「最優秀学術賞」を受賞しました。SSIIは画像処理に関する国内最大級の学会で、今回は116件の発表があり、1,600人を超える参加がありました。

人工物メトリクスの原理

■論文について

タイトル:印刷ムラを利用した人工物メトリクス(※1)

著者名:酒井修二†  渡邉浩太‡  渡邉隆史†  伊藤康一‡  青木孝文‡

     †凸版印刷(※2)  ‡東北大学

URL: https://www.ssii.jp/ssii/ssii_history.html

■研究の背景

 近年、模倣品や横流し品などの不正流通の世界的な拡大に伴い、その被害額は増加の一途をたどり、真正品の売り上げ減少やブランド価値の低下を招いています。このような課題に対し、TOPPANグループでは、ホログラムやICタグなどを活用した偽造防止と不正流通防止の製品・サービスを展開しています。

 このような中、TOPPANデジタルと東北大学は、TOPPANデジタルがこれまで培ってきた印刷物に関する知見及び画像処理技術と、東北大学の個体識別技術を融合し、「印刷物の人工物メトリクス」を題材にディープラーニングを用いた画像マッチング技術の確立のための共同研究を進めてきました。

 このたび、共同研究の成果である印刷ムラを利用した人工物メトリクスに関する論文をSSII2023で発表したところ、その内容が評価され、「最優秀学術賞」を受賞しました。

■論文の概要

 人工物メトリクスとは、人工物ごとの固有の特徴を用いて、人工物の各個体を識別する技術です。人工物では、材料や製造工程などの様々な要因により、個体ごとにバラツキ・ムラが発生し、これらのバラツキ・ムラを手掛かりに、人工物メトリクスは各個体を識別することができます。本論文では、印刷物における印刷ムラを手掛かりに印刷物の個体識別が可能であるという仮説を立て、そのためのアルゴリズムを提案し、実験を通して仮説を検証しました。その結果、同一の原稿から印刷した500個の印刷物をスマートフォンで撮影した画像において、誤差0.3%未満の精度(※3)で識別できることができました。また、本手法による識別精度は、従来の個体識別用のディープラーニング手法を大きく上回り、バーコードやロゴマークなどの特性の異なる印刷物にも有効であることを確認しました。このように、本手法を用いることで、様々な印刷物に対して、スマートフォンのような簡易な撮影装置で高精度な個体識別が可能であることを示唆しました。

■今後の展開

 TOPPANデジタルは今後、さらなる精度向上や個体識別可能な対象の拡大を図り、人工物メトリクス技術を向上していきます。また、トレーサビリティ分野における人工物メトリクスシステムとして展開していきます。

※1 人工物メトリクス

各人工物に固有の特徴を用い人工物の個体を識別する、トレーサビリティや真贋判定への活用から注目されている技術

※2 凸版印刷

発表日(2023年6月14日)時点での社名。現在はTOPPANホールディングスのグループ会社であるTOPPANデジタル株式会社に所属。

※3 精度

個体識別の精度評価指標として等価誤差率(Equal Error Rate: EER)を利用

* 本ニュースリリースに記載された商品・サービス名は各社の商標または登録商標です。

* 本ニュースリリースに記載された内容は発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。

以  上

配信元企業:TOPPANホールディングス株式会社

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