いま、インド株が注目を集めています。経済成長を支える生産年齢人口の増加、現在の経済水準から見た成長ポテンシャル、第4次産業革命の担い手となるIT人材の輩出が主な理由です。投資に詳しい公認会計士税理士の岸田康雄氏が解説します。

OECD、インドのGDPを「2050年には世界第2位」と予測

生徒:いま、インドが急速に成長しているようです。

先生:OECDの公表によれば、2032年にはインドの国内総生産(GDP)は日本やドイツを上回って世界第3位になり、2050年には世界第2位になると予測されています。このように経済成長できるのは、人口が増えているからでしょう。とくに「生産年齢」と呼ばれる若い人たちの人口の増加でしょうね。

生徒:人口が減り続ける日本とは正反対ですね。

先生:国連によれば、インドは2023年に総人口が14億2,000万人となり、中国を追い越したといわれています。つまり、世界で1番人口が多い国になったということです。

生徒:すごい!

先生:それに加え、インドの人たちは若く、平均年齢は28歳です。「生産年齢人口」といわれる15歳以上65歳未満の人口が、国民全体の3分の2以上を占めています。このため、インド2050年頃まで、本格的な経済成長と株価上昇が続くといわれているのです。

生徒:高齢化が進む日本とは、全然違いますね…。

現在の経済水準から見た成長ポテンシャル

先生:これからインドの経済成長が本格的に始まると考えられます。2023年現在、国内総生産の規模はある程度大きくなってきはいるものの、1人あたり国内総生産で見ると、依然として低い水準です。現在、中国の1人あたり国内総生産が1万2,000ドル、日本が3万3,000ドルであるのに対し、インドの1人あたり国内総生産は2,000ドルにとどまっています。つまり、日本の10分の1未満です。

生徒:インド人の所得は日本人の所得の10分の1未満なのですね。

先生:この水準は、日本の1970年代の水準に相当しています。テレビやエアコンなどの耐久消費財が普及する目安である3,000ドルを超えるのは、2025年頃となると予想されています。

生徒:あと少しですね。そのころには家電製品や自動車がたくさん売れそうですね。

先生:インドは2020年時点で低所得層の人口が6割を占めていますが、2030年度までに中間層の人口が低所得層を上回る可能性があると見られています。1990年代以降から本格化した外国の家電メーカーの進出によって、インドの貧困層はむしろ、巨大な消費市場に変化しました。

生徒:日本と違い、インドではIoTやAIでデジタル化された家電製品がいきなり販売されますので、消費市場が一気に拡大しそうですね。

先生:この調子で国内総生産が増えると、消費を楽しむ中間層が爆発的に拡大するでしょう。インフラが整っていないインドでは、何のしがらみもない状態から新しいものを作ることができるというメリットがあるため、遠隔医療、ドローン農業、電子決済アプリなど、新たなサービスが産業の形を大きく変えようとしているのです。

第4次産業革命の担い手となるIT人材の輩出

先生:インドは理系のエンジニアが多く、数学者が国のリーダーになるとまでいわれていて、毎年150万人の学生が理系の大学を卒業しています。インド工科大学などの大学でITの高度な技能を習得し、アメリカやイギリスなど英語圏に移住する人が多いのです。こういった理科系エリートが、世界中のIT・AI産業で引っ張りだこの状態になっています。

生徒:そういえば、Google、MicrosoftIBMAdobe等の最先端企業の社長がインド人ですね。Googleのサンダー・ピチャイ氏、Microsoftサティア・ナデラ氏、IBMのアービンド・クリシュナ氏、Adobeのシャンタヌ・ナラヤン氏の出身がインドです。どうしてインド人はこんなに優秀なのでしょう?

先生:インドがIT人材大国となっている理由は、IT技術者が、インド社会に残るカースト制度に縛られない職業だからだといえます。生まれに縛られない職業の出現により、貧困から抜け出せるチャンスが生まれたのです。IT技術者の収入はほかの業種の10倍以上あるため、地方の貧しい村から大学合格者が1人出ると、村全体が貧困から抜けだすともいわれています。

生徒:そのような社会的背景があるのですね。

先生:最近では、アメリカに移住したIT技術者が、技術や知識をインドに伝える「頭脳還流」の動きが本格化しつつあり、インドの経済成長を後押ししているといわれています。

インド企業の個別株式は買えないが、投資信託やETFなら可能

生徒:インドの株式市場へ投資するにはどうすればよいでしょうか?

先生:現在のところ、インド企業の個別株式は日本から購入することはできません。しかし、投資信託やETFへ投資することが可能です。日本で購入可能なものはいくつかありますね。なかでも「インド・センセックス・インデックス」に連動するものがよいでしょう。

生徒:インド・センセックスというのは、どのような株価指数なのでしょうか?

先生:これは、ムンバイにあるボンベイ証券取引所に上場している主要なインド企業30銘柄で構成される株価指数です。これに連動するものとして、iシェアーズ・コア S&P BSE SENSEXインディアETFとiFreeNEXTインドインデックスがあります。信託報酬が少々高めなのですが、やむを得ません。これらを買うのがいいですね。

生徒:ハイリスクでもいいので、リターンが大きな投資信託はありませんか?

先生:株式市場の日々の値動きの概ね2倍程度の値動きとなるよう運用しているダブルブル型ファンドとして、NEXT NOTES インドNifty・ダブルブルがあります。Nifty 50株価指数というのは、ニューデリーにある国立証券取引所に上場している主要なインド企業50銘柄で構成される株価指数です。

生徒:インドへの投資の注意点はありますか?

先生:インド株式の注意点の1つは、国家の政情が不安定であることです。都市と農村の間での貧富の格差が拡大しているため、モディ政権の次には、また社会主義的な国家に逆戻りする可能性もあります。そうなると、経済成長の阻害要因となります。もう1つ、宗教対立による国際紛争のリスクも考慮すべきでしょう。

生徒:では、投資するのは危ないのでしょうか?

先生:インドには、リスクがあるにせよ、ほかにはない投資魅力があります。インドは経済が低迷してきた時間が長いだけに、今後の経済成長の伸びしろがとても大きいです。世界で起きている第4次産業革命とも相まって今後一気に爆発する可能性があるでしょう。

岸田 康雄 公認会計士税理士/行政書士/宅地建物取引士中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

(画像はイメージです/PIXTA)