過重労働で命を落とした医師の遺族らで発足した「医師の過労死 家族会」は12月20日、東京・霞が関厚労省を訪れて、医師の過労死を防ぎ、働き方改革を進めるよう厚労相に宛てた請願を提出した。

請願では、医療のスキルアップをしたり、研究や学会発表したりするために病院内でおこなわれる「自己研鑽」の時間を「労働」と認めることや、厳密な労務管理、労務管理に関する労働法などの研修義務付けなどを求めている。

家族会には、神戸市の甲南医療センターで働く中、過労自死した医師の高島晨伍さん(当時26歳)の遺族など、4家族が参加している。

この日、家族会は厚生労働記者会で会見を開き、日本の高度な医療の裏では、毎年のように医師の過労自死が発生している実態をうったえた。

共同代表で、晨伍さんの母である淳子さんは「二度と過労死が起きないよう、何かできることはないのかと思い、家族会を発足しました。患者の命を守るためにも、医師が働くために命を落とすことがあってはなりません。医師らの労働環境が改善されることを切に願います」と話した。

⚫️厚労省通達の見直しを求める

家族会は、医師の過重労働の改善や、働き方で悩む医師やその家族が相談できる場となるために発足したという。求めていることの一つに、厚労省が2019年に通達した「自己研鑽」の見直しがある。

通達では、上司の指示や業務との関連性がなければ労働とは認められないとしている。しかし、医師でもある晨伍さんの兄は会見で「私が医師として思うのは、そんなにはっきりと線引きできるような世界ではないということです。若手医師が修練を積むことは仕事であり、業務に必須です」と指摘する。

晨伍さんは2022年5月に亡くなる1カ月前、時間外労働は200時間以上あったと、労基署に認定されている。しかし、晨伍さんの兄によると、病院側は約30時間だったと主張しているといい、多くの時間が「自己研鑽」として扱われているのではないかと述べた。

「晨伍は、自己研鑽の時間がなく、悩みを重ねていました。そのことをしっかりと受け止めてほしいと思います」

家族会の請願では、「在院時間=労働時間」を原則とすることを求めている。

⚫️家族会は署名活動などにも取り組んでいく

家族会には、東京財団政策研究所の渋谷健司医師や、病院のコンサルティングなどを手がけている株式会社ワークライフ・バランスの小室淑恵社長、全国医師ユニオン代表の植山直人医師らがサポーターとして参加している。

家族会は今後、厚労省や国会議員、行政への働きかけのほか、シンポジウムの開催や署名活動などにも取り組んでいくという。

過労死した医師の遺族らが「家族会」発足、過重労働の改善もとめて厚労相に請願