時代を超えて高い人気を誇る「プレデター」シリーズ最新作『プレデター:ザ・プレイ』(22)が、12月22日(金)にブルーレイ+DVDセット/4K UHD コレクターズ・エディションで発売される。ダイナミックなアクションで異星の最強ハンターとの死闘を描く本シリーズだが、最新作では建国前のアメリカを舞台に、先住民族の少女を主人公にしたドラマが展開される。徹底してリアルにこだわった映像描写により、これまでにない魅力を持った作品に仕上がった。ブルーレイでしか観ることのできないメイキングや音声解説、全編コマンチ語での視聴が可能な点など、ボーナス・コンテンツで明かされる、本作の真髄に迫っていきたい。

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■強者との戦いを求め、地球に飛来する謎のハンター“プレデター

300年前のアメリカ大陸コマンチ族の優れた戦士タアベ(ダコタ・ビーバース)の妹ナル(アンバー・ミッドサンダー)は、戦士に憧れ密かに戦いの訓練を続けていた。そんななか、謎の生物プレデターの襲撃により、コマンチ族に危機が迫る。圧倒的なパワーで殺戮を続けるプレデターに、ナルは知力と体力の限りを尽くして立ち向かう。

本作は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の『プレデター』(87)にはじまるシリーズ最新作だ。米軍の精鋭部隊がジャングルプレデターゲリラ戦を繰り広げる第1作を皮切りに、プレデターロサンゼルスの市街地に出現する『プレデター2』(91)、プレデターの猟場に拉致された猛者たちのサバイバルを描いた『プレデターズ』(10)、プレデターが地球に飛来してきた理由が明かされる『ザ・プレデター』(18)とこれまでに4作品が公開。スピンオフ『エイリアンVS.プレデター』(04)、『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』(07)も製作された人気シリーズだ。

シリーズの人気を支えているのがタイトルロールのプレデター。彼らは、ドレッドヘアのような頭部の触手にアーマー、光学迷彩や鋭いリスト・ブレイドプラズマキャノンなど完全武装した筋肉質のヒューマノイドであり、ヘルメットの下には、上下左右に大きく開く口を持つ醜悪な顔を持っている(シュワルツェネッガー演じるダッチ少佐の「なんて醜い顔なんだ…」の名セリフも有名)。プレデターが地球に来た目的は“狩り”。強い相手に戦いを挑み、弱者には目もくれない孤高のポリシーは最新作でも貫かれている。

プレデター」シリーズは同じ世界線を共有しているが、時代設定が異なるためストーリーの関連性はほとんどない。そのため初めて観る人も素直に作品世界に入っていけるのが特長だ。本作の舞台は第1作(1987年)の約300年前、1700年前後のアメリカ大陸で、プレデターが最初に地球を訪れる原点というべき物語。シリーズに初めて触れるなら、まず本作から観始めてもよいだろう。

また、ひとくちにプレデターといっても種は一つではなく、シリーズを通しいくつかの種が登場している。本作に登場するのも細身でどこか素朴な顔つきで、メイキング映像の中でもダン・トラクテンバーグ監督がこれまでとは別の種であることを明かしている。獲物の頭蓋骨らしきオーガニックなマスクを被り、プラズマキャノンの代わりにアロー(矢)を装備するなど武器類も従来に比べ質素な作りで、デザインもコマンチ族との親和性が考慮されている。

■本物を目指した“リアルな”文化的描写

地球に飛来したプレデターは、アメリカ先住民族の戦士たちと激しい死闘を繰り広げる。特典映像の一つ、「メイキング・オブ『プレデター:ザ・プレイ』」でトラクテンバーグ監督が、影響を受けた作品としてバイオレンスアクションの金字塔『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)を挙げている。セリフに頼らずアクションで魅せる作品を目指し、辿り着いたのがアメリカ先住民族のコマンチ族だったという。シリーズ初期からそのデザインにはジャマイカの戦士のエッセンスが取り入れられており、どこかエキゾチックな雰囲気を醸していたプレデタートマホークや槍を手にしたコマンチ戦士と戦う姿が絵になるのも納得だろう。

そんな本作には、コマンチの血を引くプロデューサーのジェーン・マイヤーズが参加している。主演のナル役にインディアンの部族であるスー族の血を引く女優ミッドサンダー、そのほかの主な俳優陣にも先住民族たちが集められた。コマンチの研究家ファニータ・パドポニーが監修を担当、各技術パートにも先住民族が加わるなど、リアルを追求したキャスティングを徹底。その結果、狩猟や栽培、薬草作りから手話やアイコンタクトによるコミュニケーションまで、先住民族の暮らしがこと細かく再現されている。それは敵に挑むフォーメーションも同様で、そのこだわりがプレデターとの戦いにかつてない臨場感を与えている。メイキングには撮影前のお祓いとして行われた先住民族の儀式も収録。コマンチへの強いリスペクトが伺える。

本作のオリジナル言語は英語だが、全編コマンチ語の吹替バージョンも作成された。コマンチ族のトレーナーの特訓を受けた俳優たちが自ら吹替えているため違和感がなく、ミッドサンダーによると先住民族を集めた試写では拍手が沸き起こったという。コマンチ語は英語とは異なる独特のリズムを持っており、本作の世界観をより盛り上げている。なおパッケージの音声には、英語、日本語、コマンチ語が収録されており、英語もしくは日本語字幕と組み合わせて観ることができる。

■座談会や音声解説で知る、“リアルな”撮影舞台裏

本編の再生にあわせて裏話が語られる音声解説には、トラクテンバーグ監督や主演のミッドサンダー、撮影のジェフカッター、編集のアンジェラ・M・カタンザーロが参加した。本作の撮影はロケが中心。5日間もかかったという過酷な底なし沼の脱出シーン、天気待ちなど、ロケ撮影ならではの苦労話が盛りだくさん。リアルを求めて何気ないシーンに合成技術が用いられていたり、逆に存在感を出すために造形物にこだわるなど、端々に創意工夫が伺える。プレデターに追われたナルたちが背の高い草原に逃げ込むシーンは、ちょうどいい高さの草原がなかったため苗を植えて草原を作ったというエピソードにも驚いた。このほか、第1作へのオマージュがさりげなく挿入されていたり、プレデターの円形シールドの元ネタが人気ゲーム「GOD OF WAR」だったり、同じ20世紀スタジオ作品であるハリソン・フォード主演作『野性の呼び声』(20)の映像を、激流のシーンの一部に使用していたことも明かされる。ちなみに、冒頭に映し出される「20th CENTURY STUDIOS」のロゴを光学迷彩で消そうとしたらスタジオ側に拒否されたなど、楽しいトリビアも盛りだくさんだ。

一方、「スタッフ&キャストの座談会」では、トラクテンバーグ監督とミッドサンダー、撮影のカッター、編集のカタンザーロ、プロデューサーのマイヤーズにキャラクター造形や特殊効果を担当したアレック・ギリスらが特設ステージに登壇し、本作に対する想いを熱く語り合う様子が収められている。印象的なのが、原始的な武器を手に激突するプレデターと戦士たちのアクションのベースになったのが香港映画だったというエピソード。ジャッキー・チェンの大ファンだというトラクテンバーグ監督は、手や足のアップではなく引き画のワイドショットで全身の動きを見せることにこだわりアクションシーンを構成。手持ちカメラの移動撮影も手伝って映像に躍動感を与えていたという。フランスの毛皮商人と戦うシーンでは、ナルが相手の武器を器用に奪って戦うなど、メイキング映像でもジャッキーからの影響が紹介されていた。

本作がユニークなのは、「プレデター」としてシリーズ屈指の作品であると同時に、戦いを通して成長する先住民族の少女のドラマとしても高い完成度を誇っていること。劇中にプレデターという呼び名は出てこないため、脚本を読んだミッドサンダーは最初本作が「プレデター」だとは気づかなかったと語っている。はじめてそれを知った時には、プレッシャーから思わず泣いてしまったそうだが、王道ドラマや歴史劇ではなくジャンル映画として“正統派コマンチ映画”ができたことを歓迎している。

美しい自然描写を重視したスタッフは、主なロケ地にカナダ先住民族の土地やロッキー山脈に沿って広がる大平原グレートプレーンズをチョイス。撮影のカッターはデジタル加工を最小限に抑え、360度広がるありのままの自然をカメラに収めたという。険しい野山、襲いくる野生動物など危険と隣り合わせに生きる先住民族たちの日々を映し出した映像も本作のリアルを支えている。

プレデターの造形を監修したのは、SFXスタジオ、ADIのトム・ウッドラフJr.とギリス。彼らは助手時代にシリーズ第1作に参加しており、独立後は「エイリアンVS.プレデター」シリーズなど多くの作品で活躍しているベテランだ。本作では時代設定に合わせてデザインや仕組みを変えながらリアルなキャラクターや装備を制作。存在感にこだわった本作では、動物たちの死体など多くの造形物で真に迫る映像をサポートした。

力と力が激突するアクション・エンタテインメントとして人気の本シリーズ。目線を変えリアルな描写にこだわることで、あらたな魅力を生みだした『プレデター:ザ・プレイ』の真の魅力を体感するには、ぜひブルーレイ+DVDセット/4K UHD コレクターズ・エディションに収録された、充実のボーナス・コンテンツをチェックしてみてほしい。

文/神武団四郎

「プレデター」ファン垂涎の、制作陣のこだわりが詰め込まれたブルーレイ+DVDセット コレクターズ・エディジョンが12月22日(金)発売!/[c] 2023 20th Century Studios.