青山学院大学に在学する現役女子大生で、演技やバラエティなどマルチに活躍している中川紅葉さんによるエッセイ連載「ココロすっぴん」。かなりの読書家で、大学生・タレント・インフルエンサーなどのさまざまな顔を持つ彼女が日々感じたことを、忖度なく書き綴ります。

【写真】ショートヘアも似合いすぎている中川紅葉

■#27「人前に出ること」

SNSのある時代に生まれて、心底よかったと思っていた。今のお仕事はミスコンがあったからつながっていったことがほぼ全てだし、コンテスト中に渡された個人アカウントがあったからSNSを始めるきっかけにもなった。それがいつからか「SNS=楽しい」の中に雑念が入るようになった。数万人、数十万人と見てくださる人数が増えれば、見えないでほしかった言葉に遭遇する確率も当たり前に高くなる。

よく、恋人が他の女の子にいいねしまくっていて嫌な気持ちになったという話を聞く。SNSのない時代なら、“何もかもが見えすぎて嫌になる”感覚自体が発達しなかったかもしれない(中川は“見えてこそ本質”と思うけれど)。

ずっと中川を応援してくださっていた方が今は他の子の応援ツイートばかりだなぁと思うこともある。その度に、自分の頑張り・魅力の欠損が遂に露呈したか...と危惧していたことを目の当たりにする。そんなどうしようもないことを考え、上手く寝られずYouTubeを開くと、バラエティで見ない日はないほどの有名芸能人の対談動画を見つける。彼女たちでさえ同じことを気にしているらしい。そんな動画に運よく巡り合い、こうやって自分を高めていくしかないのかもしれないと少しだけ安心をもらったりする。彼女たちのように、自分が嫌だと思うことを発信することで私のような人が救われるのもSNSの魅力なのかもしれない。

ただ、その「嫌」を人に当てはめてしまう人がたくさんいる。例えば、ありもしない噂や、いろいろな事情があってのことを違う方向から想像され、あることないこと(いや、ないことないこと)書かれているのを見つけてしまったり。なんかアイツ嫌い、という漠然とした嫌悪の矢印を向けられ、何度も暴れ回りたくなったこともあった。なんで書くのだ…見えてるよ…とエゴサーチ力を恨んだりもする。

そんなことが年々増える一方だけれど、それだけ人の目に触れる回数が増えたということだ。この仕事をするにはとてもいい予兆だと言い聞かせている。エゴサーチをしていたのは過去回にも書いた通り、わざわざ時間をかけて打ってくれた感想をなるべく見つけたいから。きっとツイートをすることで中川の目にも入るかもしれないと思って素敵な言葉を紡いでくれている方にはなるべく反応をしたいという気持ちもある。

アンチが出てきてやっと1歩目、という言葉とSNSを始めた4年前から向き合ってきた。そう思い過ごし目を瞑り、そんな言葉に出会ったら静かにスクショをして写真フォルダ「怖い方々」に放り込む。これは自分だけで悲しさを処理する大事な手段だった。誰にも見せず、自分が上手くいっていると感じる時にそれを見返す。驕らず、足りない所をどんな時も見つけるためにもよく使えるのだ。

■どうかこの方がこれ以上傷つきませんようにと願いながら

インスタライブをすれば、卑猥なコメントや嫌がらせの言葉を平然と言えてしまう人たちと出会う。令和というこの時代に、ネットリテラシーが謳われるこのご時世に、そんなことをしてしまえる感覚が理解できない。顔を晒して仕事をする立場にあると、何を言われてもそれに反応することすらできないのか。言われっぱなしでも「仕方がない」ものなのか。そういえば、もう4ヶ月ほどインスタライブをしようと思えていない。

高校時代から容姿の派手さに悩むことが定期的にあった。これは美醜とはまた別の次元の話で、例えばまつ毛が長いとか目が茶色いとか唇が厚いとかで、いわゆる「チャラく」見えることが多かった。それが嫌でまつ毛を切ったりわざと黒髪にしたりしていた時期もあった。

そんなどうでもいい周りからの見え方を気にしていた頃を最近は思い出してしまう。周りの大人たちにヘラヘラと“偶然見つけた言葉たち”が心に刺さったことを話すと、みんな口をそろえて「一見、耐性があって強そうだからなぁ紅葉ちゃんは」と言う。そうだった、その通りだ。悪い方向に“強そう=何言っても大丈夫そう”と働くことがあるんだった。

半笑いでしか相談できない私に、いつも真剣な顔で解決策と一番言ってほしい言葉をかけてくれる大人がいて恵まれているなと思う。きっと、言葉の重みに耐えられなかった人の周りには、こんなにクレバーで優しい人がいなかったのかもしれない。

言ってはいけないこと、齟齬が生まれること、悪口。探さなくてもタイムラインに流れてくる。“傷つく人がいる発言”“傷つけるための発言”“自分の気持ちだけの発言"に毎日出くわす。応援している有名人のツイートを見ていると、それに噛みつくコメントまで見つけてしまい、自分のことではないのに涙が出そうになる。

吊し上げられないと思っているから簡単に書き込んでいるのだろうか。相手が有名人だから何を言ってもいいとか、どうせ届かないから良い、と思っているのか。何かがあったら消すでは済まされない。そんなリプライやツイートを見るとそっと通報してしまう。どうかこの方がこれ以上傷つきませんように、見ていませんようにと願いながら。

もう誰もSNSで傷つかない方法はないのだろうか。もう二度とSNSで悲しむ人が出ないことなど不可能なのだろうか。

■【ヒトコト】

前回書きたいことがあると言いましたが、それは今後に回すことにいたしました。ということで、年内最後がこんな暗めなエッセイ!(笑)

来年はどんな年になるのでしょうか。どんな年にしてやろうかなと楽しみです。よいお年を〜。

現役女子大生タレント・中川紅葉のエッセイ連載「ココロすっぴん」/ 撮影=千葉タイチ/スタイリスト=稲葉有理奈(KIND)/ヘア&メーク=加藤志穂