クエンティン・タランティーノロバートロドリゲスタッグを組んだ2本立て興行『グラインドハウス』(07)で、『プラネット・テラー』と『デス・プルーフ』の幕間に上映されたイーライ・ロス監督による〝実在しない映画の予告編〞から生まれた『サンクスギビング』が12月29日(金)より公開される。

【写真を見る】R18+の衝撃!殺人鬼ジョン・カーヴァ―が、人々を食材に変えていく…

本稿ではこの公開を前に、まずは“記念日ホラー”の歴史を彩った作品たちを簡単に振り返ってみたい。

■『ハロウィン』(78)

米国の“ブギーマン伝承”と幽霊屋敷ものが融合したスラッシャー映画。実姉をめった刺しにして殺害、収監された精神病院から15年の時を経て脱走した凶悪な殺人鬼ギーマンことマイケル・マイヤーズが引き起こす数々の惨劇を描く。ジョン・カーペンター監督の緻密な演出や、自らが手掛けたシンプルかつキャッチーなテーマ曲が話題となり、長年にわたり多くのホラー・ファンから愛し支持される作品となった。

本作きっかけで“記念日ホラー”ブームが起こり、近年でも『テリファー』(16)や『ハロウィンキラー!』(23)などは、ハロウィンが舞台。また、『E.T.』('82)で自転車が浮遊するのもこの日だ。

■『13日の金曜日』(80)

湖畔のキャンプ場を舞台に、もっとも広く浸透したホラーキャラクターの1人、ジェイソン・ボーヒーズを生んだ“記念日ホラー”の代表格。人々をじわじわと追い詰めて、手持ちのオノや怪力などで惨殺するシーンは、観客たちに圧倒的な恐怖を植え付けた。なお、現在広く使用されるグレゴリオ暦では、1年に1回以上は必ず13日の金曜日が訪れる。

■『血のバレンタイン』(81)

バレンタイン・デイに起きた大量殺人が20年後に繰り返す、“記念日ホラー”最盛期の作品。ガス・マスクにツルハシを構えた殺人鬼のルックは、近年もフィギュア化されるなど人気が高い。

■『エイプリル・フール』(86)

秀作スラッシャー『夕暮れにベルが鳴る』(79)のフレッドウォルトン監督による、ある孤島を舞台にした異色の“記念日ホラー”。リメイク版に、『血のエイプリルフール』(08)がある。

■『ミッドサマー』(19)

90年代に入ると“記念日ホラー”は一気に下火に。その間にも『ラストサマー』(97)などのヒットはあったものの、本格的な再ブームには至らず。近年登場した『ミッドサマー』は、年に一度の祝祭自体をヤバいものとして描き、“記念日ホラー”に新たな可能性をもたらした。なお、本作で描かれた白夜に行われるスウェーデンの夏至祭は、移動祝祭日のため、毎年6月第4土曜が“ミッドサマー”=夏至の日となり、前日の金曜は儀式を始めた“ミッドサマー・イブ”となる。

■“記念日ホラー”の新たな金字塔、『サンクスギビング』が誕生!

そして2023年、ついに登場した“記念日ホラー”の新たな金字塔『サンクスギビング』では、往年の作品群へ敬意を込めた新たなホラーキャラクター、ジョン・カーヴァーが登場する。今回登場する記念日は、七面鳥の丸焼きを囲んで祝福する米国でもっとも盛大な祝日、感謝祭(=サンクスギビング)。イーライ・ロス監督の故郷にほど近いマサチューセッツ州プリマスを舞台に、謎の殺人鬼が住民たちをご馳走へと調理していく、恐怖の一夜が幕を開ける。

ここからは本作の唯一無二の魅力を、物語面とビジュアル面の2点から紹介していこう。

■次々と惨殺される住民たち。仮面の殺人鬼の正体は?

本作を鑑賞して唸らされたポイントの一つが、ミステリーとしての完成度の高さだ。町全体が活気づく感謝祭を舞台にすることで容疑者の数も多く、本格的な謎解きが楽しめるようになっている。

感謝祭を間近に控えた田舎町で、住民らが調理器具を凶器に惨殺される連続殺人が発生する。第一の事件はダイナーで働く女性。突如襲われて体を無残にも切断され、死体の半分だけが大型量販店の看板に吊るされるという衝撃的な始まりだった。すぐさま警察が捜査に乗りだすが、犯人は町の伝説の人物ジョン・カーヴァーの仮面を被っているせいで手がかりが掴めない。

つづく事件は、高校生グループが、ジョン・カーヴァーを名乗る犯人のインスタグラム投稿にタグ付けされたことが発端となる。インスタの写真には感謝祭の豪華なディナーに招待するような不気味なテーブルが映しだされ、殺人鬼が大胆にもターゲットへ事件予告をするような様子も。町中がパニックになり、不安がピークに高まっていく。

そして迎える感謝祭当日。感謝祭発祥の地であるこの町の住人たちは皆、この祝祭に対して並々ならぬ思いを抱いている者たちばかり。ブラックフライデー・セールで一儲けしようと企む町一番の権力者で大型量販店の経営者とその後妻。その経営者の娘で、継母との折り合いに悩む高校生。その高校生を取り巻く親友の女子たち、今彼や元彼。経営者をよく思っていない大型量販店の従業員やその家族。人間関係の因縁が渦巻くこの町で、感謝祭を祝うためにパレードにあふれかえったジョン・カーヴァーの仮面を被った人々の中に殺人鬼が紛れ込む。事件の捜査を続ける警察官は「誰も信じるな」と言う。仮面の裏に隠されたその正体はいったい誰なのかだろうか。

■斬新な殺人パターンが続々。続編も製作決定!

もう一つ本作を特徴づける要素が、ホラー慣れした玄人すらも予想がつかない、バリエーションに富んだ殺人手口の数々だ。かねてより感謝祭が舞台のホラーがないことに不満を感じていたロス監督は、5歳からの友人である脚本のジェフ・レンデルと共に、感謝祭ならではのアイデアをたっぷりと詰め込み、“人間七面鳥”など、料理になぞらえた驚きの殺人パターンを生みだす。

その甲斐あって(?)、全編にわたってハイテンションに展開する殺人絵巻はさながらジェットコースターのようで、見事映倫のレイティングではR18+を獲得。「これ以上の映画は撮れない。思い残すことはない」とまで言い切ったロス監督だったが、全米での大ヒットを受けて、早くも続編の製作が決定したという嬉しいニュースも。「自分たちが作ったものを超えるつもり」と、ロス監督も大興奮で意気込みを語っていることもあり、続編でもかつてない殺人パターンを見せてくれることに期待したい!

なお、本作と同じく『グラインドハウス』のフェイク予告編から誕生したロドリゲスの『マチェーテ』(10)は好評で、続編も製作。ジェイソンアイズナー監督による『ホーボー・ウィズショットガン』(11)は、フェイク予告編コンテスト優勝作品の長編化。本作に興味を持った方は、あわせて鑑賞するのもお勧めだ。

はたして仮面の殺人鬼、ジョン・カーヴァーとは誰なのか。驚きの正体は劇場で確認してほしい!

文/DVD&動画配信でーた編集部

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