親に仕送りをしてもらって大学に進学……そんな人も多いでしょう。時は流れ、年老いた親から、逆に「仕送りをして」と頼まれたら、どうしますか? 「十分、年金をもらっているはずなのに」「犯罪に巻き込まれて、お金を取られたのでは」など、色々な疑念が頭をよぎるかもしれません。年金を頼りに生きる日本の高齢者の生活。その実態は、想像以上に苦しいようです。みていきましょう。

お金を無心する両親…もしかして、犯罪に巻き込まれたんじゃ

――年金は夫婦で月28万円らしいけど「仕送りして!」と頼まれている

40代のサラリーマンの投稿からは、疑問の言葉が並びます。

――額面で28万円ということは、手取りで23万円くらい、それで生活できないなんてある?

――賃貸でなく持ち家。ローンは払い終えているはず……それでお金足りないなんてある?

――生活費以外の突発的なお金は、貯蓄から払っているらしいが……仕送りの必要、ある?

男性の両親は現役を引退して間もなく、ある程度、年金額も把握していたといいます。しかし実際に「年金だけで生活」してみると、とても足りないと、本人たちは驚愕しているのだとか。仕送りは月3万円程度。家計が苦しいながらも大学まで行かせてくれたり、男性は長男だし……親が困っているのだから仕送りするのも別に構わないと考えているようですが、モヤモヤ感がとれないといいます。

厚生労働省令和4年 国民生活基礎調査』によると、親に仕送りしている世帯は、親のみに仕送りしている世帯と、親と子ども双方に仕送りしている世帯を合わせて2.1%。50世帯に1世帯の割合です。仕送り額の平均は5.6万円、ボリュームゾーンは「2万~4万円未満」。10万円以上仕送りしている世帯も珍しくなく、親へ仕送りをしている人の年齢層でもっとも多いのは50代。40代と20代は同程度でした。

高齢となった親を自身の扶養にいれることで、扶養控除を受けられる可能性も。ただ親が扶養親族にあたるかは、「親と同一生計にあること」「親の合計所得金額が48万円以下であること」の2つの条件をクリアしている必要があります。

年金28万円だという男性の両親は、扶養控除のボーダーラインを超えているため、節税のメリットは受けられず……損得だけでいうと、男性が損をすることは確定です。

――詐欺とかにあって、お金とられたんじゃないのかな

男性の疑念は深まるばかりです。

高齢夫婦の1ヵ月の平均支出は23万円だが…

警視庁『特令和4年 特殊詐欺認知・検挙状況等(確定値)』によると、65歳以上の高齢者における特殊詐欺被害の認知件数は1万5,114件で、前年から18.8%増。手口別にみると、最も多いのが「オレオレ詐欺」で27.8%。「還付金詐欺」が25.7%、「キャッシュカード詐欺」が20.1%と続きます。

被害者は、まさか自分が詐欺に引っかかるなんて……と思っているもの。確かに男性の両親も卑屈な犯罪に巻き込まれて苦境に陥っている可能性もゼロではありません。ただ男性は「どうやら、犯罪に巻き込まれた、ということはないらしい」と綴っています。

では実際に高齢者の家計を確認してみましょう。総務省『家計調査 家計収支編(2022年平均』によると、65歳以上の無職の高齢者夫婦のみの世帯における1ヵ月の平均支出は23万6,696円。年金額面で28万円、手取りで23万円……確かに統計上は年金だけではギリギリの生活です。

【高齢夫婦のみ世帯の1ヵ月の平均支出】

消費支出:236,696円

(内訳)

食料:67,776円

住居:15,578円

光熱・水道:22,611円

家具・家事用品:10,371円

被服及び履物:5,003円

保健医療:15,681円

交通・通信:28,878円

教育:3円

教養娯楽:21,365

その他の消費支出:49,430円

ただ男性の両親の場合、住居費はローン完済のため、住居費はゼロ円。ほかが平均的な支出だとしたら、十分とはいえないまでも余裕はあるはず。一方で受給額が一定水準の年金生活者にとって、インフレの影響は大きく、生活苦に陥る高齢者世帯は相当な数にのぼります。

前出の『国民生活基礎調査』でも、「生活が苦しい」と回答した高齢者世帯は、48.3%と約半数。さらに「大変苦しい」と回答したのは18.1%と、5世帯に1世帯の割合です。

実際に仕送りをするかは、きちんと家計をチェックしてからと男性。「きちんと確認して、本当に生活が苦しいなら、仕送りをするしかない」と綴っていますが、もし、男性と同じように親から「仕送りして!」と頼まれたらどうしますか。物価高、それでもなかなか上がらない給与、子どもの教育費に住宅ローンの支払い……現役世代にとても余裕はありません。「うちはうちで、生活が苦しんだよ!」と思わず逆ギレしてしまいそうです。

[参考資料]

厚生労働省令和4年 国民生活基礎調査』

警視庁『特令和4年 特殊詐欺認知・検挙状況等(確定値)』

総務省『家計調査 家計収支編(2022年平均』

(※写真はイメージです/PIXTA)