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ユーロ7後退 メーカーからは歓迎の声

EU(欧州連合)は12月18日、次期排ガス規制「ユーロ7」の最終案に暫定合意した。当初の提案の大半が退けられ、規制緩和に至ったことで自動車メーカーは胸を撫で下ろしていることだろう。

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暫定合意されたユーロ7では、欧州で販売される新車(乗用車および小型商用車)の排出基準をユーロ6から引き継いでいるが、重要な点は現実世界における厳しい排ガス試験が不要となったことだ。この試験が導入された場合、車両価格が数百ユーロ上昇する可能性があった。

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ユーロ7の原案は自動車のコスト増加につながるとして、メーカー側が難色を示していた。

また、新基準の実施を2025年7月1日から延期し、乗用車と小型商用車については早くても2026年となる。

ユーロ6からの重要な変更点として、EV(電気自動車)を含め、ブレーキ使用時に排出される粒子(いわゆるブレーキダスト)とタイヤの摩耗に関する規制が設けられる。また、EVやハイブリッド車の駆動用バッテリーの耐久性を監視するシステム搭載が義務付けられるほか、内燃エンジン車には排ガス監視用の車載モニター装着が義務付けられる。

欧州自動車工業会は声明の中で、「欧州の自動車業界は計画の確実性を歓迎する」と述べている。

今回の暫定合意は、正式承認に先立ち、欧州委員会、欧州連合理事会、欧州議会による非公開の三者対話で行われた。しかし、CLEPA(欧州自動車部品工業会)は声明で、「さらなる変更は期待できない」と指摘する。

CLEPAは、ユーロ7の後退に不満を表明している。「もっと野心的であれば、技術的にも経済的にも実現可能だっただろう。今回の合意は、欧州委員会の提案の大半を削除するものだ」

一般的に、排ガス規制が強化されれば、部品サプライヤーにとってはビジネスチャンスにつながる。

ベルギー環境保護団体トランスポート&エンバイロメントは声明の中で、この合意は「恥知らずな降伏」だと批判した。同団体の自動車担当ディレクターであるルシアン・マチュー氏は「自動車会社が実質的にクリーンでないクルマをグリーンだと主張できるようになる」と述べた。

しかし、自動車メーカーは、当初の規制案では何百万ユーロものコストがかかり、電動化ではなく内燃エンジンに資金を向けざるを得なかったと主張している。特に、コストを大幅に上げずに電動化するのが難しい小型の内燃エンジン車に不釣り合いな影響を与えるという。

フォルクスワーゲンのブランドCEOであるトーマス・シェーファー氏は今年初め、本誌の取材で「文字通り、現状のような小型(エンジン)車を継続することは不可能になる」と語り、ユーロ7は「枯れゆく技術を法外に高価なものにする」と批判していた。

排ガス試験要件(温度など)の変更については、フォルクスワーゲンBMWなどからコスト増につながるという声が上がっていた。変更の目的は、メーカーによる排ガス不正問題「ディーゼルゲート事件」を受け、実験室だけでなく現実世界での監視を強化することだった。

規制緩和により、適合性の高い車両を対象とするサブカテゴリー「ユーロ7+」も廃止される。

一方で、一定距離のゼロ・エミッション走行が可能なPHEVプラグインハイブリッド車)向けに、ユーロ7gというサブカテゴリーは維持される。ジオフェンシング技術により、環境規制のある都市部でバッテリー駆動に自動的に切り替えるというものだ。


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