期待していた「トヨタ・ダイハツ・スズキ」の商用EVにも影響か! 消費者に他メーカーまで揺るがす「ダイハツの不正」の大きすぎる波

この記事をまとめると

■第三者委員会による調査でダイハツに新たに174の不正行為があったことが判明した

■追加不正により、OEMを含むダイハツのすべての生産車の出荷が停止となった

日野自動車の不正発覚時に倣い、ダイハツのCJPTからの除名は必至か?

新たに64車種で174の不正行為が発覚したダイハツ

 ダイハツ工業による安全性能を確認する試験における不正行為問題が拡大している。

 あらためて整理すると、ダイハツによる衝突試験関係での不正が最初に発覚したのは2023年4月のこと。この段階では、海外向けモデルにおけるドアトリム不正(試験車両のドアトリムに量産にはない加工を施した)が判明したのみで、日本市場への影響はなかった。

 しかし翌5月には、ダイハツ・ロッキートヨタ・ライズハイブリッド車におけるポール側面衝突試験における不正が明らかとなる。内容としては、片側のデータを反転させることで左右とも試験をしたように偽装するというもの。

 電柱などに側面からぶつかったときのポール側面衝突試験は、2018年6月15日以降の新型車に課されるという最新の衝突試験であり、日本車の安全性を高めるため、ある種「鳴り物入り」で採用された項目だけに、そこでの不正というのはかなり悪質な印象を与えた。

 結果として、該当するロッキー/ライズのハイブリッド車は販売休止状態となり、これらのモデルを買おうとしていたユーザーは大迷惑をこうむった。さらに、オーダー済みのユーザーは、結果的にオーダーキャンセルとなるなど大問題となっている。

174の追加不正発覚で全モデルの出荷を停止したダイハツの大きすぎる代償

 しかし、こうした不正はほんの序章だった。

 2023年12月20日ダイハツが発表した『第三者委員会による調査結果および今後の対応について』に書かれた内容は、とてつもなくショッキングなものだった。その冒頭部分を引用してみよう。

「調査の結果、4月のドアトリム不正・5月のポール側面衝突試験不正に加えて、新たに25の試験項目において、174個の不正行為があったことが判明しました。不正行為が確認された車種は、すでに生産を終了したものも含め、64車種・3エンジン(生産・開発中および生産終了車種の合計)となっております。この中には、ダイハツブランドの車種に加え、トヨタ自動車株式会社マツダ株式会社株式会社SUBARUOEM供給をしている車種も含まれております」

 64車種となれば、もはや全ラインアップといえる。この調査結果を受け、ダイハツは『現在国内外で生産中のすべてのダイハツ開発車種の出荷を一旦停止すること』を発表した。

 174個の不正のなかでも、とくに悪質だと感じたものを紹介しょう。

 ひとつは「エアバッグのタイマー着火」だ。本来、エアバッグは衝撃センサーからの信号を元に作動させるべきだが、側面衝突試験においてタイマーにより作動させるという量産車とは異なる方法によって展開させて試験を実施。そのデータをもとに認証申請を行ったという。

 この不正が最初に行われたのは2014年9月、その後も数回にわたり同様の不正行為により衝突試験が実施されたという。対象モデルは、ダイハツ・ムーヴスバル・ステラダイハツ・キャスト、トヨタ・ピクシス・ジョイとなっている。

174の追加不正発覚で全モデルの出荷を停止したダイハツの大きすぎる代償

 上記のモデルは、2023年6月の段階で販売終了となっているので、新車ラインアップには関係ないようにも見えるが、販売終了は何か勘繰りたくなるタイミングとも感じる。

 現行ラインアップでは、コペン(2014年XPLAY、2015年Cero)における歩行者頭部および脚部保護についての不正が判明している。

174の追加不正発覚で全モデルの出荷を停止したダイハツの大きすぎる代償

 内容としては、衝突速度が基準値を超えても試験をクリアしたという、ある種のオーバースペックを示す内容ではあるが、認証申請において試験速度の記載を基準値になるよう書き換えたのは、認証制度の意味をなくしてしまう悪質な不正といえる。

ダイハツ1社のみでは収まらない全車出荷停止の影響

 そして、こうした不正は最近になって行われたものばかりではない。

 1998年11月にハイゼットトラックのフルラップ前面衝突試験において、立会試験にもかかわらず一部データをリハーサル試験時と差し替えて提出するという不正を行ったという。事前に用意したデータを、まるで目前の試験データのように出力するという不正内容は、まったくもって立会試験の意味がわかっていないとしかいえない。

174の追加不正発覚で全モデルの出荷を停止したダイハツの大きすぎる代償

 このように174の不正のうち、たった3つを紹介しただけでも、企業風土を含めた根の深い問題であることは感じられる。他社OEMを含めて、すべての出荷を一時停止するという判断もやむなし、である。

 では、これからダイハツはどうなっていくのだろうか。

 ご存じのように、ダイハツの生産モデルは日本市場においてはかなりのボリュームを占めている。軽自動車についていえば、そのシェアは32.5%(2023年1~11月の数値・全軽自協調べ)で、軽自動車だけでも52万台も売っているのだ。

 はたして販売停止がどれだけ続くのかはわからないが、OEMを含めた軽自動車の月販が5.5万台を超える(2023年11月実績)ダイハツからの供給が途絶えてしまうと、ドミノ倒し的にさまざまな事象が起きることが考えられる。

 ダイハツ車を扱う新車販売店は売る商品がなくなってしまうことで死活問題となるケースもあるだろう。トヨタスバルディーラーにしても軽自動車が扱えないのだから、無視できない問題だ。

174の追加不正発覚で全モデルの出荷を停止したダイハツの大きすぎる代償

 ダイハツ車が欲しいとこだわっていないユーザーにしても、一社からの供給が途絶えることは大問題だ。軽自動車を生産しているのはスズキホンダ、三菱の3社だが、どこもダイハツの生産停止をカバーできるほど急に増産できるはずもなく、軽自動車を中心に新車不足の売り手市場となる可能性がある。

 新車供給が安定してきたことで価格が落ち着いていた中古車相場も上昇する可能性がある。ユーザーからすると納期が延び、購入予算を増やさないといけない事態になるかもしれないのだ。

 自動車業界でいえば、商用車に関するパートナーシップであるCJPTへの影響も必至といえる。2022年8月、エンジン認証における不正が発覚した日野自動車はCJPTから除名されている(現在は復帰)が、同じく認証における不正を行ったダイハツについても、同様の処分となる可能性が高いといえるだろう。

 CJPTのプロジェクトとして、トヨタダイハツスズキの3社で進めていた軽商用EVについても、ダイハツ・ハイゼットをベースとしていたことを考えると、プロジェクトは一旦停止となることが予想される。

174の追加不正発覚で全モデルの出荷を停止したダイハツの大きすぎる代償

 ダイハツは以下のように、今回の不正を認識している。

『「認証」とは、お客様に安心してクルマにお乗りいただくための様々な基準を満たしているかを、あらかじめ国に審査・確認いただくものであり、認証の適切な取得は、自動車メーカーとして事業を行う前提であると考えております。今回、その認証を軽視していると指摘されてもやむを得ない行為が行われていたこと、また、そのような行為が行われる環境を生み出してしまったことの責任は経営陣にあります。自動車メーカーとしての根幹を揺るがす事態であると、大変重く受け止めております。』

 はたして、日本でもっとも歴史のある自動車メーカーである「ダイハツ」ブランドは、信頼を回復することはできるのだろうか。その再生はいばらの道ではあろうが、日本市場にとって欠かすことのできないブランドがどうなっていくのか、目が離せない。

174の追加不正発覚で全モデルの出荷を停止したダイハツの大きすぎる代償

期待していた「トヨタ・ダイハツ・スズキ」の商用EVにも影響か! 消費者に他メーカーまで揺るがす「ダイハツの不正」の大きすぎる波