大学日本一を決する戦いも、いよいよ佳境に入る。『第60回全国大学ラグビーフットボール選手権大会』が12月23日(土)より準々決勝に突入するのだ。8強戦には大会3連覇に照準を合わす本命が登場。『関東大学ラグビー対抗戦Aグループ』3連覇を達成した帝京大が『関西大学Aリーグ』3位・関西学院大を迎え撃つのだ。

帝京大は『関東大学対抗戦A』を全勝でクリアした。9月9日・開幕戦で前半9トライ、後半10トライを量産して成蹊大を117-5で圧倒すると、青山学院大戦80-0、立教大戦83-0、筑波大戦73-0と3試合連続無失点で大勝。

今季も盤石の強さを見せ付けた帝京大だが、11月5日早稲田大戦では一時ヒヤリとさせられた。昨季『大学選手権』決勝で73-20と粉砕した相手に帝京は14-7で折り返し、後半早々WTB高本とむのトライで一気に突き放すと思われたが、後半13・28分と早稲田が連続トライをマーク。コンバージョンゴールを決めて21-24の3点差に詰められた。しかし、帝京は踏ん張った。勝負どころの残り10分でFL奥井章仁のトライで突き放し、高本がとどめのトライを決めて、36-21でノーサイド

試合後、帝京大・相馬朋和監督が「早稲田大さんプレッシャーでこういうゲームをすることができた。厳しい中でも最後勝つことできて大変うれしく思うし、主将をはじめ学生たちがコミュニケーションを取りながら80分間戦い抜いたことにすごく満足している」と手応えを口にすれば、HO江良楓主将も「本当に厳しい試合で、しっかり勝ち切れたのは大きなことだと思う。課題や修正点がすごく見つかった試合で、『対抗戦』の終盤でこういうゲームができたので、この試合をしっかり持ち帰って来週の試合に向けてもう一度加速していきたい」と勝って兜の緒を締めた。

伊藤大祐(早稲田大学) (C)スエイシナオヨシ

一方、早稲田大・大田尾竜彦監督とSO/CTB/FB伊藤大祐主将は勝機を見出したがゆえの悔しさを明かした。
太田尾監督「収穫のあるゲームだったと思うが、やっぱりこの壁を越えないといけないなというところまでいったが、その壁が……勝ちたかった」

伊藤主将「やっぱり勝つか負けるかで、負けて悔しい気持ちがすごく強い。1週間いい準備をしたが、僕自身もそうだが、チームとしても100%できたわけではない。そこを自問自答しながら、仲間にも厳しい指摘をしながらもっともっと高められると思うので、もう1回『選手権』でやれるようがんばりたい」

帝京早稲田戦の教訓を早速2週間後の明治戦で生かした。『大学選手権』でも最大のライバルと目される明治を相手に前後半各3トライを叩き込んで43-11。真っ向勝負で明治をねじ伏せた。江良主将と2トライをマークし、プレーヤーオブザマッチ(POM)に選出されたFL奥井章仁は自信を深めた。

江良「早稲田戦でいい経験をさせてもらい、自分たちが変わるキッカケをもらった。細かいところにこだわってきた」

奥井「本当にタフな相手。80分どっちに転ぶかがわからない中、僕たちがハードワークした結果が今日の点数になったと思う」

12月2日・慶應義塾大との最終戦では相手の前に出るタックルに手を焼いたものの54-10、帝京大は3年連続12度目の『対抗戦』優勝を全勝で飾った。しかし、相馬監督に喜びの色はない。 「いろんな準備してきたが、慶応さんの気持ちのこもったタックルで受けに回る場面があった。江良主将を中心にゲームの中で修正し勝つことができた。『選手権』に向かってひとつひとつ積み上げながら、日本一に向かってがんばりたい」

伊藤耕太郎(明治大学) (C)スエイシナオヨシ

帝京がV3を決めた翌日には創部100周年の明治が早稲田に58-38で勝利。61分までに41-3と一方的な展開だったが、80分には8点差まで詰められた。しかし、そこから明治は2トライを叩き込んで試合をクローズ。試合後、『対抗戦A』2位となった明治は勝って反省し、3位に甘んじた早稲田は唇を噛んだ。

明治・神鳥裕之監督「国立競技場という素晴らしい場所で早稲田大学さんという素晴らしい相手とこのような早明戦ができたことは、非常にありがたい。これぞ早明戦というようなゲームになった。本当に諦めない早稲田さんの素晴らしいアタックと粘り強さで、序盤とはまた違う景色が後半にあった。ゲーム前から必ず苦しい時間帯もあるということを伝えながら準備してきたので、最後しっかりトライを取り返して勝ち切れたということは選手たちの成長につながったと思う」

LO山本嶺二郎ゲームキャプテン「このような素晴らしい舞台で早稲田大学という素晴らしい相手と試合できることに感謝したい。試合内容は前半明治が優位に立ったが、後半早稲田さんのプライドがすごく見えた内容だったと思う。ただ最後流れを断ち切ってトライを取り切って勝ち切ったのは今後の成長につながると思う。この後の『選手権』に向けて、もう一度修正して優勝できるように臨みたい」

早稲田・太田尾監督「今日の試合はやってはいけないと言うか、一番恐れていたシナリオになってしまった。この試合を経て、自分たちの強み弱みがハッキリしたので、修正して『選手権』に臨むにあたり、いい試練といい経験になったと思う」

伊藤主将「勝ちたかった試合で、やっぱり前半でいかれた部分がすべて。とくに前半の22mに入ってからの明治の勢い、コンタクトの状況。自分たちでやりたかった接点でのバトルが、この試合すべていかれた」

『関東大学対抗戦A』勢だけではない。流通経済大との激戦の末『関東大学リーグ戦1部』6連覇を達成した東海大も、天理大から劇的逆転勝利を挙げて『ムロオ関西大学Aリーグ』3連覇を達成した京都産業大も『大学選手権』へ照準を合わす。

東海大・木村季由監督「『リーグ戦』の最終戦ということで今までシーズン通して積み重ねてきたことを出すというシンプルな心構えで臨んで試合だった。とにかくアグレッシブにボールを動かしていこうと。若干コンディションの問題もあって、思うようにいかない時間もあったが、それ以上に流通経済大学さんの勢いと言うか、果敢な攻めにちょっと受けに回った時間がすごく多かったと思う。勝ち切ったことだけはひとつの成果だと思うので、今日出た課題を『選手権』に向けて磨き上げていきたい」

WTB/FB谷口宜顕主将「春から日本一という目標を目指して1年間準備してきたが、『対抗戦』上位のチームだと競ったゲームや観客数が多い試合など、僕らがなかなか経験できないようなことを先に経験しているチームとこれから『選手権』で戦うことになる。そういう慣れ、経験値として普段の練習で試合と同じような緊張感を持ってやる必要があるので、今後そういったところを意識していきたい」

京産大・廣瀬佳司監督「我々は挑戦者という気持ちでこの試合に臨んだ。途中前半も苦しい時間帯もあったが、最後まで必死に真っ向勝負してくれた。『大学選手権』では関西チャンピオンとしてしっかり戦っていきたい」

FL三木皓正主将「試合前から厳しい試合になることはわかっていた。天理大学さんの厳しいディフェンスに後手を踏んでしまったが、最後グラウンドに出ている15人には『自分たちを信じ続ける』ということを言い続け、勝利することができた。練習でやってきたことは裏切らないとわかった。関西優勝という目標を達成できてすごくうれしい。ただ、全国には強い相手がいるので、『関西リーグ』覇者として恥じない試合をしたい」

12月17日に行われた『大学選手権』3回戦・流通経済大27-33筑波大、関西学院大48-14福岡工業大、早稲田大54-12法政大、天理大41-12慶應義塾大を経て、いよいよシード校が登場。

江良楓(帝京大学) (C)スエイシナオヨシ

帝京・江良主将は『大学選手権』へ向けてさらなる成長を約束した。
「試合が終わって円陣の中で、『まず対抗戦優勝を誇りに思う』と。全員に問い掛けたが、『これで満足している奴はおるか?』と。いないとは思うが、僕たちが成長すべきところはまだまだあるとわかっている。日本一へ気を引き締めて、がんばっていこうと話した。
僕は全員が同じ絵を見ることが大事だと思っている。どのようなプレーをするにしても同じ絵を見ていれば誰かがミスをしても誰かがカバーできる。残り少ない日数、全員が同じ絵を見られるようにやっていきたい」

果たして、帝京が3年連続日本一へ突き進むのか? 明治や京産大早稲田らが阻むのか? 『第60回全国大学選手権大会』準々決勝は12月23日(土)・秩父宮ラグビー場にて筑波大×明治大、帝京大×関西学院大、24日(日)・ヨドコウ桜スタジアムにて天理大×東海大、京都産業大×早稲田大がキックオフ。2024年1月2日(火)・国立競技場にて準決勝、1月13日(土)・国立にて決勝を開催。準々決勝、準決勝のチケットは発売中、決勝のチケットは12月28日(木) 一般発売。

取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)

『第60回全国大学ラグビーフットボール選手権大会』のチケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2347448

青木恵斗(帝京大学)