あるときから原因不明の心身の不調にさいなまれるようになった、イラストレーター・コミックエッセイストのハラユキさん。「なんとかしないとヤバイ!!」と感じ、さまざまな対処法を試してみることに。ところが、新鮮な体験を楽しめたはずなのに、気付いたら涙が流れていた。「どっかおかしい」と確信したハラユキさんは、意を決して1本の電話をかける――。

【漫画】本編を読む

「誰でもみんなうつになる 私のプチうつ脱出ガイド」は、2022年に「軽度から中度のうつ」と診断されたハラユキさんが、自身のうつ病の体験や闘病の様子を振り返ったコミックルポ。専門医による監修やコラムを交えながらも、うつ病を縁遠いものと感じていたハラユキさんが自身の病を受け止め、その渦中での心の動きを親しみやすく描いたコミックエッセイだ。

当初、うつ病の可能性を疑わなかったハラユキさん。やる気を取り戻すためにお祓い行脚を行うものの、「気持ちが下に引っ張られる」「悲しくないのに涙が出る」と、自覚以上の症状に動揺が広がっていく。作中では、そんなハラユキさんが精神科の受診を決意するまでの期間も克明につづられている本書。ウォーカープラスではそうした模索の時期の裏側や、受診の決め手についてインタビューした。

■「穴に落ちた上にフタをされる」普段と違う落ち込みの自覚まで

――「やる気が出ない」中で2度のお祓いには行けているのは、確かに「うつ」と結びつきにくいような気もします。気分転換を試みているときはどんな心境だったのでしょうか?

【ハラユキ】気分転換というより、なんとかしないと生活できない、仕事ができなくてまずい、という必死な気持ちだったんです。知人にお祓いを勧められたのも大きかったですね。

――ちなみに、うつ以外の普段の落ち込みや不調のときは、リフレッシュの選択肢は多いですか?

【ハラユキ】もともとはリフレッシュの選択肢は多く持っているほうだと思います。銭湯や温泉やサウナに行く、おいしいものを食べたり飲んだりする、旅行に行く、などです。銭湯の隣のシェアスペースの会員にもなっています。ただ、うつになった頃は育児などでバタバタしてて、頻繁には銭湯に行けてなかったんです。コロナの影響で、旅行や飲み会なども減っていました。うつになって、ああいうリフレッシュは自分にとって大事だったんだ、とあらためてわかりましたね。

――お祓い体験を楽しめているのに涙が出る、というのには驚きました。「普段の落ち込みと違う」と強く感じたのはどこがポイントだったのでしょうか?

【ハラユキ】いつもの落ち込みが「穴に落ちた」ような感じなら、そのときの落ち込みは、「穴に落ちたうえにその穴にフタがされている」ような感じでした。穴から出れる気がしない、気分があがりそうにない、そもそもなんでここまで落ち込んでいるのか意味がわからない、という感じでした。あと、気分の落ち込みだけではなく、好奇心まで枯れていたのは自分にとっては大きかったです。

――この後、ハラユキさんは精神科への受診を決意します。もともと精神科の知人がいたということも後押しになったそうですが、受診の決め手となったのはなんだったのでしょうか?

【ハラユキ】不調を自覚してから1カ月後には受診しました。精神科の知人に精神科の基本をいろいろ教わっていて、「いつか精神的な問題が起きたら精神科に行こう」と決めていたのは大きかったです。行ったことのない診療科なので多少は勇気がいりましたが、それほどの大きな心のハードルはなかったです。病気じゃなくても、どんなことでも、まずは自分が動かないと状況は変わらない、と思っている性格なのも大きかったかもしれません。

取材協力:ハラユキ

リフレッシュを楽しめたはず、なのに涙が止まらない…。「うつ」と分かるまでの体験を漫画に