Web3事業を展開するdouble jump.tokyoが画期的な取り組みとして実施した『キャプテン翼』ボールはともだちプロジェクト。本プロジェクトは「世界中のこどもたちにサッカーボールを届ける」という最先端のデジタル技術を活用した企画でありながら、アナログを融合させる構想が世界中から注目を集めた。

【画像】ボールを受け取ったイラク北部の国内避難民キャンプの子ども達

今回、越境物流プラットフォーム「セカイロジ」(株式会社TokyoOtakuMode)による協力のもと、本プロジェクトを率いた平林 悠基 さんに話を伺った。

ブロックチェーン技術を活用した新しいエンタメの形を創っていきたい

ーーまずはのdouble jump.tokyoの概要と目標について教えてください。

double jump.tokyoは2018年からブロックチェーンゲームやNFTプロジェクトを始めており、 (WEB3系の)業界がまだできるような前から先駆けて、難しい課題を乗り越え自社で積み上げながら世界にリリースしていました。

日本のゲームは非常にハイクオリティで世界から認知されていますが、そうしたメーカーと我々が積み上げてきたノウハウを融合させて、みなさんにより楽しんでもらえるような 新しいゲームの形を生み出していきたいと思っています。

平林 悠基 さん

ーー「ブロックチェーン」や「Web3」というワード自体はIT業界を中心に浸透しつつありますが、一般的な認知や利用はまだまだこれからという印象があります。現状はどのような認識を持っていますか。

アンケートをとってみると、言葉は知っていたり、興味がある方は増えてきている現状なんですけども、 やっぱりいざ利用するとなると、「どうやったらいいかわからない」とか「なんか、面倒くさそうとか」「お金がかかる」とか、その辺がハードルになって、なかなか利用にまでは至っていない現状があります。

例えばブロックチェーンゲームを始めるためのウォレットだったり、周辺環境も整えて使いやすくしていくのも弊社の事業の一つですが、何よりユーザーが面白ければ難しさも乗り越えられていけるので、心からみなさんが楽しんでもらえるゲームやエンタメを作れるかが一番大事だと考えております。

ーー ブロックチェーン技術の裾野を広げる手法の1つとして、ゲームをはじめとしたエンタメ性のある事業を展開している例が多くあります。

そうですね。ゲームもそうですし、日本が世界に誇る漫画・アニメも、 新しい技術を掛け合わせた時に、新しいエンターテインメントの形として皆さんにより楽しんでもらえたり、NFTに関わるような接点が作れると思ってますので、そういったIPとコラボした事業展開も大切にしています。

例えば、通常のエンタメはそれを提供する法人やサービス自体がクローズしてしまうと、(ユーザーからすれば)一方的に全部止まってしまうところがあったりしますが、ブロックチェーンを活用することで自分たちの手に資産が残ったり、オーナー性が生まれるっていうようなところがすごく面白いなと思ってます。そんな新しい未来の形を皆さんと一緒にいろんなチャレンジをしてるという状況です。

翼くんの「サッカー世界平和宣言」をNFTプロジェクトで体現

ーー今回の『キャプテン翼』のボールはともだちプロジェクトもこうしたチャレンジの一環として取り組まれていったのでしょうか。また、企画の経緯について教えてください。

キャプテン翼』のような、世界でも大いに親しまれている日本が誇るIPと一緒に何かコラボレーションで面白いものを生み出していくことで、新しい技術や楽しみ方が浸透するだろうなという思いがありました。ただNFT暗号資産が若干マイナスなイメージもあるなかで、そうではない新しいチャレンジができないかということを高橋陽一先生や株式会社TSUBASAのチームで話し合いました。

企画の方向性を決めていく中で、作中で翼くんがワールドユースの大会で優勝したときのスピーチ世界平和を訴えるシーンがあるのですが、そこにインスピレーションを受けて何か世界と社会に貢献できるプロジェクトにしていきたいねという話が出て、「ボールはともだちプロジェクト」という名前でNFT販売を通じて世界の子どもたちへボールを配る企画に繋がっていきました。

キャプテン翼』ワールドユース編 18 巻より

ーー「NFTプロジェクト」と一言聞くと、どこか投資目的といったイメージがありました。

従来のNFTプロジェクトですと、 例えば1万体限定で販売することで価値を高め、ある種限られた人だけで楽しんで資産価値が上がったり下がったりする形が多いです。しかし日本のIPと世界のファンとの関係を考えた時に、 世界中の多くの人が楽しめるというのが日本のアニメ・漫画の良いところだろうという話が出て、あえて数を制限せずに作品が好きな世界中のファンと可能な限り関わって、そのコミュニティの中で面白いことやっていくほうが『キャプテン翼』とのコラボとして適切なチャレンジであると考えました。

ーー デジタルで完結せず、世界中にボールを届けるというアナログとの融合が特にユニークだな、と思います。具体的にはどういう仕組みで配布したのでしょうか?

まず、『キャプテン翼』の思い出のシーンが詰まった、ひとつひとつ組み合わせが違うデジタルカードをNFTで購入することで、高橋陽一先生の描き下ろしサッカーボールが世界の子どもたちに届きます。これだけでも面白いんですけども、SBT化(=他のアカウントに移転・譲渡のできないNFT)して自分だけの永久会員カードのようなものに変えることで、購入者自身にもボールが届くという仕組みを取り入れています。

SBT化により譲渡や売却はできなくなりますが、自分がプロジェクトに関わった証として一生残ります。もちろんSBT化せず流通させることもできるので、そのあたりもユーザーに選択いただけるようになっています。

SBT化のイメージ。購入したNFTを流通不可の自分だけのSBTに変えることで自分にもボールが届く仕組み。ブロックチェーン技術により永久証明を担保する

ーープロジェクトの反応はいかがでしたか?

海外のメディアにも、ポジティブに100媒体以上取り上げていただきましたし、実際のNFT購入者も北米、アフリカ、中東からヨーロッパまで20カ国を超えるような大きな反響でした。このプロジェクトに共感いただいた香川真司選手にアンバサダーに就任していただいたのも、皆さんに多く取り上げていただいたポイントかなと思います。

ーー イラクに渡航し、贈呈式も開いたと聞きました。

はい。今回世界中の子どもたちにボールを届けるにあたり、国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパンさんの協力を得ながら、配布先を協議しました。

イラクでは国内避難民キャンプだったのですが、何千人という人がテントの中で生活していて、その中に仮設の小学校があるので、そこで遊んでもらったり授業で使ってもらえたらということで100個のサッカーボールを届けました。イラクでは『キャプテン翼』は「キャプテンマージド」と呼ばれていて、知っている子も多くて大変喜んでいただけたのですが、改めて日本の漫画・アニメの力を感じられました。

このような形で、アジアではフィリピンカンボジアベトナムアフリカは、ケニアウガンダ。中南米は、エクアドルエルサルバドル。 中東は、イラクシリアヨルダンと、合計10か国の子どもたちに届けることができました。

ボールを受け取ったイラク北部の国内避難民キャンプの子ども達

ーー これまでになかったNFTの新たな可能性を感じます。

技術は使い方次第で、良いものにも悪いものにもなります。NFTの中には一部詐欺のプロジェクトもあったりするので、 そういうネガティブな面で取り上げられがちではあるんですが、ちゃんと使い方によっては、社会性を持ったポジティブな活用も実現できると思ってるので、今回それが先駆けて形にできたっていうようなところは、業界にとっても大きかったのかなと思います。

ーー最後に、平林さんが今後チャレンジしていきたいことを教えてください。

やはりブロックチェーンNFTを活用したエンターテインメントは、まだまだこれからだと思っており、面白いヒットするようなコンテンツを作ったり、その周辺サービスを整えてくっていうことはもちろんこれからもやっていくところなんですが、今回の『キャプテン翼』ボールはともだちプロジェクトで世界中のユーザーや子どもたちを巻き込んで社会性のあるプロジェクトを実現できたので、そこでのノウハウを活かしたプロジェクトを今後も創っていきたいと思いますし、個人的にもチャレンジしていきたいなと思ってます。

物流委託サービス『セカイロジ』(株式会社Tokyo Otaku Mode)
初期費用・固定費用0円で小ロットから委託可能な物流サービス。
倉庫内での在庫管理から、国内/海外宛問わず世界中への配送をサポート。
https://sekailogi.com/

世界で愛される『キャプテン翼』を通じて「世界中にボールを届ける」平和を目指す”NFT×エンタメ”の新たな形〈インタビュー〉