12月に入り、北米での映画賞の受賞発表やノミネーション発表が行われている。第81回ゴールデン・グローブ賞では、『バービー』(23)が主演女優賞をはじめミュージカル/コメディ部門など9ノミネートでトップに立ち、ゴールデン・グローブ賞の翌週に授賞式を控える第29回放送映画批評家協会賞(Critics Choice Awards)でも18ノミネートと圧倒的強さを見せた。

【写真を見る】日本からは『君たちはどう生きるのか』『すずめの戸締まり』の2作品がノミネート

来年1月7日に授賞式を行う第81回ゴールデン・グローブ賞は、世界76か国のエンタテインメントジャーナリスト300名が選ぶ賞。昨年はドラマ部門でスティーヴン・スピルバーグ監督の『フェイブルマンズ』(23)、ミュージカル/コメディ部門作品賞で『イニシェリン島の精霊』(22)、そして同作のマーティンマクドナー監督が脚本賞、コリン・ファレルが主演男優賞に輝き、最多3部門を受賞。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(22)が7部門を受賞した第95回アカデミー賞とは異なる結果となっていた。

今年のノミネーションでは、『バービー』のほか、『オッペンハイマー』(2024年公開)が8ノミネート、続く『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(23)と『哀れなるものたち』(1月26日公開)はともに7ノミネートとなった。また、今年からノミネーションを6枠に変更したことで、例年よりもサプライズが多く見られた。そのなかでも、長編アニメーション部門に宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』(公開中)と新海誠監督の『すずめの戸締まり』(22)が入り、同部門に日本映画が2本入る史上初の快挙となった。また、『君たちはどう生きるか』の音楽監督を務めた久石譲が作曲賞にも初ノミネートされている。

エマ・ストーンは映画部門(『哀れなるものたち』)とドラマ部門(『The Curse(原題)』)でともに主演女優賞にノミネート、フィンランドのアルマ・ポウスティ(『枯れ葉』)やドイツのザンドラ・ヒュラー(『Anatomy of a Fall』)など、国際的な俳優の活躍も目立った。

ドラマ部門では、今年シーズン4で有終の美を飾った「メディア王 〜華麗なる一族〜」が9部門ノミネートで最多。ドラマ部門主演男優賞に3名、主演女優賞に1名、部門共通助演男優に2名、助演女優に1名と演技部門で大量ノミネートとなった。次いで「一流シェフのファミリーレストラン」「マーダーズ・イン・ビルディング」がそれぞれ5ノミネートと続いている。

また、映画部門に興行成績賞(Cinematic and Box Office Achievement)、テレビ部門にスタンダップコメディ賞が新設された。興行成績賞は興収1億5,000万ドル以上を記録した作品が対象で、テイラー・スウィフトのコンサート映画『テイラー・スウィフト: THE ERAS TOUR』(公開中)や、トム・クルーズ主演の『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(23)など8作品がノミネートされている。

第29回放送映画批評家協会賞は、主に北米に住む600名強の批評家やジャーナリストが選ぶ賞。『バービー』の18ノミネートは過去最高で、技術賞や歌曲賞のノミネートも含む。続いて『オッペンハイマー』と『哀れなるものたち』が作品賞を含む13ノミネートを獲得している。放送映画批評家協会賞のサプライズは、外国語映画賞に『PERFECT DAYS』(公開中)と『ゴジラ-1.0』(公開中)がノミネートされていること。北米で12月1日に公開されたばかりの『ゴジラ-1.0』が早くも候補入りし、カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞した『Anatomy of a Fall』やトラン・アン・ユン監督の『ポトフ 美食家と料理人』(公開中)などと受賞を競うことになる。また、長編アニメーション賞には『君たちはどう生きるか』も選出されている。

同賞のテレビ部門では、Apple TV+の「モーニングショー 」が6部門でトップ、HBOの「メディア王 〜華麗なる一族〜」が5部門で続いた。放送映画批評家協会賞には外国語テレビシリーズ賞があり、Netflixの「グローリー」「マスクガール」、そして北米ではパラマウント・プラスで配信されているチョン・ジョンソ主演のホラーシリーズ「The Bargain(英題)」などの韓国ドラマがノミネートされている。第29回放送映画批評家協会賞は、北米時間2024年1月14日に授賞式が行われる。

■第81回ゴールデン・グローブ賞の主なノミネート作品

作品賞(ドラマ部門)

『Anatomy of a Fall』

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

『マエストロ:その音楽と愛と』

オッペンハイマー

『Past Lives』

『The Zone of Interest』

作品賞(ミュージカル/コメディ部門)

『AIR/エア』

American Fiction

『バービー』

『The Holdovers』

『May December』

『哀れなるものたち』

主演女優賞(ドラマ部門)

アネット・ベニング 『ナイアド ~その決意は海を越える~』

リリー・グラッドストーン『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

ザンドラ・ヒュラー『Anatomy of a Fall』

グレタ・リー『Past Lives』

キャリーマリガン『マエストロ:その音楽と愛と』

ケイリー・スピーニー『Priscilla』

主演男優賞(ドラマ部門)

ブラッドリー・クーパー『マエストロ:その音楽と愛と』

レオナルド・ディカプリオキラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

コールマン・ドミンゴ『ラスティン: ワシントンの「あの日」を作った男』

バリー・コーガン 『Saltburn』

キリアンマーフィーオッペンハイマー

アンドリュー・スコット『異人たち』

主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)

ファンテイジア・バリーノ『カラーパープル

ジェニファー・ローレンス『マディのおしごと 恋の手ほどき始めます』

ナタリー・ポートマン『May December』

アルマ・ポウスティ『枯れ葉』

マーゴット・ロビー『バービー』

エマ・ストーン『哀れなるものたち』

主演男優賞(ミュージカル/コメディ部門)

ニコラス・ケイジ『Dream Scenario

ティモシー・シャラメウォンカとチョコレート工場のはじまり』

マット・デイモン『AIR/エア』

ポール・ジアマッティ『The Holdovers』

ホアキン・フェニックス『ボーはおそれている』

ジェフリー・ライト『American Fiction

部門共通助演女優賞

エミリー・ブラント『オッペンハイマー

ダニエル・ブルックス『カラーパープル

ジョディ・フォスター 『ナイアド ~その決意は海を越える~』

ジュリアン・ムーア『May December』

ロザムンド・パイク 『Saltburn』

ヴァイン・ジョイ・ランドルフ『The Holdovers』

部門共通助演男優賞

ウィレム・デフォー 『哀れなるものたち』

ロバート・デ・ニーロキラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

ロバートダウニー・Jr.『オッペンハイマー

ライアン・ゴズリング『バービー』

チャールズメルトン『May December』

マーク・ラファロ『哀れなるものたち』

監督賞

ブラッドリー・クーパー『マエストロ:その音楽と愛と』

グレタ・ガーウィグ『バービー』

ヨルゴス・ランティモス『哀れなるものたち』

クリストファー・ノーランオッペンハイマー

マーティン・スコセッシ『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

セリーヌ・ソン『Past Lives』

作曲賞

ジャースキン・フェンドリックス『哀れなるものたち』

ルドウィグ・ゴランソン『オッペンハイマー

久石譲君たちはどう生きるか

ミカ・レヴィ『The Zone of Interest』

ダニエル・ペンバートンスパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース

ロビー・ロバートソン『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

アニメーション映画

君たちはどう生きるか

マイ・エレメント

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

すずめの戸締まり

『ウィッシュ』

非英語映画賞

『Anatomy of a Fall』(フランス)

『枯れ葉』(フィンランド)

『Io capitano』(イタリア)

『Past Lives』(アメリカ)

『雪山の絆』(スペイン)

『The Zone of Interest』(イギリス、アメリカ)

シネマティック&ボックスオフィス・アチーブメント賞

『バービー』

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』

ジョン・ウィック:コンセクエンス』

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』

オッペンハイマー

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR』

■第29回放送映画批評家協会賞の主なノミネート作品

作品賞

American Fiction

『バービー』

『カラーパープル

『The Holdovers』

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

『マエストロ:その音楽と愛と』

オッペンハイマー

『Past Lives(原題)』

『哀れなるものたち』

Saltburn(原題)』

主演男優賞

ブラッドリー・クーパー『マエストロ:その音楽と愛と』

レオナルド・ディカプリオキラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

コールマン・ドミンゴ『ラスティン: ワシントンの「あの日」を作った男』

ポール・ジアマッティ『The Holdovers』

キリアンマーフィーオッペンハイマー

ジェフリー・ライト『American Fiction

主演女優賞

リリー・グラッドストーン『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

ザンドラ・ヒュラー『Anatomy of a Fall』

グレタ・リー 『Past Lives』

キャリーマリガン『マエストロ:その音楽と愛と』

マーゴット・ロビー『バービー』

エマ・ストーン『哀れなるものたち』

助演男優賞

スターリング・K・ブラウンAmerican Fiction

ロバートデニーロキラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

ロバートダウニー・Jr. 『オッペンハイマー

ライアン・ゴズリング『バービー』

チャールズメルトン『May December』

マーク・ラファロ『哀れなるものたち』

助演女優賞

エミリー・ブラント 『オッペンハイマー

ダニエル・ブルックス 『カラーパープル

アメリカ・フェレーラ『バービー』

ジョディ・フォスター『ナイアド ~その決意は海を越える~』

ジュリアン・ムーア『May December』

ヴァイン・ジョイ・ランドルフ 『The Holdovers』

監督賞

ブラッドリー・クーパー『マエストロ:その音楽と愛と』

グレタ・ガーウィグ『バービー』

ヨルゴス・ランティモス『哀れなるものたち』

クリストファー・ノーランオッペンハイマー

アレクサンダー・ペイン『The Holdovers』

マーティン・スコセッシ『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

長編アニメーション賞

君たちはどう生きるか

マイ・エレメント

『ニモーナ』

ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース

『ウィッシュ』

外国語映画賞

『Anatomy of a Fall』(フランス)

ゴジラ-1.0』(日本)

『PERFECT DAYS』(日本)

『雪山の絆』(スペイン)

ポトフ 美食家と料理人』(フランス)

『The Zone of Interest』(イギリス、アメリカ)

文/平井伊都子

第81回ゴールデン・グローブ賞で8ノミネートとなった注目作『オッペンハイマー』!/[c] Universal Pictures. All Rights Reserved.