JALも導入した欧州エアバス製の旅客機「A350(XWB)」シリーズ。国内では、JAL初の新造エアバス旅客機として、大きな注目を浴び続けているモデルです。この機ができるまでには、どのようなプロセスをたどるのでしょうか。

欧州各所から製造のパーツを集め

JAL日本航空)が2019年より国内幹線へ就航させ、2024年からは長距離国際線主力機としても運航を開始する欧州エアバス製の旅客機「A350(XWB)」シリーズ。JALが初めて新造エアバス旅客機を導入した点でも話題になりました。

今回、このA350 がどうやって出来上がるのか、エアバス社協力のもと最終組立工場を取材しました。

A350シリーズの最終組立は、エアバス社本社があるフランス・トゥールーズで行われます。胴体はフランスドイツで、尾翼はスペインドイツなどで……といったように、各パーツの組み立てがヨーロッパ4か国で実施されたのち、ここトゥールーズの最終組立工場に集められるのです。

ちなみに、完成機では標準装備となっている、主翼先端のせりあがった「ウイングレット」として知られる部分も、実は主翼の一部として製造段階から組み込まれているものではなく、“後付け”です。

A350シリーズの標準型、A350-900は2013年に初飛行。その後、胴体延長タイプのA350-1000が初飛行を迎えます。ともに既存のエアバス機とは全く異なる新設計が特徴で、燃費効率がよく、静かで、かつ長い航続距離を持つことを特徴としています。

このシリーズは通路を2本持つ「ワイドボディ機」で、同社の歴史のなかでも大型のもの。A350-900は66.8m、A350-1000は約73.8mの全長をもちます。なおJALではA350-900を国内線で使用しており、A350-1000は国際線で運航される計画です。

あえて人の手も?

最終組立は昼・夜の2シフト制で実施されます。担当者によると、バラバラのパーツの状態から、組み立て完了、さらに飛行試験を含めたテストに要する時間は、機体ごとに差はあれど、おおよそ1機につき5か月ほどではないかとのことです。

また組み立て作業では、機械ではなく、スタッフによる手作業でのパーツ接着作業のみとする工程もあるそうです。そのメリットをエアバスの担当者は次のように話します。

「もっとも大きいのは、人の手を介したほうが柔軟に対応できるということでしょうか。また、人が対応すれば、ロボットを用いた際のトラブルの可能性を取り除くことができます。ロボットでトラブルが起きると、最終組立の工程すべてを止める必要があり、そのぶんロスタイムが生じてしまうのに対し、人の手で行えば、その時間はほとんど無く済みます」

実際にこの工場では、鶴丸が描かれたJALのA350新造機が組み立てられている真っ最中でした。A350-1000のJAL向け初号機は、すでに日本へ到着済み。また最終組立工場の敷地内には2号機も完成状態で止め置かれていました。組み立て中の1機も、まもなくJAL国際線の目玉機として、世界を飛び回ることでしょう。

JALのA350-1000(乗りものニュース編集部撮影)。