12月8日に開催された『The Game Awards 2023(以下、TGA2023)』では、2023年に発売されたなかでも優秀なゲームが選出され、さまざまな賞を授与された。その一方で、授与式と並行して新作ゲームの情報が多く明らかになったことも記憶に新しい。

参考:【画像】『TGA2023』で新発表のあった作品たち

 本稿では『TGA2023』で公開された新作情報のなかから4つをピックアップして解説。新トレーラーなどから、その内容を深掘りしていく。

小島秀夫監督の新作『OD』が発表 さらに不気味な新映像も公開

 『OD』は、「メタルギア」シリーズや『デス・ストランディング』などで知られる小島秀夫氏による最新作。本作の公開とともに、1分40秒のトレーラーも発表された。

 映像では1組の男女が登場する。ふたりは「腹ペコの紫恐竜」や「狂ったクジラを食べて物売り」といった不気味な言葉を口走る。その後、ドアが開かれる音とともに女性が悲鳴を上げるところでトレーラーが終わるという、かなり意味深な内容だった。

 女性は顔がこわばり、唇が震えている様子も見て取れた。ドアが開く流れは彼女の瞳の反射から確認できるのだが、徐々に光が差し込んでくる。女性は暗い部屋に監禁されていたのだろうか。いっぽう、男性は上記のセリフを言っているあいだ、視線が上を向いているのも印象的だった。一連のセリフは誰かによって書かれたメッセージで、それを読み上げているのかもしれない。

 本映像を分析した結果、登場人物の口内にA、T、A、M、Iのアルファベットが見つかったと、海外で話題となっている。それぞれをつなぎ合わせるとATAMI、熱海と読めなくもない。熱海と言えば静岡県で、その静岡という名前は静か(silent)と岡(hill)をかけた、「サイレントヒル」に対する愛称でもある。小島氏は開発中止となった『サイレントヒルズ』に関わっていたことから、『OD』は「サイレントヒル」シリーズにまつわる作品なのではないかとも言われているようだ。

 ちなみにTGA2023では、トレイラーが終わると小島氏が『ゲット・アウト』や『NOPE/ノープ』を手がけたジョーダン・ピール監督とともに登壇。『OD』では彼とコラボレーションしていること、またマイクロソフトと協力して開発していることなどを明かした。

モンスターハンター」シリーズの最新作『モンスターハンターワイルズ』が発表
モンスターハンターワイルズ』アナウンストレーラー

 「モンスターハンター」シリーズ新作となる『モンスターハンターワイルズ』が、2025年にPS5Xbox Series X|S、PC向けに発売される。同シリーズの新作は、2021年発売の『モンスターハンターライズ』(以下、ライズ)以来、約4年ぶりだ。

 TGA2023ではトレーラーも公開されている。砂漠地帯を舞台に、二足歩行の動物に乗って群れを振り切ろうと逃げる人物、それらをすべて飲み込もうとする砂嵐、砂塵のなかで次々と落ちてくる雷など、大自然の迫力を感じられる内容だった。フォトリアルなグラフィックや、対応機種がPS5Xbox Series X|S、PCであることも加味すると、本作はSwitchで当初発売された『ライズ』ではなく、PS4で登場した『モンスターハンター:ワールド』に寄せた作風になるのかもしれない。

 また、映像のなかのキャラクターが乗っていた動物は、人を乗せて走るだけでなく、さまざまな地形を飛び越えたり、滑空もできるようだった。こちらは『ライズ』で好評だったオトモガルクと似たような役割が期待できそうだ。

■『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』にローグライクの新コンテンツが追加

 2022年に発売された『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』(以下、GoWR)に、新たなダウンロードコンテンツとして“ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク:ヴァルハラ”が追加された。本DLCでは『GoWR』のエンディング後を舞台にしており、主人公のクレイトスが自身の過去に立ち向かうための話が描かれる。配信日は12月13日。無料なので、本作を持っていれば誰でも遊べる。

 映像では、クレイトスとミーミルがヴァルハラを訪れ、さまざまな敵と戦うシーンが確認できた。双剣のブレイズ・オブ・カオス、斧のリヴァイアサン、槍のドラウプニルなど、本編の武器も軒並み使える。こちらに関してはすでに配信中なので、実際に遊んでみた

 ヴァルハラに挑戦する際、クレイトスの装備はすべて初期状態になる。近接武器のリヴァイアサンブレイズ・オブ・カオス、ドラウプニルは持っている。プレイヤーはランダムで行先や出現するアイテムなどが変化するなか、ヴァルハラの最奥を目指して敵との連戦に挑む。

 武器に付ける特殊な技や、クレイトスのステータス強化の項目など、なにを選ぶかはプレイヤー次第。まったく同じ展開は起こりえないので、反復して遊ぶのが好きな人にはとことん刺さりそうなコンテンツと言える。さらに、ヴァルハラではクレイトスが過去と向き合う話も描かれており、かつて彼が手にかけた太陽神・ヘリオスが登場するシーンもあった。ストーリーはヴァルハラを繰り返し遊ぶたびに進行するという仕組みで、試行錯誤が前提のヴァルハラとはよく噛み合っているという印象だ。

 本作とは関係ないが、2024年1月にPS5向けに発売される『The Last of Us Part II Remastered』でも、挑むたびに経路や敵が変化するモード“NO RETURN”が付属。ラウンドごとにさまざまな状況を戦い抜き、その後拠点に戻って装備などを強化、再び戦闘へという流れをくり返し、最後のボスを倒せばクリアとなる。

 挑むたびに中身が変化するコンテンツは、個人的には最近よく目にしている。今回の『GoWR』やリマスター版『TLoU2』はコンシューマーゲームだが、ソーシャルゲームも例外ではない。“統合戦略”を実装している『アークナイツ』、“模擬宇宙”が遊べる『崩壊:スターレイル』などがそうだろう。

 開発期間が長くなってきていることもあるのか、最近のコンシューマー向けゲームは売ったらそれきりではなく、DLCなどを定期的に配信して、プレイヤーを長く楽しませるというケースが多い。長く楽しませるという点ではソーシャルゲームも同じで、タイトルを運営するためにはひとりでも多くのプレイヤーをつなぎとめる必要がある。そうした観点から見ると、長く遊べて飽きにくいローグライクは、今の需要と噛み合うコンテンツなのかもしれない。

■『FFVII リバース』の最新映像が公開 ヴィンセントやシドの姿も

 “テーマソング発表記念”と銘打たれ、2024年2月に発売予定の『ファイナルファンタジーVII リバース』(以下、リバース)の最新トレーラーが公開された。キャラクターやストーリー、バトルにフィールドと、本作に出てくる要素の一部を垣間見られる内容だ。

 キャラクターの視点で見ると、トレーラーでは主要キャラクターであるヴィンセント・ヴァレンタインシド・ハイウインドが確認できる。ヴィンセントが出てくるシーンは、会話の内容からクラウドたちと出会ったばかりの様子なので、背景に映っていた場所は神羅屋敷の地下だろう。シドとクラウドたちが話すシーンには、シドの後ろにタイニーブロンコと思しき飛空艇が映っていた。

 ヴィンセントが仲間になるかどうかは、少なくとも原作ではプレイヤーの任意だった。だが、同じく任意で仲間にできたユフィが今回の「リバース」の映像ではクラウドたちとともに戦っていることから察するに、本作のヴィンセントもストーリーを進めていけば味方になるのだろう。

 ストーリーの展開を考察しようとすると、今回のトレーラーもなかなか興味深い。とくに、ザックスビッグスやマリンと会話をしているところだ。

 ビッグスとの会話シーンでは、ふたりが出会うこと以上に衝撃的な場面がある。「俺が残ったのはどうしてだろうってな」とビッグスが言った瞬間に指名手配書のようなものが映るのだが、バレット、ウェッジ、ジェシーティファの4人に×が付いている。ビッグスのセリフから考えるに、×の付いた4人は全員死んでしまったのだろうが、『ファイナルファンタジーVII リメイク』のストーリーや、今回の『リバース』で公開された情報を見る限りでは、少なくともそうした描写はされてこなかった。

 いっぽう、ザックスとマリンの会話シーンでは、マリンは「お姉ちゃんはね、怖い人に殺されちゃうの」と話す。“お姉ちゃん”とはエアリスのことだろう。『リメイク』のストーリーで、エアリスはセブンスヘブンに隠れていたマリンを抱きしめるが、このとき明らかに表情が変わった彼女を見て、指を口に当てて内緒にするよう促す。

 X(旧Twitter)上で、このシーンでなにが起こったのかという質問に公式が回答するつぶやきがあった。要約すると「エアリスと接触した相手には時空を超えた幻影が流れ込むことがあり、マリンは見えてはいけないものが見えた」らしい。つまりこのとき、マリンにはエアリスが死ぬ瞬間が見えたのではないだろうか。あくまで推測だが、マリンはそれを心配して、ザックスに“お姉ちゃん”のことを話したとも思える。

 ザックスが登場する場面の描写は『リメイク』と展開が異なる場合が多く、本編とザックスが生きているパターンで世界が分岐しているなど、さまざまな可能性が考えられそうだ。ザックスが生きている理由、エアリスの未来視とも言える不思議な力など、これまで多くの謎が出てきたが、『リバース』ではそれらが明らかにされるのだろうか。

 今回は4つの情報をピックアップして解説したが、『TGA2023』ではほかにもさまざまな情報が明かされた。気になる人はぜひ『TGA2023』のアーカイブを見てほしい。

(文=夏無内好)

『TGA2023』新情報をもとに考察する“2024年以降のゲーム”