大ヒット中の映画『ゴジラ-1.0』。このシリーズの第1作『ゴジラ』が封切られた1954年自衛隊も発足しています。以来、「ゴジラ」と自衛隊は何度も戦ってきました。では、最も同シリーズに出演した自衛隊戦車は何なのでしょうか。

ゴジラと自衛隊は同い年

日本が生んだ世界的に有名な怪獣「ゴジラ」、それが生まれたのは1954(昭和29)年のこと。同じ年に自衛隊も産声をあげています。

自衛隊は同年7月1日に、それまであった保安隊を発展改組する形で誕生し、それから約4か月後の11月3日ゴジラシリーズの第1作『ゴジラ』が封切となりました。

その第1作から自衛隊(撮影当時は保安隊)はゴジラシリーズに協力し続け、以後市井で上映された約30の作品に協力しています。劇中では、「ゴジラ」を始めとしたさまざまな怪獣の圧倒的な強さをわかりやすく見せるため、「やられ役」として使われてきた自衛隊。とうぜん、戦車もその一つとして数多く破壊されてきました。

ある意味、ゴジラシリーズになくてはならないといえる陸上自衛隊の戦車ですが、70年のあいだに登場した車種は作品によってさまざまです。では、一体ゴジラシリーズのなかで「最多出演」した戦車はいったい何なのでしょうか。

1954(昭和29)年の第1作『ゴジラ』に登場した記念すべき最初の戦車は、M24軽戦車「チャーフィー」です。撮影当時はまだ保安隊でしたが、出演にあたっては脚本をしっかり閲覧し、全面協力することを決めたとのこと。M24軽戦車が出動するシーンは、栃木県宇都宮駐屯地で撮影されたそうです。

その後、M24軽戦車は第2作『ゴジラの逆襲』や第6作『怪獣大戦争』などにも登場しました。

では最多出演戦車は何かというと、それは戦後初の国産戦車となった61式戦車です。同車は1961(昭和36)年に制式化されていますが、ゴジラシリーズへの出演は1964(昭和39)年4月29日に公開された第4作『モスラ対ゴジラ』が最初です。以後、10作品に登場し、ゴジラの強さを引き立たせてきました。

制式化の前にスクリーンデビューした戦車は?

次いで多いのは74式戦車です。その出演回数は9回で、自衛隊での在籍期間の長さを活かす形で多くのゴジラ映画にて「活躍」しています。しかし、61式戦車よりも登場回数が少ないのは、ちょうど74式戦車が登場した頃にゴジラ映画が低迷し、新作が作られなくなっていたことが大きく影響したといえるでしょう。

第3位は90式戦車になります。特筆すべきはその初出で、1989年公開の第17作『ゴジラビオランテ』であること。なんと90式戦車は制式化の前に映画デビューしていました。ちなみに、2016年に公開された第29作『シン・ゴジラ』でも、まだ部隊配備もされていない16式機動戦闘車の試作車が10式戦車とともに登場しています。

なお、ゴジラシリーズをひと通り見て、筆者(凪破真名:歴史ライター・編集)が感じたのは、最初の頃は踏みつぶされたり熱線に吹き飛ばされたりするだけだった自衛隊の戦車が、回数を重ねるごとに、自衛隊の運用理念や作戦行動が垣間見えるほどに統率の取れるようになっていたというのがあります。

これは、『ゴジラビオランテ』以降、防衛庁ならびに自衛隊が、イメージアップを含めたPRのために本格的に協力するようになり、戦車部隊についても実車を含め現役隊員たちの姿がスクリーンに登場するようになったからだといえるでしょう。一説によると、実際に対ゴジラ戦の研究が行われたこともあるといいます。

最新作の第30作『ゴジラ-1.0』では、自衛隊ではなく旧日本軍四式中戦車が登場します。旧日本軍の戦車がゴジラシリーズに登場したのは、初めてではないでしょうか。今後の「ゴジラ」映画では、16式機動戦闘車を始めとした新装備が登場するのか、はたまた旧軍戦車の登場が再びあるのか、今から楽しみです。

陸上自衛隊の90式戦車。同車が登場するようになるのとほぼ同時期ぐらいから、出てきてただやられるだけではなく、その運用方法もしっかり見せるようになった(凪破真名撮影)。