自民党の政治資金パーティー問題でスクープを連発し、活気づく朝日新聞だが、デジタル版での報道姿勢に痛烈な批判が寄せられた。朝日新聞が情報源を「関係者」と、あいまいな表現にしていることだ。

 批判の主は、作家の佐藤優氏。朝日新聞デジタル版の「コメントプラス」欄で、パーティー疑惑に火をつけた12月1日朝日新聞の独自記事〈安倍派 1億円超の裏金か〉において、自民党最大派閥の清和政策研究会安倍派)の所属議員について「販売ノルマを超えて集めた分の収入を裏金として議員側にキックバックする運用を組織的に続けてきた疑いがあることが、関係者への取材でわかった」と報じたことを取り上げた。

 佐藤氏は次のような批判を展開している。

「『関係者』が東京地検の特捜検事かその上の幹部であることは間違いないと私は思っています。検察官も国家公務員なので守秘義務があります。捜査情報は当然、守らなくてはならない秘密です。国家公務員法に違反する情報漏洩で、世論の『風』を起こし、捜査をやりやすくするというような手法は民主主義と馴染まないと私は考えます」

 佐藤氏は、厚生労働省の村木厚子氏が郵便料金の割引制度悪用事件で容疑者とされたものの、無罪判決を受けたことを受けて、朝日新聞などがしばらくの間は「検察側関係者」「弁護側関係者」などと書き分けていたと指摘。ところが、

「今では2002年の鈴木宗男事件の頃のような『関係者』に戻っています。『朝日新聞』編集局には、その理由を読者にわかりやすく説明してほしいと思っています」

 と注文をつけた。

 元外務省主任分析官だった佐藤氏は鈴木宗男事件に巻き込まれ、東京地検特捜部に逮捕・起訴された経験を持つ(2009年6月に執行猶予付き有罪確定)。

 朝日新聞が提携する米紙ニューヨークタイムズなど欧米の主要メディアは、情報源をできるだけ詳しく説明するのが主流となっている。佐藤氏のコメントを載せた朝日新聞は、このまま無視を決め込むのかどうか。

(喜多長夫/政治ジャーナリスト)

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