毎シーズン、数多くのアニメが放送される中、アニメソングも続々と世に放たれている。星の数ほど生まれるアニメソングから、ミュージシャン・DJの出口博之と、芸人にしてアニソンDJの鮫島一六三(BANBANBAN)が、一押しのアニメソングチョイス

【大きな画像をもっと見る】

2023年秋アニメから、互いにBEST3アニソンを発表しあい、語りまくる連載「しゃべる! アニソン」。これを読めば、今聴くべきアニソンがわかる……はず!

さらにトークと楽曲を一緒に楽しめるポッドキャスト番組の配信をSpotifyでも配信中! こちらもあわせてお楽しみください!

 

ますますディープに盛り上がるお2人。今回はいよいよラストの3曲目。最後までじっくり、たっぷりお楽しみください。

「ONE PIECE」OP「最高到達点」SEKAI NO OWARI


鮫島 3曲目はこちら。「ONE PIECE」OP「最高到達点」SEKAINOOWARI。こちら9月からOPで使われているので秋クールです! 前回EDを上げたのですがあれは8月なので夏クールです。

 

出口 わははは(笑)。

 

鮫島 フルで聴くと、間奏がすごく長くて展開が凝っていて、SEKAI NO OWARIがどう考えているかわからないんですが、そこに田中公平感があると思ったんですよね。田中公平さんって「ウィーアー!」のイントロの長さとか、フルで聴いた時のONE PIECE曲の間奏の長さもそうだし、「サクラ大戦」とか「キングゲイナー」みたいな、なんか癖のあるアニソンを作ってくるじゃないですか。「最高到達点」もSEKAI NO OWARI流の田中公平リスペクト曲なんじゃないかなと感じたんですよ。いい「ONE PIECE」感があるなと。

あとOP映像で丸や円がすごく象徴的に使われているんです。「ワノ国」編なので、最初に筆で描かれた円が画面の中心に来るんですけど、そこからずっと円を真ん中に置いたまま映像が展開します。たとえばぽっかりあいた天井から、カイドウルフィが戦っているのを見ている誰々とか、ワノ国編のタコが真ん中に出てくるとか、ニカになったルフィとその背景の光の丸さとか、日本風の円形の窓があったり。あとはお玉ってキャラの頬っぺたも画面の真ん中にボン!と出てくるんですよ。ずっと丸で90秒展開していく。この丸は何を狙って作っているのかわからないんですけど、これから「ONE PIECE」も最終章に向かっていくので、きっと「ひと繋ぎのONE PIECE」を丸、円が象徴しているのかな。「ひと繋ぎのONE PIECE」って丸いものなのかなと考察しますね。その辺も含めて田中公平感、ONE PIECEっぽさがあってくすぐられる曲ですね。

 

出口 前回EDを選ばれましたけどあれが16年ぶりのEDで、やっぱりEDがあったほうがいいよねとか、「ONE PIECE」ってこうだよねっていう、いわゆるファンが考える一番好きな「ONE PIECE」みたいなところに立ち返る展開が多いですよね。

 

鮫島 原点回帰というか、終盤に向かって全てを回収していくという気概を感じますね。ルフィもこれが俺の最高到達点だ!みたいなこと言ってますから、全部つながってるんだなと思いますね。僕が「ONE PIECE」っていうと笑いが起こりますけど、これが正しいと思ってますから!(笑)

 

出口 なかなかの力技で来るなと思いますけどね(笑)。秋クールのアニメって言ってるのに。

 

鮫島 秋です! 9月3日からですから秋ですよ! ちなみに、最初にモザイクアートのように過去の「ONE PIECE」の絵がバーッと出てくるんですよ。そこに(映画「ONE PIECE FILM RED」主要キャラの)ウタも映っているので、TVシリーズに何らかの形で関わってくるのか!?と予想する考察勢もいましたね。

 

「チキップダンサーズ」主題歌「ボーン!ボーン!ボーン!」(弓木英梨乃)


出口 自分の3曲目は「チキップダンサーズ」の「ボーン!ボーン!ボーン!」です。

 

鮫島 うわー! それはノーマークでした。

 

出口 自分の中の今期の印象としては、楽器の音が聞こえる曲がけっこう多い、バンドサウンドが多いなというのがありました。やはり弾いてる人の姿が見えるような曲が多かったから、「ボーン!ボーン!ボーン!」も非常にその印象にあっている曲ですね。弓木英梨乃さんはシンガーソングライターなんですが、子供の頃からギターを弾いている方です。一時期KIRINJIに在籍していて、そこを脱退された後にセッションギタリストとしていろんな現場に入られたり、Base Ball Bearなど多くのバンドやアーティストのサポートのギターとして参加されてます。僕もライブで見て存じ上げていたんだけど、まあ~ギターがうまい! スタジオミュージシャン的でありつつ、バンドマンっぽい個性の強いプレイもできて、すごいですよ。ギターヒーローみたい。

今は海外に音楽留学されていて、そんなに日本で活動はしてない中でのこの曲なので、昨今では珍しい待望の活動だなというところです。

やはり楽器が上手な人が曲を作って、ご自身で歌われて、という具合にトータルできちんと曲を作っていく。それってかっこいいよねっていう人が増えると、「この人を見て楽器を始めました」とか「私も音楽を作ろうと思いました」という人が増えると思います。最近だとAIの問題もそうだし、コンピュータでそれっぽいものが作れたりするけど、自分が楽器を習熟して作品を作っていくということをすごく楽しそうにやれる方なので、それは大事だなと。

 

鮫島 そのアニメをEテレでやってるのがいいですよね。子供が見て、いい曲を聴いて、自分もやってみたいって思ってくれたら。

 

出口 YouTubeでも活躍されてて、いわゆる「弾いてみた動画」みたいなものも上げてるんだけど、それもただギターパートを弾くんじゃなくて、メロも弾いたり自分で新しいパートを作ったりしていて、それが異常にうまい。恐ろしい次元のレベルでやってます。ギターの「弾いてみた」動画って俺アレンジみたいな圧の強さもあったりして、その押しつけがましさみたいなところも味ではあるんだけど、弓木さんにはそれがない。ニコニコしながら楽しい~!って弾くんだけど、やってることが規格外だから本当に何人のギタリストがギターを置いたか。かなわないって。楽しそうにものすごいレベルのものをやってるから、シーンを引っ張っていく人、全体をフックアップするスタープレイヤーなんだなという印象です。

アニメとしてはアニメファンみんなが見るっていう作品ではないけど、そこで行われていることの純度の高さは異常。

 

鮫島 Eテレだったら昔やってた「ハッチポッチステーション」とかも、子供の時は何となく聴いていたけど、大人になって聴くとすごいカッコいいことに気づいたりするじゃないですか。そういうことに子供がゆくゆくは気づくといいですね。

 

出口 Eテレは、音楽やクリエイティブ方面に関してはものすごくしっかり作られている感じがある。

 

鮫島 子供は何気なく見てるけど実は!っていうのが多い。

 

出口 僕らが昔見ていたのはすごかったんだなって。

 

 

総括

 

出口 今回もなかなか予想外の結果でした。

 

鮫島 まさか「チキップダンサーズ」が来るとは思いませんでした。

 

出口 ほかにもあげたかった曲もあったんですが。

 

鮫島 MOTSUさんと芹澤優さんの「MFゴースト」OP「JUNGLE FIRE feat. MOTSU」。これはアニクラでは反応がすでにいいです。

 

 
出口 正統派というかね。ほかにピックアップしたかったものと言えば「鬼武者」の「THE LONELIEST」。マネスキンていうイタリアのバンドの曲で、メンバーはまだ20代前半なんだけどグッチのようなハイブランドが衣装を提供したりして、若手バンドらしからぬ大物感があります。音楽の評価も高いバンドなんですが、彼らが日本のアニメ、漫画といったカルチャーが大好きで、その繋がりからかはわからないけど、日本のアニメで海外のバンドが主題歌を歌うのは面白いと思う。

 

鮫島 「アンデッドアンラック」の「01」(女王蜂)もかっこいい。作品にあっている。

 

出口 これまでけっこう打ち込みっぽい曲が多かったから、ここでバンドっぽい音になったのはよかったですね。

 


鮫島 MindaRynさんの歌う「SHY」OP「Shiny Girl」も、すごく爽やか。OP映像もすごくカラフルで凝ってて、めちゃくちゃいいですね。

 


出口 上坂すみれさんが歌う「ティアムーン帝国物語〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜」OP「ハッピーエンドプリンセス」、これはいい。誤解を恐れずに言うなら、めちゃくちゃふざけてる。作曲・作曲は今期もけっこう書かれている大石昌良さんなんだけど、自分が見る印象としては誰かにあてがきのような形で曲を提供して、その人が持ってる「おもしろ」の部分をブーストさせるのがうまい人なのかな、と。それがきちんと魅力にもなるし、正しいアニソンというか。それはかっこいいですね。

 

 

鮫島 プロデューサーとしての側面も強いんでしょうね。あとは「ビックリメン」4話の挿入歌「Be Cool Men!」。声に出して読むと「ビックリメン」で、歌詞も英語っぽいものが続くんですけど、聴くと全部日本語という岡崎体育桑田佳祐的なすごく力の入った挿入歌だと思いました。こういうところにも力を入れてる「ビックリメン」もあなどれないですね。

 

出口 話題は尽きないですが、我々が今期あげさせていただいたアニソンはこういう形になりました。ただ、これは優劣ではないですからね。

 

鮫島 そうそう。自分が好きなアニメというのがあって、いろんなものが乗っかってしまっているというのはありますね。

 

出口 流れでピックアップしたというのもありますので、重ねてになりますが全部星5です!

 

鮫島 でも本当に選ぶのは難しいですね。今回はKacoさんとか、「オーバーテイク!」の叶さんなど今までアニソンに関わってなかったような人たち、アニソンシンガーじゃない方もどんどん入ってきているのが今期なのかなと。前期から引き続き、コロナ禍以降の人たちがどんどんきたっていうのは時代が変わってきているのかなと思いますね。

 

出口 我々は業界の隅っこからではありますが、大きな渦に巻き込まれずにアニメソング定点観測しているので、そこで思ったり感じたこととか、もっとこういうところを語ってみたい、この曲はよかったよねといったことは、大きな総括としてまた年末にやれたらと思っています。なので、引き続きお楽しみいただけたらと思います。

 

出口・鮫島 以上、「しゃべるアニソン」でした!


出口博之

出口博之

ロックバンド・モノブライトのベーシストとして、2007年7月メジャーデビュー。ベーシストとして多数のアーティストのライブ・レコーディングに参加するほか、作編曲、DJ、ライター、番組MCなど媒体を選ばず幅広く活動中。

鮫島一六三

鮫島一六三

お笑いコンビBAN BAN BANの「フリーザじゃない方」。2010年、アニソンDJイベント「アニソンディスコ」をコンビで立ち上げ国内外、会場の大小問わずさまざまな場所でアニソンを鳴らす。吉本興業所属。

 


>> 【2023年秋のBESTアニソンはこれだ!】出口博之×鮫島一六三(BANBANBAN)がアニメソングを語りまくる!「しゃべる! アニソン」第4回・後編 の元記事はこちら
【2023年秋のBESTアニソンはこれだ!】出口博之×鮫島一六三(BANBANBAN)がアニメソングを語りまくる!「しゃべる! アニソン」第4回・後編