湖池屋は、オリジナルのブランド芋を国内栽培し、これを原料にしたポテトチップスを提案する新プロジェクト「KOIKEYA FARM(コイケヤ ファーム)」を始動した。

2016年に佐藤章氏が社長就任以降、「味・日本・品質」を戦略に掲げ、約6年にわたり研究と改良を重ね、創業70周年にあわせて実現させた。じゃがいもの栽培からポテトチップスまで一貫生産するのは、湖池屋初の取り組みだ。

プロジェクトに賛同する農家協力のもと、「当社がこれまで培ってきた技術で、最高に美味しいポテトチップスを作れると言い切れる究極の芋を探した」(湖池屋)。第1弾の「黄金の果肉」を使ったポテトチップス2品「KOIKEYA FARM 黄金の果肉 北海道産 帆立と昆布とオホーツクの塩」「KOIKEYA FARM 黄金の果肉 青のりの王様 すじ青のり」(1袋あたり各60g)を自社ECで各3000セット限定で先行販売したところ、発売当日(12月21日)に即完売した。2024年の年明け以降、店頭での一般発売を予定している。

KOIKEYA FARM 黄金の果肉「北海道産 帆立と昆布とオホーツクの塩」「青のりの王様 すじ青のり」/湖池屋
KOIKEYA FARM 黄金の果肉「北海道産 帆立と昆布とオホーツクの塩」「青のりの王様 すじ青のり」/湖池屋

〈品種×土地の特性でつくる新ブランド/湖池屋「KOIKEYA FARM」〉

新プロジェクト「KOIKEYA FARM」では、一般流通していない品種のじゃがいもを種芋として海外から国内に持ち込み、日本の土壌に合わせて湖池屋のオリジナル芋を開発する。「黄金の果肉」は欧州産の品種をもとに生まれたじゃがいもだ。国内最大産地の北海道で栽培した。「糖分が低く、うまみが際立ちやすい点が特徴だ。ポテトチップスの原料として理想的と判断した」(湖池屋)。

日本で育てた前例のないじゃがいものため、開発に至るまでは数多くの苦労があったという。例えば、ヨーロッパのじゃがいも産地は夏の間も比較的冷涼でしばしば雨が降る一方、近年の気候変動により北海道にも梅雨が訪れるようになり、5月あたりから気温が30度を超える日もあって、じゃがいもを育てるには厳しい気候に変わってきている。さらに、ヨーロッパのサラサラとした砂のような土と比べると日本のじゃがいも畑は粘土質のため、土壌環境も異なる。

このような違いもあり、作付けした品種から収穫し、ポテトチップスを製造できるかについては最後まで未知数だったという。「なかには想定より収量を確保できなかったり、揚げてみても思った通りの味にならなかったりする品種もあった。最初に持ち込むことができた種芋はほんのわずかで、それを1年、また1年と収穫ごとに少しずつ増やし、結果を翌年にフィードバックしてというように、気の遠くなるような作業を繰り返した」(湖池屋)。こうしてうまく栽培できた品種のうちのひとつを「黄金の果肉」と名付けた。

「黄金の果肉」は、糖度が高くないものの、うまみの濃い味わいが特徴だという。この特徴を生かすため、「北海道産 帆立と昆布とオホーツクの塩」「青のりの王様 すじ青のり」の2品ともに波型カットを採用している。「北海道産 帆立と昆布とオホーツクの塩」には、昆布と帆立のうまみにキレの良いオホーツクの塩を組み合わせた。「青のりの王様 すじ青のり」は、すじ青のりの風味が広がる味わいに仕上げている。

「KOIKEYA FARM 黄金の果肉 青のりの王様 すじ青のり」/湖池屋
KOIKEYA FARM 黄金の果肉 青のりの王様 すじ青のり」/湖池屋

〈じゃがいもの価値向上へ 品種による美味しさの違い提案/湖池屋「KOIKEYA FARM」〉

新プロジェクト「KOIKEYA FARM」の背景には、じゃがいも自体の価値を底上げしたいという思いがある。

「当社は1962年の『湖池屋ポテトチップス のり塩』誕生から60年以上にわたり、日本産のじゃがいもを使い、ポテトチップスを美味しく作る技術を磨いてきた。日本のポテトチップスの老舗として、今後はさらに一歩踏み込んで、芋の味や可能性を提案していきたいと考えている」(湖池屋)。

◆「今金男しゃくポテトチップス」を毎年販売

この足がかりとして、2015年には北海道今金町で作られ、市場流通量0.3%といわれる“幻のじゃがいも”を使った「今金男しゃくポテトチップス」のEC販売を開始した。一般に、男爵いもはデンプンや糖分が多く油で揚げると焦げやすいため、本来ポテトチップスに向かないといわれるが、そのなかでも特にデンプン量が多く、ホクホクとした食感が特徴の「今金男しゃく」を選んだ。

「今金男しゃくポテトチップス」のり塩・うすしお味
「今金男しゃくポテトチップス」のり塩・うすしお

「(今金男しゃくポテトチップスは)当社の技術を結集してできた最高クラスのポテトチップスで、年に一度だけ味わえる。おかげさまで発売以来、毎年多くのお客様から高い評価をいただき、年を重ねるごとに数量を増やしているものの、毎年完売している。お客様には、芋の違いによって、ポテトチップスの味がこんなに変わるのかと驚いていただくきっかけになった」(湖池屋)。

◆ピュアポテト「ブランド芋くらべ」シリーズ

その後は、じゃがいも本来の味わいを訴求する「ピュアポテト」ブランドにおいて、2019年から「ブランド芋くらべ」シリーズを展開している。九州から北海道まで北上するじゃがいもの旬の時期にあわせて、芋の品種ごとに異なる味わいを提案するもの。

2023年は九州産「ながさき黄金」や関東産「あずま美人」のほか、北海道のJA5社らとの協働により「スノーマーチ」「ひかる」「きたかむい」「サッシー」「マチルダ」といった品種をポテトチップスの加工用に用いた。芋の品種ごとに美味しさが引き立つ塩を選び、配合量や製法を調整している。「じゃがいもの“濃い味わい”と“ほくほく感”を訴求するピュアポテトブランドの世界観にも合致し、われわれが思っていた以上に大きな反響をいただいている。今年で5年目を迎え、非常に好評だ」(湖池屋)。

「ピュアポテト ブランド芋くらべ」スノーマーチ・ひかる・きたかむい・サッシー・マチルダ
ピュアポテト ブランド芋くらべ」スノーマーチひかる・きたかむい・サッシー・マチルダ

このような取り組みを経て今回の「KOIKEYA FARM」では、念願だったオリジナル芋の栽培に成功し、ポテトチップスの製品化にこぎつけた。今後は第2弾、第3弾商品の発売を予定しており、中長期的な取り組みとして展開していく。

「プロジェクトはまだ始動したばかりで、当社がスナック菓子の地位と概念を変える大きなチャレンジになる。海外にはまだ知られていないような美味しい芋がたくさんあるので、それらを日本の土壌にあわせて栽培し、世界で一番美味しいポテトチップスをわれわれが提案したい」(湖池屋)。

「KOIKEYA FARM 黄金の果肉 北海道産 帆立と昆布とオホーツクの塩」/湖池屋