タイBLをはじめBLファンが注目する作品が国内外で拡大中。台湾ラブストーリーにもBLファンに人気の良作が豊富にあり、なかでもおすすめの3作品を紹介する。本記事では台湾BLの金字塔とも言える「History」シリーズ第1弾の「HIStory 離れて、離さないで」、青春ラブストーリーの「About Youth」、歯科医院を舞台に描いた「My Tooth Your Love ラブリー・クリニック」を取り上げ、多く登場するキャラクターから台湾ラブストーリーの魅力を考察する。
【写真】「About Youth」より、胸キュンのキスシーン
■人気アイドルとひとつ屋根の下で暮らす「HIStory 離れて、離さないで」
台湾BLが世界的に注目される契機となった「History」シリーズの第1弾のなかの1作「HIStory 離れて、離さないで」。親同士の再婚によって義兄弟となった2人が描かれている。心のすれ違いが切ないが、笑いも盛り込まれていて重すぎないラブストーリーだ。大学生のフォンホーは母親の再婚によって“弟”と暮らすことになる。彼のもと現れたのは、なんと人気アイドルのチェン・チン。ひとつ屋根の下で過ごすことになったフォンホーは、わがままなチェン・チンに振り回されながら憎めない彼と友好な関係を築いていくが…というのが本ドラマのあらすじとなっている。
義弟のチェン・チンは“俺様”なキャラクターでフォンホーに対して傍若無人に振る舞い、フォンホ—はなんだかんだと言いながら、チェン・チンの面倒を見てやる。通常ならチェン・チンはいけ好かない男に写るところだが、どこかかわいげがあって彼なら許せてしまう。ファンホーは下手に出て従っているわけじゃなく、きちんと注意するところはしながらも、放っておけなくてかまってやるところが微笑ましい。
フォンホ—が自分のご飯を準備すると、横取りして食べ始めるチェン・チン。フォンホ—は怒るが、チェン・チンが仕事が無くなった連絡を受けて見るからにしょげると、フォンホ—は自分のおかずを分けて励まそうとする。大学の勉強のアドバイスをしたり、演技の練習の相手をしてやったり、何かとチェン・チンをフォローするフォンホ—。上から目線で指図しているように見えて実は甘えたがりなチェン・チンをフォンホ—が懐深く受け入れてやっているように思えてくる。彼らのほっこりとした関係に、心温まってくること請け合いだ。
■対照的な2人が恋に落ちる青春ラブストーリー「About Youth」
こちらは「Hstory」シリーズのスタッフが制作した台湾ドラマ。一見、正反対に見える高校生2人が出会い、お互いに惹かれ合っていく様子を描いたラブストーリーで、悩みを抱えるそれぞれの姿はほろ苦いが、甘酸っぱい青春ドラマとしても見応えがたっぷりある。
父を亡くし、母と2人暮らしのシュー・チージャンは人生最悪の日に偶然通りかかったイエ・グアンに助けられる。後日、シュー・チージャンはイエ・グアンの誕生日を祝うサプライズのプラカードを強制的に持たされて彼と再会する、というストーリーが展開していく。
イエ・グアンは大勢から誕生日を祝われるほど学校のスターで、シュー・チージャンは目立たない存在の生徒。全然似ていないかに見える彼らだが、どちらも人知れず苦しんでいて繊細で傷つきやすく、お似合いの2人だ。そんな彼らがお互いを労り、優しく接するようすを見ているとこちらまで癒やされてくる。
誕生日なのに実はひとりで寂しく過ごしているイエ・グアンが運悪くびしょぬれになったときに、シュー・チージャンは温かい卵スープを作ってやる。不安と孤独が吹き飛んで思わず涙目になるイエ・グアンにもらい泣きしそうになるほど、見ている方も嬉しさが込み上げてくる。また、シュー・チージャンが厄介者の叔父に火傷を負わされたときには、今度はイエ・グアンが手当をしてあげる。2人ともがお互いを大事な存在として扱っていることに心が救われる。ヒーリング効果抜群の彼らのピュアな姿にぜひ注目して欲しい。
■クールな歯科医との甘やかな恋を描く「My Tooth Your Love ラブリー・クリニック」
歯科医院を舞台に、若き歯科医院長と歯医者恐怖症の患者の恋を描いた本ドラマ。医師のマスクや白衣姿もカッコよくさまになっていて、地震があって急接近するなど胸ときめくシーンが豊富なラブストーリーだ。
ビストロ「白夜朗朗」のオーナーで歯医者嫌いのバイ・ランが酷い虫歯で苦しんでいるところから物語は始まる。彼の左頬が腫れているのを姉のバイ・チンに見つかり、姉の後輩であり、若くして歯科医院長となったジン・シュンアンのもとへ連れてこられる。幼い頃のトラウマで歯科医恐怖症になってしまったバイ・ランは治療を拒むが、ジン・シュンアンは淡々と治療を進め、「必ず治す」と頼もしく約束する。
バイ・ランのトラウマは想像以上に悲痛なものであり、胸がギュッと締め付けられる。ジン・シュンアンはバイ・ランがトラウマをきっかけにパニックを起こして取り乱すと、冷静に彼の心に寄り添おうとする。クールで落ち着いたジン・シュンアンは頼もしく、バイ・ランとともに見ている方も心奪われることだろう。
さらに、バイ・ランはちょっと子どもっぽいところがあり、熱い飲み物にやけどしそうになるとジン・シュンアンはフーフーと冷ましてくれる場面も。過保護なくらいに甘やかされているシーンはこちらも甘やかな気持ちになってくる。ムードに浸りたい方におすすめの1作だ。
■台湾ラブストーリーに登場する“世話焼き男子”の魅力
今回紹介した3作に共通するのは世話焼き男子というキャラクターだ。「HIStory 離れて、離さないで」では義弟のチェン・チンを放っておけないフォンホ—、「About Youth」ではお互いを労りあうイエ・グアンとシュー・チージャン。「My Tooth Your Love ラブリー・クリニック」ではバイ・ランを甘やかすジン・シュンアン。相手のことを思うがゆえについつい構ってしまう男性たち。相手のことをどれほど大切に思っているのか伝わってきて、愛情の深さを感じ取ることができる。頼もしくて安心して見ていられる彼らが台湾ラブストーリーの魅力を生み出しているのかもしれない。
◆構成・文＝牧島史佳
コメント