12月20日セカンドフルアルバム『世界/WORLD』をリリース、2024年1月からは全国ツアー「人、々、々、々」をスタートさせるロックバンド、CRYAMY(クリーミー)。名エンジニア/プロデューサーのスティーヴ・アルビニのもとで作り上げた新作をひっさげ、来年6月に予定されている日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブ「CRYAMY特別単独公演 『CRYAMYとわたし』」へと向かっていくこのツアーの開催を記念して、各地で競演する対バン相手とCRYAMYのボーカル・カワノとの対談が実現した。今回登場いただくのはカワノとは5年来の友人であり、しのぎを削るライバルでもあるJIGDRESS(ジグドレス)のボーカル/ギター・山崎大樹。お互いに影響を与え合いながら進み続ける両者の対話、じっくり読んでほしい。

── 山崎さんとカワノさんはもうだいぶ長い付き合いですよね。

カワノ 5年くらいになるのかな? 最初に会ったのは2018年か。

── 山崎さんがまだROKIをやっていたときですよね。

カワノ そう。僕らはメンバーが揃ってまだ半年経ってないくらいでした。

── どういう感じで出会ったんですか?

山崎 最初は対バンじゃないよね。確かカワノがライブを観に来たんですよ。

カワノ そうそう。ROKIとSUP(現・砂布°)とw.o.d.下北沢の近松に出ているライブに行って。僕はもともと知っていたから「あ、ROKIの人だ」みたいな感じだったんですけど、大ちゃんが話しかけてくれて、話をしたのが一番最初だったかな。で、ちょうどその2カ月後くらいに、下北沢DaisyBarで一緒にライブをやったのが初めての対バンですね。

── 当時の下北沢のシーンの中で、CRYAMYROKIはそれぞれどんな立ち位置だったんですか?

カワノ 僕の印象だと、当時の下北沢は時速36kmかROKIか、みたいな感じだった。勢いがあって人気のバンドというか。実際僕らがブッキングのライブに出たりしているときも、お客さんは時速が好きな子とかROKIが好きな子が多かった。で、僕らは僕らで、バンドを組んだとはいえメンバーがいない状態だったし、渋谷の乙とかでライブやってたから、下北ではあまりやってなかったんですよ。ROKIと会ったのは下北でちょっとやるようになったぐらいで、そのときはやっぱりその2バンドが存在としてはでかかった。

山崎 でもカワノはそう言うけど、俺らはそんなイメージはなくて。自分たちは本当に淘汰されていく1個のバンドぐらいの感じだったから。むしろCRYAMYのほうがすごくいい曲をもってバッて入ってきたから、すごく羨ましく思った印象がある。ないものねだりみたいな感じになっちゃうかもしれないけど、すごく印象的な登場でした。

── でも、ROKIとCRYAMYだとライブのスタイルも含めてスタイルが違う感じがするんですけど。

カワノ でも、当時ROKIは、今のJIGDRESSよりももうちょっとパンク寄りというか、音楽的な部分でもより激しい、雑然とした感じだったし、僕らは僕らで若干過剰な、今思えばわざとらしい感じだったと思うんですよね。わざとなんか変なことをしたり。だからパンクというとあれだけど、ガチャッとした音像でやってたという部分では近いところにはいたんだと思う。

── カワノさんから見て山崎さんってどういう人なんですか?

カワノ 人間的には、今でこそそんなことないけど、昔は大ちゃん、結構怖くて。尖ってたっていう言い方だとちょっと安っぽくなっちゃうけど、結構食ってかかってた時もあったよね。僕もそうですけど、大ちゃんもそういう感じだった。あと結構僕にとって印象的だったのは……これは大ちゃんにも初めて言うけど、大ちゃんって結構周りの人から好かれるのに、大ちゃん自身がちょっと壁を作るみたいなところもあったのかなって。いつも人に囲まれていて、僕から見たらいろんな人から慕われているんだけど、ちょっと寂しげな感じではあるのかなみたいなのはあった。そういうのは僕にもあったから仲良くなれたのかもなと思う。

── そういう自覚はありました?

山崎 あんまりなかったですね。うれしいです。でも確かに壁は作ってたし、他の人のことをすごく意識していた時期だった。でも、カワノも自分を守るための、防御としての攻撃みたいな感じがあって、それが印象的に見えてた。そこがいいなっていうか、そっちのほうが純粋というか普通であって、すごく人らしくて印象的だった。だから興味引かれたし、話してみたいと思った。

── 守りたいものがあるというか、許せないものがたくさんあるというか、今もそうだと思いますけど、よりそれが出てたっていうことなんでしょうね。

カワノ だったかもな。結構露骨だったかもしれないね、当時は。

── そういうところで共感して仲良くなっていったっていう感じだったんですか?

カワノ まあ、会えば楽しく喋るし、大ちゃんも喋ってくれるし、ライブも一緒にすることが結構多かったんですよ。でも一番大きかったのは、僕、当時最寄駅が千歳船橋で、バイト先が(隣の駅の)経堂だったんですよ。もう3年前くらいかな。その頃に大ちゃんも経堂に引っ越してきて。それで街中でばったり会って、「おい、大ちゃん!」って。聞いたら引っ越してきたっていうから、そういうことなら飲みに行こうぜみたいになったんだけど、お金がなかったんで、しこたま酒を買い込んでミニストップの駐車場で飲みながら喋って。そこからプライベートで結構会うようになったかな。困ったら「大ちゃん住んでるわ」って思って連絡をするようになって。そこからよりギュッとなった感じがある。

── ご近所付き合いだ(笑)。飲むとどんな話するんですか?

カワノ 結構他愛のない話ではあるけど……僕、あんまり音楽の話ができる友達っていないんですよ。大ちゃんもいるのか分かんないけど。

山崎 いない、いない(笑)。

カワノ いないでしょ? なんか悪口みたいになっちゃうけど、ミュージシャンってみんなそんなに音楽聴いてないんですよ。だから喋ってても楽しくないなとか思ったりもするんですけど、大ちゃんとは音楽の話もいっぱいできる。だから音楽の話は多かったね。最初はたぶんジョイ・ディヴィジョンの話とかをした。僕ら、ライブのSEでジョイ・ディヴィジョンを使ってて、JIGDRESSは──。

山崎 ニュー・オーダー

カワノ っていうのもあって。ジョイ・ディヴィジョンのライブ盤の話をした。大ちゃんも洋楽がすごい好きで、洋楽好きな人があんまり周りにいなかったから、おすすめし合ったりとか。いろんな話をしたっすね。

── 話していく中でお互いの印象って変わっていったりしました?

カワノ 僕はよくも悪くも変わらなかったな。普段もステージ上もそのままなので、いつどこで会っても大ちゃんは変わらない。

山崎 俺も変わらないですね。全然変わらない。雰囲気っていうか、環境は変わってると思うけどね。

カワノ 髪型とかね(笑)。

山崎 髪型とかは変わったけど、印象は全然変わらないですね。

── やってる音楽についてはどうですか? 山崎さんは新しいバンドを始めたし、CRYAMYもいろいろ変わってきてますよね。

カワノ それこそ僕、ROKIが解散するっていうのはそれこそミニストップでふたりで飲んでる時に聞いた覚えがある。それで「えぇー!」ってなって、でも音楽はやるみたいなことは言ってたから、ROKIの解散からJIGDRESS結成までの歩みは友達として結構側で見てきたんです。で、JIGDRESSになって音の質感は、なんというかひんやりした音になった印象がある。ガチャガチャしたっていうよりは、もうちょっと鋭いというか、そういうスタイルにはなってきたなって。僕は、大ちゃんの独自のよさは歌詞にあると思ってるんですけど、その歌詞自体もROKIの頃より着眼点がおもしろくなったなと思う。これはどっちがいい悪いとかじゃないけど、俺はJIGDRESSになってからの曲のほうが好きですね。僕には琴線により触れてくるようになった。

── 個人的にも、ROKIに比べてJIGDRESSのほうが山崎さん自身に近くなったのかなという印象があるんですけど、どうですか?

山崎 うーん……そうですね……。

カワノ 大ちゃんはたぶん何も考えてない(笑)。

山崎 でも歌詞は、もっと身近なものを書こうという意識にはなってきました。それはやっぱりカワノの影響もあるんです。カワノって、極端に言うと自分の半径5メートル以内を書くことに対してすごい長けてると思っていて。やっぱり入ってき方がすごく鋭いから、なんかそういうのもいいなってずっと思ってて。ずっと思ってるってことは絶対に影響は受けてるわけであって、それでそうなってるんだなって俺は思ってます。

── 山崎さんはここ数年のCRYAMY、カワノさんの変化は感じますか?

山崎 なんか、新しいアルバムを聴いて思ったのは……正直、やってることの一貫性は全然変わったイメージはないんです。すでに最初の頃から、大きい音の中で生々しいものを出していく感じだったんだけど、その解像度がより上がっていった感じがする。クリアというか、何が生々しいかがどんどん見えていくような歩みをしている印象があって、新譜もボーカルで表現したかったことがこういうことなんだってわかるような音源になっていると思いました。音自体もすごくかっこいいけど、やっぱりカワノが歌いたい、発したい声ってこういうことだったんだっていうのが改めてわかった。あとは歌詞がさっき言った通りすごい近いところを書けるから、それは自分に全然できなかったことだし、それをいいって思う自分がいて。なんか、やっぱり憧れはありますね。こんなこと言うとダサいかもしれないけど、でもやっぱり思っちゃう。CRYAMYの曲みたいなものを作りたいって。

── でも、たぶんそれはお互い様ですよね。

カワノ うん、そうですね。大ちゃんの曲から「これいいな」とか思って、それを自分の中に落とし込む瞬間ももちろんあったし、そういう影響は相互にあるんじゃないかなって思います。

── 今回、ツアーで共演するわけですが。こうやってちゃんとツーマンをやるのは意外にも初めて?

カワノ ROKIのときから一緒にやるタイミングは多かったんですけど……これもお互いに話したと思うけど、ツーマンとかちゃんと自分たちの名前でイベントを切るっていうのは肝心な時にやりたいって言うのがあって、結構温めていたんです。「ここぞという時にやろうや」って。それこそ最初はROKIのツアーに呼んでもらって僕らが出たりしたことはあったんですけど、ツーマンはなかったんです。で、じゃあいよいよやるかってなってイベントを発表したら今度はコロナ禍に入っちゃって、結局やれずじまいになって。JIGDRESSになってからも結構僕はその感情を引きずっていたんです。個人的に仲がいいから、やろうと思えば下北沢DaisyBarとかを借りてやれるとは思うんですけど、いつやるかというのは結構個人的にはあった。やるなら今度は僕から誘いたいなというのがすごくあったので。

── じゃあ今回、満を持してですね。

カワノ うん。満を持してという感じで誘わせてもらったかな。なんならこのツアーもまだ溜めといていいんじゃないかぐらいの気持ちではあったんですけど、ただ本数も多いし、いろんなところに行くので、そこは親しい人なり、先輩なり、やってみたい人を呼ぼうというのになっていって、やるかということで声をかけましたね。

山崎 声かけてもらって、やっぱりうれしかった。やりたいのはあったけど、さっきカワノも言ったとおり、呼ぶタイミングって逆にいつなんだろうとか、そういう感じだったから。1回、JIGDRESSのツアーでやろうよってなってたんですけど、スケジュールがいろいろ被っちゃって、それも出来ずだったんで。だからやっぱりやれるのはうれしいなっていうのは素直に思いました。

── JIGDRESSは仙台公演に出演します。

カワノ 大ちゃんは岩手の出身で、仙台に住んでたこともあるって言っていて。だから仙台でっていうわけでは全然ないんですけど、図らずも大ちゃんの故郷に近い地でやるっていう。それもそれでいいのかなって。

── さっき、今回じゃなくてもいいかもと思ったとおっしゃっていましたけど、今回のツアーはCRYAMYにとって特別なものになりそうですよね。ファイナルが野音というのもあるし、アルバムもとんでもないものになったし。

カワノ 僕が意義を重くしようとしたわけではないですけど、図らずともそうなったっていう。偶然僕が体をぶっ壊したりしたのもあって、ちょっとセンセーショナルな感じに捉えられてしまった部分もあるんです。だから体のことは言いたくなかったんだよとか思ったんですけど(笑)。でもそういうのもあるから、ツアーとしても意義深いものにしなくちゃなとは思ってます。

── 山崎さんは、このツアーを経て野音に向かっていく今のCRYAMYはどんなふうに見ていますか?

山崎 野音はカワノがずっとやりたいっていう話をしてたから、その話を聞いた時はうれしいなって思いました。やっぱり今回のアルバムがアルバムだから、印象としてかなり重たいというか、意義深いものになると思うし、野音やったらカワノが砕け散るんじゃないかっていうぐらい、いろんなものを注ぎ込んでいる感じはありますよね。全部のすごい大変なものを集めて抱えている感じがするし、だから最後にカワノが野音で弾け飛んで、2027年に野音でまた復活するみたいな(笑)。それぐらいのイメージがある。

── もしそうなったら伝説になりますね(笑)。で、その伝説の過程に山崎さんは必要だったと思うし。

カワノ 僕はそう思いますね。自分のバンドというものを物語として考えるのであれば、大ちゃんはかなり主要人物というか。ドラゴンボールでいったら誰だろうな。

大ちゃん ブルマとか?

カワノ いや、ブルマよりはあとだな、出会うのは。亀仙人とかクリリンくらいの感じ。出会ってから終盤まで出てくる、そういう存在なんじゃないかなって思うんで、自分にとっても大きい人だと思います。対バンもちょっと照れくさいもんな。

── 照れくさいですか?

山崎 確かに俺、楽屋でどういう態度したらいいんですかね?

カワノ そうなんだよ。あまりにも溜めて溜めてだったし。スタッフから「JIGDRESSどうよ」って提案されても「いや、まだじゃないですかね」とか言っていたんです。それを最終的にいろいろ考えて考えて「ここだな」ってなったので。それぐらい、ちょっと気持ち悪いけど、お互いに特別な存在なので。

Text:小川智宏 Photo:山本佳代子

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<公演情報>
CRYAMY WORLD TOUR 2024 『人、々、々、々』
DAY0『HAPPY? NEW YEAR』 ※ワンマンライブ
1月5日(金) 東京・下北沢DaisyBar ※SOLD OUT

CRYAMY WORLD TOUR 2024 『人、々、々、々』
1月8日(月・祝) 長野・松本ALECX  w/SuU、Hue's
1月13日(土) 宮城・仙台MACANA w/JIGDRESS
1月19日(金) 埼玉・HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3 w/小林私
1月21日(日) 神奈川・F.A.D YOKOHAMA w/Khaki
1月28日(日) 大阪・Yogibo META VALLEY w/a flood of circle
2月10日(土 )愛知・名古屋CLUB UPSET w/pavilion、突然少年
2月11日(日) 京都・磔磔 w/Helsinki Lambda Club、Hammer Head Shark
2月24日(土) 広島・4.14 w/鋭児
2月25日(日) 岡山・CRAZYMAMA 2nd Room w/鋭児、天国注射
3月2日(土) 福岡・LIVEHOUSE CB w/LOSTAGE
3月3日(日) 熊本・Django w/LOSTAGE
3月15日(金) 兵庫・神戸太陽と虎 w/Analogfish、KING BROTHERS
3月16日(土) 香川・高松TOONICE w/Analogfish
3月20日(水・祝 )福島・club SONIC iwaki w/時速36km
4月6日(土) 新潟・GOLDEN PIGS RED STAGE w/w.o.d.
4月7日(日) 石川・金沢van van V4 w/w.o.d.
4月14日(日) 北海道・札幌SPiCE w/時速36km
料金:前売4,000円/当日4,500円
※オールスタンディング、入場時ドリンク代が必要
チケット情報:https://w.pia.jp/t/cryamy-tour/

CRYAMY特別単独公演『CRYAMYとわたし』
6月16日(日) 東京・日比谷野外大音楽堂
料金:全席指定2,500円
チケット情報:https://w.pia.jp/t/cryamy-yaon/

<リリース情報>
CRYAMY 2nd フルアルバム『世界/WORLD』
発売中
価格:CD 3,000円、カセット 3,500円(税別)

■収録曲
1.THE WORLD
2.光倶楽部
3.注射じゃ治せない
4.豚
5.葬唱
6.待月
7.街月
8.ウソでも「ウン」て言いなよね
9.天国
10.人々よ
11.世界

CRYAMY 2nd ALBUM Digest Movie

関連リンク

■CRYAMY公式サイト:http://cryamy.tokyo/
■JIGDRESS公式サイト:http://jigdress.tokyo/

左から)カワノ(CRYAMY)、山崎大樹(JIGDRESS)