これじゃタクシーと変わらない! 地域によってもてんでバラバラな日本の「ライドシェア」への動き

この記事をまとめると

■日本でも導入検討されているライドシェアだが、その内容は海外とまったく異なっている

■日本のライドシェアは、アルバイトのタクシー運転士を採用するような制度となりそう

■地域によって制度に違いがあるのも問題で、世界的に普及しているライドシェアサービスとはいえない

アルバイトのタクシー運転手採用のような日本のライドシェア

 世界標準と比べ、独立独歩の道を歩むことを「ガラパゴス化」などと表現されることがある。自動車の世界で言えば、日本独自規格の軽自動車が新車販売のじつに4割に迫ろうとしていることや、登録車でもミニバンばかりが走っている光景(海外ではスライドドア自体に一般の人はあまり馴染んでいない)が「日本国内の新車販売のガラパゴス化」と表現されることが多い。

 昨今、国内でも導入へ向けて議論されているライドシェアも、どうやら日本独特のガラパゴス化への道を歩むようだ。

 たとえば、神奈川県三浦市が先行するような形でライドシェアの導入を進めている。自分のマイカーに他人を乗せて目的地まで運びたいというドライバーと、そのようなクルマで移動したいという人の「マッチングサービス」であるライドシェアでは、当事者間のトラブルや事故などは当事者同士で解決するのが大原則で、マッチングサービスを請け負う業者は関与しないのが原則。しかし、三浦市の例では、ドライバー採用時の面接や車両管理などを地元タクシー会社が担うことになるという。

軽自動車に続いてライドシェアもガラパゴス化しそうな日本

 すでにこの時点でライドシェアサービスとは呼べない状況になっているように見える。さらに、料金はタクシーと同一で、三浦市の場合は夜間のみや地域を限定してライドシェアサービスを実施していく方向とのことなので、ここまでくると繁忙時間帯のみにアルバイトのタクシー運転士を採用するような感覚になっている。

 また、あるテレビニュースを見ていると、地元タクシー業界関係者のコメントとして「酔客を乗せて車内で嘔吐されることもよくあるが、マイカーでそのようなことになるリスクを承知でライドシェアサービスに参加しようとする人が出てくるのか」といったコメントがあった。

 世界標準のライドシェアサービスでは、あらかじめ自分のスマホにライドシェアサービスを利用できるアプリをダウンロードし、自分のアカウントを設定して利用する。設定に際してはクレジットカード情報も入力し、利用料金の決済はキャッシュレスが大原則となる。地域によっては現金決済も可能となるが、インドのデリーあたりでは「お釣りがない」として、たいていお釣り分はチップとして渡すことになってしまう。支払い方法に関係なく、スマホで自分が配車要請を行うのだから、嘔吐するまで飲むような泥酔状態では、スマホ操作もままならずクルマを呼ぶことは不可能かと思う。

軽自動車に続いてライドシェアもガラパゴス化しそうな日本

 先日、バンコク市内で知り合いと夕方から閉店(午前0時)まで深酒したあと、ホテルまで帰るのにライドシェアサービスでタクシー(バンコクはタクシーも選べる)を使った。泥酔はしていないもののそれでもけっこう酔っており、スマホ操作はできたので配車要請は行えたものの、到着したタクシーを探すのに手こずりながらも無事に乗車して帰ることができた。

軽自動車に続いてライドシェアもガラパゴス化しそうな日本

 いまのところ三浦市の例では、どうやって呼ぶのか、そして支払方法についてはどうなるのか、報道で触れているのを筆者は見たことはない。タクシーと同一料金制度というのならば、ライドシェア車両にはタクシーメーターがつくということなのだろうか?

 ライドシェアでは車両を呼ぶときにスマホ画面に料金が表示され、それが到着時に自動決済され、即時にメールで領収書が送られてくる。管理する事業者ごととはいわないまでも、県のタクシー協会などが専用アプリを開発して運営するとも思えない。タクシー無線でライドシェアも配車しようとしているのだろうか?

地域ごとに異なるライドシェアの導入が検討されている

 既存のタクシー配車アプリを改良するにもいまのように地域限定でしかもサービス内容に違いがあるのでは対応できないだろう。つまり、どこまでもいまのところ、日本のライドシェアはタクシーの二軍扱いになっているように見える。

軽自動車に続いてライドシェアもガラパゴス化しそうな日本

 時代の変化とともに誕生した新たなサービスを、昭和のころよりあまり変化のない既存システムに押し込めようとすると、こういう考え方になるのは当たり前と言えば当たり前。

 日本ではタクシーに限らず監督官庁ががんじがらめに規制をかけているので、日本のあらゆる物事が機能不全を起こし、デジタル化とともに変化する世界の新たな物事への対応を阻害しているようにみえる。その意味では、タクシー業界が「ライドシェア導入よりまず規制緩和を」というのも納得できないわけではない。

 タクシー会社としては何か余計なものを押し付けられている気持ちになるだろうし、いまのシステムではライドシェアをやろうという人がかなり限定的になるようにも思えるが、ライドシェアドライバーからすれば、活動できる時間や地域が限定されるのであれば従事する気にはあまりならないだろう。

 東南アジアなどでのライドシェアでは、資金力のあるオーナーがクルマをそろえ、それをドライバーに貸し出し一般的なライドシェアサービスを行った稼ぎから手数料を受け取っているといった話も聞くが、どちらかとといえば、この東南アジアタイプに日本のライドシェアは近いように見えるが、あくまで運営母体がスマホアプリでサービスを提供するプラットフォーマーではなく、タクシー事業者という点が大きく異なるように見える。

軽自動車に続いてライドシェアもガラパゴス化しそうな日本

 ただ大阪府は、24時間府内全域をサービス対象として実現を目指しているとのこと。

 この地域ごとにサービス内容が異なることも大きな問題と言える。現状、東京都内など地域によっては、一部タクシー事業者が「ウーバー」など大手プラットフォーマーと提携し、たとえばウーバーアプリでタクシーを呼ぶことができる。当然ながら自分の国で日々ウーバーを利用しているインバウンド(訪日外国人観光客)はウーバーでタクシーを呼んでいる。日本のタクシー配車アプリサービスも、全国どこでも配車アプリサービスに加盟している事業者がいれば、スマホでタクシーを呼ぶことができる。いずれももちろんキャッシュレス決済は可能だ。

 地域によって利用時間や利用地域に違いがあり、さらにサービス受け付け窓口が異なるのでは、世界的に普及しているライドシェアサービスとはいえず、さらに本末転倒に近いように見える。

軽自動車に続いてライドシェアもガラパゴス化しそうな日本

 本来なら政府が音頭を取って、民間丸投げでもいいから、「ジャパンライドシェアサービス」のようなプラットフォームを設けて全国規模で運営するぐらいの気合いを見せて欲しいところだが、いまの政治状況を見れば期待薄なのが実状。

 せめて、海外大手プラットフォーマーにアドバイスをもらうなど、日本に合ったライドシェアサービスの確立を目指すべきなのではなかろうか。インバウンドへの利便性の向上を目的にするならば、海外プラットフォーマーが絡まなければお話にならないのではなかろうか。

軽自動車に続いてライドシェアもガラパゴス化しそうな日本

これじゃタクシーと変わらない! 地域によってもてんでバラバラな日本の「ライドシェア」への動き